呪縛の行方 普天間移設と民主主義
琉球新報社 編著
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- 呪縛の行方 普天間移設と民主主義
- 琉球新報社 編著
- 琉球新報社1524円
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普天間基地の辺野古移設。本紙の読者なら、これが1995年に起きた米海兵隊員による少女強かん事件に端を発した沖縄の負担軽減のためでないことをご存じだろう。海兵隊と海軍のための複合軍事施設を辺野古に建設する65年の米軍マスタープランは、米議会が予算承認せず頓挫したが、復帰によって日本の費用で作られることに。現在の新基地計画である。
一方、辺野古不要論は米軍やCIA等、米国内にもある。どうやら基地建設を推進しているのは日本政府のようだ。呪縛とは、まじないで動けない様、心理的に自由を奪われている状態だが、収録された守屋武昌・元防衛事務次官の日記から、外務・防衛の両官僚が自ら呪縛にかかり、県外移設の可能性をつぶしていった過程が分かる。
沖縄が目覚めつつある中、安保体制も抑止力もオスプレイ配備も、日本人ひとりひとりが解き放たれるべき呪縛であることを示唆してくれよう。本書は2010年度JCJ賞受賞の連載のまとめ。(た)
スクール・アート 現代美術が開示する学校・教育・社会
中川素子 著
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- スクール・アート 現代美術が開示する学校・教育・社会
- 中川素子 著
- 水声社2800円
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こんなアートたちに出合っていたら、学校で感じた鬱屈した気分に風穴が開き、子どもの私はそこから自由に手足を伸ばしていられたかもしれない。
本書は、本紙で「絵本のちから」を連載していた美術評論家の著者による、子どもたちと教育の現状を表現した美術作品の評論。巨大化した虚ろな目の少年が学校の窓や玄関口から指をわずかに出した石井徹也「囚人」や、幼稚園から大学まで各段階の入学の難関度と卒業のたやすさをゲームで体感するピーター・ベラーズの作品など、今の教育の犠牲となる子どもや、教科書、校舎、マークシートまでもアートに変え、時にクスッと笑い、時に心をつかまれ泣き出したくなるような作品たち。
著者は作品を可能な限り実際に見て感じ、作者に会うことで、作品をより深く彩色豊かに伝えた。閉塞した教育環境に穴を開けたり、生徒たちのエネルギーを最大限引き出すこともできるアートの力を存分に見せてくれる。(登)
メディアと活性 What's media activism?
細谷修平 編
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- メディアと活性 What's media activism?
- 細谷修平 編
- インパクト出版会1800円
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2012年の今、多くの「メディア」が巷にあふれる。市民ビデオの創成期、高価だったビデオを手にした人々の表現(1971年、水俣病の加害企業に向けた視線)は、現代のメディア活動家たちと同じ、「社会に訴えたい」という熱い思いだった。湾岸戦争の起きた1991年、リアルタイムな映像が可能になる。小型化、軽量化した機材によって、9.11、3.11は市民メディアが真価を発揮した。メディアは映像だけではない。ジン(アートな小冊子)も、「模索舎」などが発信したミニコミもある。
本書は「検証:日本のメディアアクティビズム」と題したトークが発端で作られた。今をトキメク、メディア活動家たちが熱く語っている。「不要に難解でなく平易なものを」「縦型社会性を破壊したい」「発信する場所を獲得しようとしている人や、自分が持つ権利を守ろうとする人がメディア・アクティビスト的立場にある」等々。Youtubeのある現代、メディアはDo it yourselfだ。(三)