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ふぇみんの書評

告発! 隠蔽されてきた自衛隊の闇 元防衛省女性事務官が体験した沖永良部島基地「腐敗といじめの20年」

泉博子 著

  • 告発! 隠蔽されてきた自衛隊の闇 元防衛省女性事務官が体験した沖永良部島基地「腐敗といじめの20年」
  • 泉博子 著
  • 光文社1500円
 奄美群島のひとつである沖永良部島、花咲くのどかな島にも自衛隊基地がある。基地の事務職員だった著者は、上官らが公費を流用、テレビやアイロンなどを購入していると内部告発したことで執拗ないじめとパワハラを受ける。だが自殺を考えるほどの地獄の日々を耐え、昨年、定年で退官した。ならわしであるはずの盛大な送別会も著者だけは例外、これが最後のいやがらせだった。不正を上層部に直訴し、会計検査院に訴えてもかえって組織ぐるみの隠蔽を招いてしまう。  本書の場合は、軍需産業と癒着し、実刑判決を受けた「防衛省のドン」こと守屋武昌元政務次官ほどの巨額汚職ではないが、閉鎖的な縦社会のうみを果敢に明るみに出した功績は大きい。  著者はまた、本書を著した理由のひとつとして、闇に葬られることの多い自衛隊内の「いじめ自殺」問題を挙げている。その思いにも共感した。(束)

戦後日本の人身売買

藤野豊 著

  • 戦後日本の人身売買
  • 藤野豊 著
  • 大月書店3900円
 「人身売買」は「あってはならない」と、国際条約でも戦後の日本でも言われてきた。それとはうらはらに、「戦後民主主義」の中で、国家が人身売買に救貧対策や失業対策の不十分さを補填させ、維持・正当化してきた歴史を、本書は詳細な資料に基づき明らかにする。そして、売春防止法ができ、人身売買罪の創設(2005年)後も、三重県・渡嘉野島のように、観光業者や税収入を得る自治体が黙認する中、外国人女性の買売春という人身売買が行われている「今」につなげる。  新憲法や児童憲章の制定後も農・漁村や炭坑の貧困を背景に、多くの女性や子どもが売られた。時々で社会問題になるも、慣習として黙認・擁護する論調が政府にも社会の側にもあり、売春では被害者の道徳観が批判された。国家が担うべき社会的弱者への対策を怠り、子どもと女性で清算してきた。人身売買を道徳の問題にせず、国や自治体の責任を明示しており、真の解決の示唆に富む。(登)

フランス女性はなぜ結婚しないで子どもを産むのか

井上たか子 編著

  • フランス女性はなぜ結婚しないで子どもを産むのか
  • 井上たか子 編著
  • 勁草書房2400円
 フランスは先進国の中でも出生率が高く、女性の就労率も高い。また生まれてくる子の半数以上が「婚外子」という。本書では、記者、学者たちが、日仏それぞれ多数のデータを基に、少子化政策や家族政策、また家族法、婚姻規範を比較し、最後の全体討論では日本の近代家族を再検討する。  まるで“結婚から子どもが生まれる”ことを前提とする日本では、強い近代家族規範と制度によって働く意思のある女性たちを家庭に閉じ込め、就労や職場のジェンダー不平等、婚外子差別などが温存され、少子化は続いている。結婚した女性が生殖技術を受ける率は高くなり、一見子どもが熱望されているようにも見えるが、この前提ではこういった規範を強化することになっているだろう。  女性たちの暮らし方の変容や運動から打ち出されたフランスの政策が、女性だけではなく、子どもや同性愛者がそれぞれ制度で守られる仕組みに向かっていることは重要だ。(み)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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