WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

ヒロシマとフクシマのあいだ ジェンダーの視点から

加納実紀代 著

  • ヒロシマとフクシマのあいだ ジェンダーの視点から
  • 加納実紀代 著
  • インパクト出版会1800円
 「ヒロシマはなぜフクシマをとめられなかったのか」。福島原発事故を契機に、広島の被爆者である女性史研究家の著者が、身を切る思いで真正面から挑んだ。  「核」を軸に戦後史をみれば、戦後の天皇制と原子力の共犯関係も明らかに。「原爆=悪」だが、「原子力の平和利用」が国策になると、原水爆禁止運動も「母親大会」も、ふぇみん(当時「婦人民主新聞」)も、当初は原発による人類繁栄を夢みていた事実が窺える。著者は倫理問題にせず、背景にある産業構造変化と「男性正社員と主婦」という家族の形成を指摘する。  さらに、過去の、今の脱原発運動にもみられる「母親」運動を分析。「子どものため」「母として」は、自己解放を目指すリブやフェミニズムから批判されてきた。しかし著者は、「母性」を解体しつつ、「一代主義」に陥らない、「過去からの恩恵で生きてきた人間の当事者としての責任」を説く。適切な言葉が見つからず鬱々としていた私に大きな力をくれた。(登)

マイ・レジリエンス トラウマとともに生きる

中島幸子 著

  • マイ・レジリエンス トラウマとともに生きる
  • 中島幸子 著
  • 梨の木舎2000円
 著者はつらいDVや性暴力の経験を伝えたいのではない。暴力被害をうけた女性たちが、トラウマ(深い心の傷つき)を少しずつでも回復できるように、生きていることの幸せを感じてほしいと願う。その気持ちが、慎重に言葉を選びながらつづられていく。  「レジリエンス」とは回復力という意味。デートDVをうけていた著者は、後にレジリエンスと名付けたグループで、被害女性の回復とケアをテーマに活動を始める。著者が語る経験から理解することは多い。暴力による完璧な支配から自分を守る方法、複雑なPTSDや解離性同一性障害(DID)、トラウマ後の成長(PTG)を知ることは、人を知ることだ。そして人が生きのびるために発揮する力の奥深さも知る。分析し、最新の知見を取り入れ、伝えていく方法は著者独自のスタイルで、安心感がある。  失ったものを認め、グリーフ(深い喪失感)を手当てしていくことは、今の“生”を大切にすることだと分かる。(三)

終わらないイラク戦争 フクシマから問い直す

嘉指信雄、森瀧春子、豊田直巳 編

  • 終わらないイラク戦争 フクシマから問い直す
  • 嘉指信雄、森瀧春子、豊田直巳 編
  • 勉誠出版1800円
 今年、イラク戦争開戦から10年となった。3月には10年を問うシンポジウムも開催されたがイラク戦争は終わっていない。本書では核兵器や原発、自衛隊や在日米軍のイラク派遣の是非、あるいは劣化ウラン被害の現状にNGO、ジャーナリスト、研究者が迫る。  イラクではがんが増え、「奇形児」の出産も多発している。医師たちの努力とNGOの支援が続けられている状況が報告される。米国に追随して軍隊を派遣した国々では、その検証が進むが、日本では棚ざらしになっているのが現状だ。  「原発絶対安全」神話、イラク戦争の開戦とその支持にあたっての、イラクにある大量破壊兵器とサダム・フセインはテロ支援者という神話、自衛隊の行く先は安全で人道援助を行っているという神話。それらの神話を支えていたのが、私たちの無関心だったとしたら? 負ってしまった責任を果たすために「現実にしっかりと目を見開かなくてはならない」。(い)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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