WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

障害者介助の現場から考える生活と労働 ささやかな「介助者学」のこころみ

杉田俊介、瀬山紀子、渡邉琢 編著

  • 障害者介助の現場から考える生活と労働 ささやかな「介助者学」のこころみ
  • 杉田俊介、瀬山紀子、渡邉琢 編著
  • 明石書店 2500円
 私が障害者自立生活センター(CIL)で介助者として働いて11年。通常の介護が持つ保護=支配的側面を拒否する「当事者主体」がとてもまぶしかった。  だが難しさもある。CILの「指示に従う介助」では、「気づきや配慮」といった介助者側の能力はかえって好まれない。したがって長年働いても能力向上があまり実感できない。また同僚と会う機会はめったになく、介助者が思いを出せる場所もほとんどない。  自分を抑制してきた支援者たちの著作が近年目につくが、介助が「職業化」していく中で、メンタル面も含めた労働環境が介助者たちの課題になったことも背景にある。職業的課題にとどまらず、「当事者主体」に支援者が自らの当事者性をどう寄り添わせるのか。障害者運動の提起した問いを自分たちの問いとしてどう捉え直していくのか。考えるヒントに満ちた一冊。(道)

このTシャツは児童労働で作られました。

シモン・ストランゲル 著 批谷玲子 訳

  • このTシャツは児童労働で作られました。
  • シモン・ストランゲル 著 批谷玲子 訳
  • 汐文社1600円
 GAPやH&M、そしてユニクロなどの低価格衣料品の多くがアジア諸国で作られていることは、よく知られた事実だ。ノルウェー人作家の著者は自分の身の回りから関心を持ち、世界の貧困をなくす運動を行っている。本書はタイトルが示すとおり、低賃金で人権を無視した労働をテーマに、主に若い読者に向けて書かれた小説。  ノルウェーのオスロ、バングラデシュのダッカ、コートジボワールと3カ所を舞台とした物語が同時進行し、オーバーラップさせながら具体的に非人道的な児童労働や奴隷労働を訴えている。オスロの10代の主人公たちのちょっとアングラな活動に恋愛も絡め、この問題を誰もが身近に感じられるようになっている。きれい事で終わらないのも特徴だ。  だから読後感は一筋縄ではいかない。オスロでの行動は気持ちをざわつかせ、ダッカの出来事からはバングラデシュのビル倒壊事件を想起する。人に訴えることの難しさも考えさせられる。(三)

忘れられない日本人移民 ブラジルへ渡った記録映像作家の旅

岡村淳 著

  • 忘れられない日本人移民 ブラジルへ渡った記録映像作家の旅
  • 岡村淳 著
  • 港の人1800円
 著者は、考古学徒からテレビ映像制作会社を経て、1987年にブラジルに移住、97年からはハンディカメラを手にひとりで取材・撮影・編集・上映までこなし、一匹狼ならぬ“一匹カピバラ”を自称する記録映像作家。移住して以降、ブラジルの社会・環境問題や在ブラジルの日本人、日系人を追ってきた。その中の7人の日本人移民1世のドラマと映像に収まらなかったたくさんのエピソードが本になった。土地なし農民運動のリーダーや陶芸家、無声映画の巡回弁士、在ブラジルの被爆者運動家など、戦前戦後の日本の移民政策に翻弄され苦汁をなめた人々だが、テレビが求めるような開拓・悲劇のステレオタイプの移民像ではない。  まるで話を聞くように軽妙な“岡村節”の文章にそれぞれの多様な人生や労苦が浮かび、1世とのやり取りの中での著者の気づきにもうならされる。  「1人でも見る人がいれば駆けつける」という著者を迎えて、上映会も開催したくなる。(い)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ