ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア
アリスン・ピープマイヤー 著 野中モモ 訳
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- ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア
- アリスン・ピープマイヤー 著 野中モモ 訳
- 出版社:太田出版 価格:3500円
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論文といえども、手に汗握る。「女性や女の子たち」が、ジン(手作りの冊子)をつくることで「個人的なことは政治的なこと」「DIY」などを実践し、90年代のアメリカでフェミニズムが若い世代にどう生きているのかが読み取れる。社会やフェミニズムの矛盾にぶつかり、かわいく、激しく、傷つきやすく、抵抗するガール・ジン。
日本でもミニコミや同人誌は、インディーズショップやイベントで出合うことがある。装丁の手作り感や生の表現はメジャーにはない面白さがあり、心地よさを感じる人は多いのではないか。
日本のフェミジンは? そのひとつに90年代に作られていた「あくまで実践獣フェミニスト集団FROG」が思いうかぶ。その、鍋を囲んで話されるサークル活動のジンは、アメリカのガール・ジンとは社会背景や表現の違いはあるが、どちらもフェミニズムを実践することを大事にしている。
とにかく、今すぐジンを作りたくなるのだ。(み)
ダウン症者・家族が幸せに暮らすために
近藤達郎、染色体障害児・者を支える会(バンビの会) 編
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- ダウン症者・家族が幸せに暮らすために
- 近藤達郎、染色体障害児・者を支える会(バンビの会) 編
- 出版社:晃洋書房 価格:2200円
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長崎県の「バンビの会」は、ダウン症児・者の家族と医療者が1989年に立ち上げた会。現在は、小児科医の近藤達郎さんが会長を務めている。
この本の前半は、1歳~58歳までのダウン症児・者の家族24人の手記。ショック、絶望から、自分のもとに生まれてきてくれたことへの感謝、喜びに至るそれぞれの軌跡がストレートな言葉からひしひしと伝わってくる。
「障がいを持った子どもが生まれた時の、あの絶望感は一体どこから来るのか。今は不思議に思います」と振り返る母親。一方、50歳を超えた兄を気付かう妹の「親とは違うきょうだいの苦労を語れる場がほしい」という声も切実だ。
後半は近藤医師による、医学的に見たダウン症の詳しい解説。基本的にダウン症者・家族に役立つ本だが、子育ての苦労を互いに語り合うことの大切さ、さらには「生きる価値」という誰にとっても考えさせられる普遍的テーマが詰まっている。(JO)
20年間の水曜日 日本軍「慰安婦」ハルモニが叫ぶゆるぎない希望
尹美香 著 梁澄子 訳
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- 20年間の水曜日 日本軍「慰安婦」ハルモニが叫ぶゆるぎない希望
- 尹美香 著 梁澄子 訳
- 出版社:東方出版 価格:1500円
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毎週水曜日の12時に韓国の日本大使館前で始まる「水曜デモ」。今年12月14日に1000回を迎える。世界でもっとも長く続くデモに、寒くても、体調が悪くても足を運ぶのが、かつて日本軍「慰安婦」にされたハルモニたちだ。
「このままで死ねない」と恨(ハン)を背負って生きるハルモニたちに、私たちはどう寄り添えばいいのだろうか。
本書はハルモニたちを支援する韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)の創立20周年にあたる昨年10月に出版され、このたび日本語版が完成。20年にわたる水曜デモのエピソードやハルモニたちの言葉がちりばめられている。悲観的な話だけではない。ハルモニたちの勇気ある行動は国境や世代を超えて多くの人々の心をつなぎ、希望を与えている。若者たちに、二度と戦争をしてはならないと誓わせる。
少女時代のハルモニたちの姿、しわが刻まれた尊厳ある今の顔、ページをめくり、ともに行動することの意義を思う。(室)