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ふぇみんの書評

基地村の女たち もう一つの韓国現代史

金蓮子 著 山下英愛 訳

  • 基地村の女たち もう一つの韓国現代史
  • 金蓮子 著 山下英愛 訳
  • 御茶の水書房2800円
 「私を見て下さい。一人の女が売春をやめるのにこんなにも長い時間がかかりました」。著者は1964年から25年間、「売春」女性として生きた、基地村女性出身の初の運動家である。基地村とは、韓国の米軍基地周辺にある性売買業の密集地。著者は自身の体験の証言をとおして、まったく知られていなかった実態を明らかにしてきた。彼女が必死の思いで体の中にたまったものすべてをはき出すように書いたこの自叙伝からは、自身だけでなく、性病、妊娠、堕胎に苦しみ、侮蔑され、殺され、自殺し、事故で死んでいった同僚たちの無念も伝わってくる。  姉御肌でユーモアとウィットに富む著者は不正に黙っていられない。女性の自活活動や共同体づくり、「混血児」のための活動まで行う。  基地村女性を無視し続けてきた韓国社会、マスコミ、反米運動や女性運動、研究への批判は他人事ではなく、構造を変えねばという叫びは、日本の私たちにも向けられている。(風)

福島と生きる 国際NGOと市民運動の新たな挑戦

藤岡美恵子、中野憲志 編

  • 福島と生きる 国際NGOと市民運動の新たな挑戦
  • 藤岡美恵子、中野憲志 編
  • 新評論2500円
 3.11後、日本国際ボランティアセンターや国際環境NGO FoE Japanなど、いくつかの国際NGOが福島支援を行っている。国内での経験の乏しさや、スタッフの被ばくリスクの問題があったが、「福島に何かしなくてはいられない」という思いに突き動かされたのだった。本書では、福島にとっては「外部から来た」者、しかし、自ら高い放射線量の地域に入るという意味でも、日本全体が被ばくしたという意味でも、また何よりも原発を成り立たせている構造に関与しているという意味で、他者性と当事者性の双方をもったNGOが現地の人々の声に耳を澄ましながら、迷い、悩みつつ歩んだこれまでの軌跡が、自らの言葉で語られている。  国策は、福島に残る人と避難する人、生産者と消費者…といった大きな亀裂を作った。しかし、自身の葛藤と向き合いながら、福島の人々と共に歩む人たちが確実に新たな形のコミュニティーを生み出している。(ま)

暗闇の思想を/明神の小さな海岸にて

松下竜一 著

  • 暗闇の思想を/明神の小さな海岸にて
  • 松下竜一 著
  • 影書房2400円
 暗闇の思想。原始の世界を想起させる言葉だが、著者は発電所のこれ以上の新増設を停止し、今ある電力で成り立つような文化生活を考えようという主張だとする。  すべての原発が停止する中で、電力会社の強いた節電(=不便さ)キャンペーンを前にして、予想外に多くの人びとが街なかに広がる暗がりを受け入れた。多少不便であっても、原発はいらないと。  各地で巨大開発が進められた70年代、大分県在住だった著者も地域のあり方をまるごと変えてしまう開発に反対する住民運動に取り組むことになる。開発至上主義と電力需要という大義名分に抗する「住民の論理」を模索しながら続けられた火力発電所反対運動を、弱さや失敗を含めて綴った遺著が1冊となった。本書が問い続けたものは、時代状況が異なるとはいえ私たちが直面している問題である。  再び煌々と照らされるようになった街なかに響く「強い日本」を求める声を問い返し続けるために。(ち)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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