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ふぇみんの書評

タイム・バインド 働く母親のワークライフバランス

アーリー・ラッセル・ホックシールド 著 坂口緑ほか 訳

  • タイム・バインド 働く母親のワークライフバランス
  • アーリー・ラッセル・ホックシールド 著 坂口緑ほか 訳
  • 明石書店2800円
 本書で題材になっているのは、子育て支援施策が充実する全米でも有数の企業。しかし意外にも支援制度の利用率が低いのはなぜか。著者は経営上層部から工場労働者までの個々人を取材するうち、職場と家庭の奇妙な逆転現象に気づく。家庭では短時間ですべきことを終える「効率性」と同時に、「良質な」子育てが要求されるが、その評価は低い。女性たちは疲弊し、ストレスから逃れるように仕事に向かう。職場は家庭からの避難所のようにさえ見える。しかし時間を奪っているのは結局のところ企業である。  時間の問題はジェンダーの問題。自己責任ではなく、社会全体の構造を問い直すことこそが「時間運動」の始まりだと著者は言う。  日本の現状は「ファミリー・フレンドリー」施策どころか、非正規細切れ労働or過労死レベルの長時間労働の二択。道のりは相当、険しそうだ。(梅)

ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて

安田浩一 著

  • ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて
  • 安田浩一 著
  • 講談社1700円
 ソーシャル・ネットワーキング・サービスは2010年以降のアラブ民主化運動を瞬く間に拡大させたが、所詮は手段に過ぎない。その功罪は使う者と使われ方次第だ。これまで掲示板やブログを炎上させてきたネットマニアが市民団体を名乗り、リアルワールドに登場してきた。  「在日特権を許さない市民の会」が多くの共感者を集める背景には閉塞感や社会不安があると、著者は言う。その打破のために自らを「被害者」、「正義」の行使、「民主主義」と称しながらも、権力に抗うことをせず、社会的弱者への憎悪をむき出しにすることで得るカタルシス。おとなしい普通の人たちがマイクを手にすると人種差別主義者に豹変する。アジるリーダーの桜井誠に、威勢ばかりいい現大阪市長との共通点を感ずるのは私だけであろうか。こうした人物、組織が私たちのごく近くに存在し、それを生み出す何かを私たちが内在していることを示唆する書である。(た)

共存学 文化・社会の多様性

古沢広祐 責任編集 国学院大学研究開発推進センター 編

  • 共存学 文化・社会の多様性
  • 古沢広祐 責任編集 国学院大学研究開発推進センター 編
  • 弘文堂2500円
 石油や原子力といった地下資源に頼る社会からの転換の歩みがのろのろ状態だ。多くの動植物の命が失われる生物多様性の危機が進行し、連動して私たちの社会や文化も多様性を喪失しつつある。  この現状を打破し、永続可能な社会に移行するためにと提唱されたのが「共存学」(対立ではなく、共に在ることで、この地球を共有しようという試み)である。本書は「共存学プロジェクト」メンバーによる事例研究や公開フォーラムの講演を収録したもの。「グリーン経済」への移行をめざしブラジルでこの6月に開催された「国連持続可能な開発会議(リオプラス20)」を前に刊行されたもの。ややとっつきにくい論文調のものが多いのが残念だが、宮城県気仙沼市の「森は海の恋人」運動の畠山重篤さんの講演や、自然と上手に暮らす技を持つ祖父母世代に高校生が話を聞く「聞き書き甲子園」の報告から、めざす共存社会のイメージがつかめてくる。「共存学」の行方、注目したい。(束)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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