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ふぇみんの書評

司法は原発とどう向きあうべきか 原発訴訟の最前線

現代人文社編集部 編

  • 司法は原発とどう向きあうべきか 原発訴訟の最前線
  • 現代人文社編集部 編
  • 発行=現代人文社 発売=大学図書1900円
 司法が原発の危険性に向き合えていたら、福島第1原発事故のような事故は起こらなかったかもしれない。原発事故の責任は、東電をはじめ、国や原子力ムラにあることに間違いないが、司法の責任は大きい。全国各地で提起された原発訴訟の40件にのぼる判決のうち、住民側が勝訴したのは2件のみ。多くが国や電力会社の安全審査基準や耐震基準をほぼ鵜呑みにしたものだ。裁判官も原発の安全神話を信じる、一国民であることが明らかになった。  本書は、これまでの原発訴訟のあらましや、判決の中で住民側が有利に使える法理論などを紹介し、再稼働問題で紛糾する今の、原発訴訟のやり方を示す。国の安全基準が崩壊した今こそ、新たな法理論も駆使して、全原発の差し止め訴訟を提起するチャンスだと訴える。法律用語が多いが、市民の大きな力になる一冊だ。志賀原発2号炉運転差し止め訴訟の一審で住民側勝訴判決を導いた元裁判官の話や原発被害者の声なども集録。(登)

目取真俊の世界(オキナワ) 歴史・記憶・物語

スーザン・ブーテレイ 著

  • 目取真俊の世界(オキナワ) 歴史・記憶・物語
  • スーザン・ブーテレイ 著
  • 影書房2500円
 目取真俊の「沖縄」を説く本書は、「明るく楽しい南国の島」沖縄のガイドブックではない。目取真は、歴史という記録に包み隠されている沖縄を小説の中で解き明かしていく。標準語、ラジオ体操、大和人、靖国思想などのエピソードが、読者自身の深い記憶にまで届き、沖縄を感じさせる。その小説の幻想的もしくは現実的な世界の中で視覚、触覚、嗅覚、知覚を刺激され、すっかりむき出しの生身になり、まるで戦地の沖縄に立っているかのように身体が固まっていく。その時、著者がまるで読者の傍らにいて、ひとつひとつの表象を見過ごさないように導き、そこに現れる戦争と今を問う。  著者は読者に疑似体験させる目取真の手法を、「記憶や他者の体験の分有を考える上で大きなヒントを与えてくれる」という。東日本大震災と原発事故から1年過ぎ、私たちはその記憶をどのように残していくのか。それには私たちの想像力が鍵となるのかもしれないと、この本書から感じた。(み)

民衆騒乱の歴史人類学 街路のユートピア

喜安朗 著

  • 民衆騒乱の歴史人類学 街路のユートピア
  • 喜安朗 著
  • せりか書房3000円
 19世紀前半の民衆運動(社会との関わり)がどのように発展したのかを問うた本書。19世紀前半、1830年の7月革命、1848年の2月革命のころのパリが舞台だ。  映画『天井桟敷の人々』に登場したように、労働者も中産階級も交ざって生活していた時代。混乱や弾圧や騒動に負けじと、ブールヴァール(大通り)が民衆の広場となり活動の場になっていった。  その中で労働者が権利や要求を求め始める。政治行動をしアジテーターが、カルチエ(地区)の中に生まれる。生活圏の内側で対立が生まれ、蜂起が起きた。そして…。  それにしても社会が大きく変貌する時代はおもしろい。現代のグローバルな反貧困、経済格差に抗議するオキュパイ(占拠)運動、脱原発運動の広がりとの共通点を考えるとき、民衆がエネルギーを蓄えてはき出していくことが普遍的なのだということがよく分かる。今の社会運動との共通点や相違を考える読み方は実は著者には意外かもしれないが。(三)
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 6カ月4,500円、1年9,000円
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