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ふぇみんの書評

ルポ 産ませない社会

小林美希 著

  • ルポ 産ませない社会
  • 小林美希 著
  • 河出書房新社1600円
 「育休3年」とか「女性手帳」とか、勘違いの政策を出してくる輩に読ませてやりたい。「『産めない』のではない。社会が『産ませない』のだ」という著者のあとがきに思わず拍手。著者は若者の雇用劣化、結婚や出産への影響(「職場流産」など)のルポで知られる。本書は、多くの人の悲鳴にも似た声を丁寧に聞き取り、「産ませない社会」の全貌に迫った。  正規・非正規を問わない「妊娠解雇」や「育児退職」、父の長時間労働と育休取得すらできない環境、頼る人のいない母の「孤育て」と虐待、産科・小児科の現場の疲弊とそこで働く妊産婦の悲劇…。保育園の問題など拾ってほしかった項目はあるが、それでも著者の怒りが表現されていて余りある。  救いもある。妊娠・出産での離職率を激減させた病院、障害児の居場所作りなどの取り組みだ。国の政策や財政出動はもちろん、息苦しい社会に風穴を開ける一人一人の動きが「産める社会」につながるのだ。(登)

憲法九条の軍事戦略

松竹伸幸 著

  • 憲法九条の軍事戦略
  • 松竹伸幸 著
  • 平凡社760円
 九条と軍事力は矛盾すると言われるが、「九条も防衛も」というのが世論調査からみた国民多数の選択だ。「制約なき軍事への恐れ」と「完全な非武装への不安」という、ごく「常識的な」思い。  いわゆる護憲派が軍事力を全否定するならば、「軍事による安心」を求める人々にとっての選択肢は、改憲派の日米安保強化路線しかなくなると著者は言う。純粋な護憲が、かえって改憲や安保強化を招くという力学だ。  ひとまず矛盾を肯定し、九条の「制約」を生かした軍事戦略を打ち立てられれば、国民多数の思いを満たしつつ、日米安保に引きずられない、日本独自の立ち位置が可能になるというのが著者の狙いだ。逆にそうした段階を経ずして、対米自立も、非武装実現への道も難しいのではないか?  日本の「専守防衛」には、「装備の最小化」と「集団的自衛権の放棄」という九条が導く特異性があるという。それらを生かした軍事戦略とは? 護憲派必読の書。(道)

生活保護リアル

みわよしこ 著

  • 生活保護リアル
  • みわよしこ 著
  • 日本評論社1400円
 著者は科学系のライター。障害当事者として友人の生活相談を引き受けているうちに、生活保護に詳しくなったという。3・11後は特に相談が増え、知識を活かして昨年夏以来、ウェブ上の「ダイヤモンド・オンライン」に「生活保護のリアル」と題して連載を開始。また、安倍政権の生活保護基準引き下げ根拠「生活扶助相当CPI」の問題点追究も記憶に新しい。  「リアル」を表現するため、しごく“普通”の生保受給者5人にインタビューし、民間・行政・研究者など多様な人々にも話を聞いている。そして、憲法第25条の「健康で文化的な最低限度の生活」とは?、「最低生存費」と「最低生活費」の違い、生活費にストックが認められない制度は金やモノだけでなく人とのつながりさえも断ち切られる、という。  「生活保護は最後のセーフティーネットと言われてきたが、現在の制度は一度付いたら離れない“トリモチ”」だ。議論の前に、まず立ち止まって読んでほしい。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
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 加入者名:婦人民主クラブ
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