WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

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ふぇみんの書評

ヒーローを待っていても世界は変わらない

湯浅誠 著

  • ヒーローを待っていても世界は変わらない
  • 湯浅誠 著
  • 朝日新聞出版1300円
 「周りには維新の会に投票する人はいないのに」「マスコミが悪いから橋下が持ち上げられる」…こうつぶやいてしまう人は要注意。それは自分の活動がどれだけ、一般の人と乖離し、「蛸壺化」してしまっている証拠。本書は、反貧困の社会活動家で2009年から内閣府参与も務めた著者による、危機に陥っている民主主義の本。今を読み解き、取り組むべきことを明らかにする。選挙後に暗澹たる気持ちになっている、社会運動をしている人たちに読んでほしい!  民主主義は、「面倒くさくて、うんざりして、その上疲れる」もの。一方格差・貧困社会は、国民全員を追いつめて余裕のない状態にし、民主主義と向き合う力を奪い、「とにかくさっさと決めてくれ」と「斬り込み隊長」を期待する空気をつくる。それが、民主党への政権交代であり、「橋下現象」。とすれば、「橋下」批判でなく、支持する人たちに飛び込むようなアプローチ、人と人を結ぶ仕掛けが必要だと著者。憂う暇はない。(登)

外国人市民がもたらす異文化間リテラシー NPOと学校、子どもたちの育ちゆく現場から

落合知子 著

  • 外国人市民がもたらす異文化間リテラシー NPOと学校、子どもたちの育ちゆく現場から
  • 落合知子 著
  • 現代人文社2500円
 日本に生まれ育った外国人の若者たちが、強い同化圧力がはたらく日本社会でどのように差別やさまざまな困難と向き合い、無視あるいは抑圧され続けてきた独自の文化を取り戻し、自分の生きる道を見出していくのか。著者(本紙12月5日号1面)は約10年間外国人コミュニティーに足を運び、ともに時間を過ごしながら声を聴き取ってきた。そのなかから彼女、彼らのもつ力を見出し、「異文化リテラシー」と名付ける。そして「エスニックマイノリティ独自の意見や視点を認識し、発信する力」「他者との対話を通じた自己変革力」「多文化間共生社会構築力」の3つからなる異文化間リテラシーこそが、社会全体に豊かさをもたらすと具体例を提示しながら指摘する。  ともすれば「社会的弱者」という立場に追いやられがちな彼女、彼らを「外国人市民」と位置づけ、その力と可能性を実感をもって評価する姿勢に共感する。(葉)

往復書簡 広島・長崎から 戦後民主主義を生きる

関千枝子、狩野美智子 著

  • 往復書簡 広島・長崎から 戦後民主主義を生きる
  • 関千枝子、狩野美智子 著
  • 彩流社2500円
 まさに生きた戦後史だ。著者は、1932年生まれで広島で被爆、新聞記者として働き、『広島県第二県女二年西組』を著した関千枝子さんと、1929年生まれで長崎で被爆、教員の後スペイン・バスク地方や野上弥生子の研究をした狩野美智子さん。この二人の3年間の往復書簡がまとめられた。  関さんと狩野さんそれぞれの体験から、昭和一桁の親から聞いた戦争体験も思い出した。勤労動員、生き残った苦しみ、「抑えつけられていたエネルギーが、戦争が終わって、パッと解き放され」た敗戦、朝鮮人たちの「喜び笑いさざめく声」。新聞社で女性初の地方支社勤務を勝ちとる「男女平等」の実践、教員の組合活動、レッドパージなど戦後史の一場面が個人史として生き生きとつづられていく。  往復書簡の形式も意義深い。聞き合うことで記憶がよみがえり、伝え合うことで言葉が紡ぎ出される。戦中・戦後は庶民にとってたやすい時代ではなかった。今、この経験をどう受け継ぐか。(三)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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