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ふぇみんの書評

生理用品の社会史 タブーから一大ビジネスへ

田中ひかる 著

  • 生理用品の社会史 タブーから一大ビジネスへ
  • 田中ひかる 著
  • ミネルヴァ書房2400円
 人類誕生から女の生き方を左右しながら、知られていない生理用品の歴史。著者は最も正確で詳細な本をとの思いで本書を書いた。  明治以降、産む性の生理現象として、上流階級に生理の「衛生的手当」が西洋から伝わるも、宗教・政治も一体となった古くからの生理不浄視から、生理はタブーで処置法の開発は進まなかった。女性は長年不便と蔑視を一身に受けていたのだ。ところが1960年代の「アンネナプキン」(使い捨てナプキン)が生理の概念を変えた。以降の進化はめざましく、「もれない」「目立たない」生理用品がスポーツや職場で女性の活躍を広げた。そして今、環境問題、「生理」を肯定する観点から布ナプキンが人気に。しかし使い捨てナプキンこそが転換期だったと著者。進化を促した商業主義の否定や生理や女性性への過剰な意味づけにも警鐘を鳴らす。  使い捨てナプキンも、布ナプキンも選べる今。女の歴史に生理用品の歴史ありと納得。(登)

「サークル村」と森崎和江 交流と連帯のヴィジョン

水溜真由美 著

  • 「サークル村」と森崎和江 交流と連帯のヴィジョン
  • 水溜真由美 著
  • ナカニシヤ出版3800円
 著者は博士課程進学後に森崎和江の評論集に感銘を受け、研究を開始する。「サークル村」と大正炭鉱闘争へのかかわりが、森崎の思想形成に大きな影響を及ぼしたとして、研究は「サークル村」と炭鉱のサークル運動へと広がる。  1950年代における炭鉱のサークル活動と、九州の多くのサークルの交流による労働者・農民の連帯をめざす「サークル村」の活動を、丹念に積み重ねた膨大な事実と資料から分析する。  森崎については、筑豊に拠点を置いた時期の著作を取り上げる。 1959年「凍っている女たち、集まりましょう」という森崎の呼びかけから始められた「無名通信」は、61年に20号で幕を閉じるが、その示唆に富んだ言葉に、もう一度森崎の本を読み返したくなった。  著者は、「21世紀を生きる私たちにとって、労働者をつなぐ回路」を考えるためにも1950年代の運動に学ぶものがあると信じる、という。今、道は険しいが、希望はあるだろうか。(き)

犠牲の死を問う 日本・韓国・インドネシア

高橋哲哉、李泳采、村井吉敬 著

  • 犠牲の死を問う 日本・韓国・インドネシア
  • 高橋哲哉、李泳采、村井吉敬 著
  • 梨の木舎1600円
 「光州事件30年」の2010年、韓国・光州市でのシンポジウムで、哲学者の高橋哲哉さんは「国家暴力の死者は、国家権力の側でなく、民衆の側であっても犠牲の論理によって語られてはならない」と発言した。司会の内海愛子さんの提案と企画により、後日、この問題提起の語り合いが長野と東京で開かれた。高橋さん、大学教員の李泳采さん、村井吉敬さんによる多角的な討論が収められている。  高橋さんは「国家の死者」を祀る靖国と、「民主化の犠牲者」を祀る光州国立墓地は同質性を持つとし、非業の死への美化、贖いの論理への疑問を呈する。民主化運動を経験した李さんが語る「死の意味付与」、インドネシア研究者の村井さんの「日本や韓国は“国家国家した国家”だが、東南アジアや多民族国家の視点から見ると違う“国家”の形がある」との指摘も興味深い。今年亡くなった村井さんの広い視野からの語りを本書で偲びながら、自己犠牲と国家についてしみじみ考えさせられた。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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