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ふぇみんの書評

〈身売りの日本史〉 人身売買から年季奉公へ

下重清 著

  • 〈身売りの日本史〉 人身売買から年季奉公へ
  • 下重清 著
  • 吉川弘文館1800円
 古来、日本の労働力の需給が人の売買にこれほど大きくよってきたのだということは、少なからず驚きだった。著者は膨大な史料を駆使して日本史の人の売り買いの内実と社会体制に迫っていく。正倉院に残る奴婢(ぬひ)の売券、戦場で敗者を生け捕りしては売る「人市」の存在、秀吉の朝鮮侵略軍に同行する人買い商人…。「人の売買」の事実が日本の歴史を荒々しく刻む。  江戸社会では労働力の需給が「人身売買」から「年季奉公」に変貌していくが、女には「遊女奉公」という形の身売りが定着していく。時の権力は都合により人の売買を規制していくが、年貢を納めさせ幕府を支えるため、妻や子女を売ることは近世に至るまで温存される。  日本を「人の売り買い」という角度から見ると、「イエ」と時々の体制を底辺で支えてきたのは一貫して女性だという構図が浮き上がる。アジアで今、人身売買の犠牲になっている子どもや女性たちが、本書の中にダブって見える。(翠)

内部被曝

肥田舜太郎 著

  • 内部被曝
  • 肥田舜太郎 著
  • 扶桑社724円
 「内部被曝」という言葉が、東京電力・福島第1原発事故以来、少なくとも東京に住む私の周りでは日常生活の言葉になってしまった。「内部被曝は怖い」とよく聞くが、何がどう怖いのか。自らも広島で被爆しながら、米の軍事秘密とされた「内部被曝」に苦しむ6000人の被爆者を診てきた95歳の著者。本書は低線量の内部被曝のメカニズムや危険性、今後の暮らし方などを説いた。  政府や「原子力ムラ」は低線量の内部被曝の影響を無視しているが、高線量の外部被曝よりも人体にとって危険であることが証明されている(ペトカウ効果)。またいくつもの統計調査が女性の乳がん死亡率や乳幼児死亡率などの上昇との関連性を明らかにしている。それは今後の日本で確実に起こること。著者は「自分は被曝している」と覚悟し、本来の免疫を落とさない生活をと呼びかける。原発の通常運転でも低線量の内部被曝にさらされる「一億総被曝時代」、今一度著者の声を刻みたい。(登)

地方の論理 フクシマから考える日本の未来

佐藤栄佐久、開沼博 著

  • 地方の論理 フクシマから考える日本の未来
  • 佐藤栄佐久、開沼博 著
  • 青土社1400円
 国の原発政策に異を唱えて失脚した佐藤栄佐久前福島県知事と、原発立地が原発をいかに「抱きしめ」ていったかを描いた若手の社会学者、開沼博。二人が対談し、佐藤のやってきたことの根源的意味を探った書。  本書の中で比重は高くないが、佐藤は男女共同参画政策に熱心で県内の別学の公立高校を男女共学としたことを知った。あるいは環境政策でも国よりも厳しい環境基本条例をつくり「環境知事」と言われる。  保守政治家であった佐藤が地方から発想することを徹底していく。それは「道州制」は中央の支店が、東北なら仙台に来るだけ、と見抜く小気味よさでもある。只見ダムの水力発電により銀座の街灯に灯がともったといわれるが、只見では金が落ちず医師がいない。海外にも、多くを学びに行った。原発事故後彼の判断が生かされていたらと思ったが、その佐藤の思想をトータルに引き出している良書だ。(衣)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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