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ふぇみんの書評

キレイならいいのか ビューティ・バイアス

デボラ L・ロード 著 栗原泉 訳

  • キレイならいいのか ビューティ・バイアス
  • デボラ L・ロード 著 栗原泉 訳
  • 亜紀書房2300円
 “人間、見た目が第一”という雰囲気が蔓延する昨今、本書は刺激的だ。著者はアメリカの法学者、服装には無頓着だったのに、スタンフォード大学「女性とジェンダー研究所」所長に就任したとたん、財団理事や寄付者に接触するからと周囲から服装改造を迫られる。そんな「個人的なこと」から始まり、「砂時計体型」が理想化され女がダイエットや化粧品に夢中にさせられるという「政治的なこと」へと話が展開していく。  容姿について語ることは、フェミニズムの多様性と混乱の素描にもなる。ハイヒールの肉体的苦痛は中国の纏足(てんそく)につながる社会的抑圧でありつつ、ハイヒールで上司と目線が同じになるメリットもある。美容整形や豊胸手術が女をエンパワーするという主張もあれば、身体を破壊するという告発も成立するのだ。  はたして容姿差別は法律で禁止できるのか。困難ではあるが、可能性は存在することを本書は教えてくれる。(香)

飼い喰い 三匹の豚とわたし

内澤旬子 著

  • 飼い喰い 三匹の豚とわたし
  • 内澤旬子 著
  • 岩波書店1900円
 どんな言葉を並べても、この迫力にはかなわない。『世界屠畜紀行』で世界の屠畜を取材した著者が、命を食すことを身をもって考えたいと、実際に1年間、食べる目的で3匹の豚を育てる。小屋を建てるために居を移し、糞にまみれる奮闘記。名前をつけて飼えばペット同様、情も湧く。甘えて鼻をすりつける子、すねて小屋の隅にうずくまる子。それぞれ個性もある。そんな彼らをつぶして食べるとき、何を感じるのか。  だが、それだけではない。ルポでは農家の庭先で豚やニワトリを飼っていた昔の光景が激減し、大規模農家が飼育も交配もオートメーションで手がけるようになったこと。その結果、肉の価格は下がり、1年がかりで育てた豚が2万円という、畜産業の苦況も明かされる。背後には均一にカット、パック詰めされた輸入肉の存在が。ファミレスなどで重宝されるそうだ。啓発する本ではない。ただ、自分が食べているものをまじまじ見直す機会になる。(室)

忘却に抵抗するドイツ 歴史教育から「記憶の文化」へ

岡裕人 著

  • 忘却に抵抗するドイツ 歴史教育から「記憶の文化」へ
  • 岡裕人 著
  • 大月書店1800円
 在独22年の歴史研究者が、長年のドイツの歴史教育の取り組みを紹介。ドイツの歴史教育は、ナチスによる独裁と戦争犯罪について十分な時間をかけるなど、各国から“模範”との評価が高いが、その裏ではさまざまな努力や試行錯誤があったことがよく分かる。  終戦直後のドイツ人は、戦争の被害者としての意識が強く、国が東西に分かれたことで、人々の歴史観には相違もあった。旧西ドイツでは、1970年代ごろから、過去の事実と責任を直視しようという動きが盛り上がり、ポーランドとの共同教科書委員会が設立される。著者は、この教科書対話が「相互理解のスパイラル」にいい動きを与えたと言う。  ドイツは今、統一で生じた二重の過去や、移民問題、兵役廃止、脱原発などを議論し、どう記憶していくかにも取り組む。責任を矮小化しようとする声とも闘ってきたドイツ。アジア諸国との相互理解を進めるべき日本にとって、この国から学ぶことは少なくないはずだ。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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