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ふぇみんの書評

閉経記

伊藤比呂美 著

  • 閉経記
  • 伊藤比呂美 著
  • 中央公論新社1400円
 閉経期の「閉経記」。更年期ともいう。そろそろかな、なんて自分に引き寄せて読んだ。本書は『良いおっぱい 悪いおっぱい』を書いた詩人で作家のエッセー。著者は米国カリフォルニアに暮らす。  独特のリズム感で、閉経期の女の不安定さや、身を持て余すような日常が綴られる。ラテンダンスのズンバを踊り、ゆるい服を着る。母と父と、男たちと、娘たちとの時に濃密で、時にあっさりとした関わり。「父の娘」の著者は、母とは何度も衝突した。母にさんざ縛られながらも、最後に「あんたがいて楽しかったよ」と言わしめた姿には涙が出る。著者は両親亡き家で子ども時代の人形を見つけて抱きしめ、「おとうさんとおかあさんは死んじゃったよ」と泣く。  女の身体の表現は生々しくて色彩豊かだ。経血の「祝祭的なほとばしり」、なんと詩的な言葉だ。「漢」を「おんな」と読ませる感性にも頷く。潔さと豪快さと、躊躇とあきらめ。これぞおんなで「漢」で閉経期。(三)

ダムを造らない社会へ 八ッ場ダムの問いかけ

上野英雄 編

  • ダムを造らない社会へ 八ッ場ダムの問いかけ
  • 上野英雄 編
  • 新泉社2000円
 日本には現在、3000基に達するダムがある。その中には治水上、まったく必要がないどころか、土砂が大量に流れ込み、予想を超える早さでほとんど埋まっているものも数多くあるという。日本のダム建設が将来の見通しもなく、いかに無計画に行われてきたかがよく分かる。その最たるものが本書の核をなす「八ッ場ダム」だ。浅間山噴火、ドミノ倒し地滑りなどの想定できない自然災害が危惧されているのをはじめ、吾妻渓谷の景観破壊、分断されたコミュニティーや新しい場での生活の再建における重い課題、さらには温泉地としての将来にも不安を抱えていることなどを、ダムに長年関わってきた人々が吐露する。  では、ダムに頼らない生活はどうなのか。最後の章では茨城・霞ヶ浦、四国の吉野川、那賀川、九州の川辺川など、自然との共生を選んだ人々の知恵を披露する。豊かに生きるためには何を選択すればいいのか、本をもとに多くの人と考えてみたい。(室)

混迷するシリア 歴史と政治構造から読み解く

青山弘之 著

  • 混迷するシリア 歴史と政治構造から読み解く
  • 青山弘之 著訳
  • 岩波書店1700円
 本書はシリア研究の専門家の著者が、世襲共和制と言われる政体と社会的亀裂を利用した支配構造、東アラブ地域での地政学的位置、反体制勢力の複雑な構成、「アラブの春」と言われる2011年以降の情勢などについて詳述する。  著者は繰り返し、シリアでの対立は宗派対立ではなく、「勧善懲悪や予定調和に基づいた『民主化論』や『アラブの春』の通俗的ステレオタイプによって」見るべきではないとする。  2011年後半、政権による弾圧が激化すると、反政府運動は市民や反体制勢力の緩やかなネットワーク「調整」の手を離れ、中心が武装集団「自由シリア軍」に移行。さらに現在は、外国からの資金・武器援助と暴力的保守集団がシリアに流入して混乱に一層拍車がかかり、「政権と反体制勢力の双方向的な暴力の応酬」(内戦)となっている。難民の数は140万人に及ぶ。この状況を前に立ちすくまざるを得ないが、シリアへの関心を失ってはならないと著者は訴える。(い)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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