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ふぇみんの書評

ケアの倫理からはじめる正義論 支えあう平等

E・F・キテイ 著 岡野八代ほか 編著・訳

  • ケアの倫理からはじめる正義論 支えあう平等
  • E・F・キテイ 著 岡野八代ほか 編著・訳
  • 発行=白澤社 発売=現代書館 価格:1800円
 長い差別の歴史を経て女たちは、参政権など制度面での平等は勝ち得てきた。しかし男女賃金格差は大きく、母子家庭の状況は厳しい。著者は女たちから「逃げていく平等」に哲学の面から取り組み、大著「愛の労働あるいは依存とケアの正義論」を著わした。本書は哲学を根本から問う、その思想を読み説く。  重度の障碍をもつ娘を育てつつ研究を深めた著者は、ソクラテスからヘーゲルに至る政治哲学が、いかに成人男性健常者を中心に世界を捉えてきたかを悟る。自律する個人間の<平等>という前提が、いかに非現実的で、人間の存在に不可欠な<依存>という状態を無視したものかを論証し「どんな人でも、人生のある時期(幼児、高齢者として)誰かに世話されなければ生きていけない存在である」ことを出発点に、依存者やケアを担う人への社会的評価の変換が必要と指摘。依存とケアの本質に迫り、大震災後の社会を考える上でも、刺激的な示唆を与えてくれる。(恵)

「生き場」を探す日本人

下川裕治 著

  • 「生き場」を探す日本人
  • 下川裕治 著
  • 出版社:平凡社 価格:740円
 本書は、会社の駐在員としてではなく、自分で仕事をみつけて東南アジアで暮らす日本人のルポである。日本で稼ぎアジアで暮らす「外こもり」の若者も、派遣切りによってアジアで仕事をみつけるしかなくなった。リストラされた中高年もいる。サクセス・ストーリーはあまりない。起業しようとして騙される例も多い。でも、なぜかみんな元気だ。  背景には、「報われない」日本社会がある。管理と効率が追求され、失敗ややり直しは許されず、若い人を育てる余裕がない。ところがアジアに行くと、給料は安いが、風通しがいい。女性にとっては、信じられないくらい子育てがラク。暖かいし、周囲の人が手助けするのが当たり前だからだ。定年後、移住したい夫と、日本にいたい妻の意識の違いも興味深い。  息苦しさに耐えられない日本人にとって、アジアがセーフティーネットになっているのかもしれない。日本の閉塞感が、アジアからあぶり出される。(香)

テクノロジーとヘルスケア 女性身体へのポリティクス

日比野由利、柳原良江 編

  • テクノロジーとヘルスケア 女性身体へのポリティクス
  • 日比野由利、柳原良江 編
  • 出版社:生活書院 価格:2500円
 本書は「女性に親和的なテクノロジーと新しいヘルスケア・システムの創造」という研究プロジェクトの成果をまとめたものだ。まずは女性のための貴重な研究に、政府から補助金をとって着手してくれたことを称賛したい。  水島希さんは1970年代のリブ運動が優生保護法改悪とどう闘ったかを分析し、中絶にまつわる医療、費用、中絶技法、知識、中絶相談など、当時の課題の多くが解決されていないと指摘する。堕胎罪の撤廃も手つかずである。  女性のためという名目で医療技術が進む現在。「性暴力で妊娠した被害女性」(小宅理沙さん)、「偶然生まれる権利」(林千章さん)、海外の状況など、一章ごとに奥深いテーマを女性同士で語り合いたい。ピルによる避妊やホルモン治療に否定的なリブ世代と、薬に何の抵抗もない若い世代で、あるいは代理母出産を依頼する側とされる側の女性で、障害をもつ女性ともたない女性で、ヘルスケア意識は共有できるのだろうか。(矢)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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