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ふぇみんの書評

継続する植民地主義とジェンダー 「国民」概念・女性の身体・記憶と責任

金富子 著

  • 継続する植民地主義とジェンダー 「国民」概念・女性の身体・記憶と責任
  • 金富子 著
  • 出版社:世織書房 価格:2400円
 歴史を学ぶことは自分を訂正すること-ある女性歴史家の言葉だが、本書はまさに自らを訂正できない日本社会において読むべき一冊だ。研究者で運動家である在日朝鮮人女性の著者が、日本の植民地支配責任を問い続けた論考(2000年から10年間のもの)を収録。ジェンダーの視点を中心軸に、民族、階級、居住地などの要因もふまえつつ、「植民地帝国」日本の過去と現在を浮き彫りにする。  第1部は、日本の「臣民/国民」概念や植民地教育を、第2部は、「慰安婦」制度と公娼制度に現れた女性の身体や言説を分析。第3部では、90年代「慰安婦」問題解決運動を取りまく日韓社会に現れた継続する植民地主義とジェンダーの関係性を論じる。朴裕河(パクユハ)『和解のために』、それを評価した日本の言説状況、上野千鶴子への批判的分析は、的確で重要なものだ。また、著者が関わった女性国際戦犯法廷の成果と課題、在日朝鮮人女性運動をめぐる論考も貴重。詳細な註は理解を助ける。(風)

原発のない世界へ

小出裕章 著

  • 原発のない世界へ
  • 小出裕章 著
  • 出版社:筑摩書房 価格:1000円
 東日本大震災、それは地震や津波だけではなく、「原発震災」という悲劇を生んでいる。この期に及んで推進派は安全安心を唱え、何を信じてよいか分からず、多くの人が悩みを抱えている。  原子力の危険性や問題点は政府、メディア、教育から隠されてきた。それに加え反対派の伝達力が弱く、多くの人が原発や放射能に対しては初心者、「3・11デビュー」となってしまった。  本書の内容は専門的であるが、著者の全国各地での講演のまとめに、鎌仲ひとみさんとの対談が加えられ、理解困難な原子力の問題を、3・11デビュー組にも分かりやすく伝えている。分かりやすいのは編者の腕もあるだろうが、著者の講演がいつでも、専門家風を吹かすことなく、聞き手への配慮や思いやりに溢れているからではないか。  文中で引用されているガンジーの「7つの社会的犯罪」。その一つに「人間性なき科学」とあった。著者の「愛情ある科学」を本書から感じてほしい。(月)

アシュリー事件 メディカル・コントロールと新・優生思想の時代

児玉真美 著

  • アシュリー事件 メディカル・コントロールと新・優生思想の時代
  • 児玉真美 著
  • 出版社:生活書院 価格:2300円
2004年、米国在住の重度重複障害のある女児(アシュリー)に対して、子宮摘出と乳房芽の摘出及びホルモン大量投与による身長抑制という医療介入が行われた。この「療法」は、アシュリーの親によって本人の生活の質を向上するためとして望まれ、医療者からは親の介護負担軽減策として、世の中の障害児に適用されるべきものと喧伝された。  著者は、このニュースに接し、障害のある子どもの親の立場から強烈な違和感を覚え、医療による身体のコントロールが広がり一般化していく社会のあり様に切り込んでいく。  介護負担を抱えた家族による望みをかなえ、障害児の身長抑制などの医療を認めていくことは、表面的には親の思いに寄り添っているように見える。しかし、実は、親だけが背負う介護をよしとし、親のSOSに耳をふさぐことになるのではないか、という著者のたどり着く疑念の核は、私たち一人ひとりに投げかけられたメッセージだ。(紀)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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