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ふぇみんの書評

隠される日韓会談の記録

小竹弘子 著

  • 隠される日韓会談の記録
  • 小竹弘子 著
  • 出版社:創史社 価格:1800円
 植民地政策で被った、さまざまな苦しみを、韓国の人々が日本国政府や企業を相手に訴える戦後補償の裁判。しかし原告の願いを阻む大きな壁がある。「日韓請求権および経済協力協定により、完全かつ最終的に解決された」という協定を生んだ「日韓会談」だ。  韓国側が公開しているその文書を、日本政府は「外交上の不利になる」などの理由で非公開としてきた。これに対して日本の弁護士や市民が知る権利をもとに、2005年12月「日韓会談文書・全面公開を求める会」を結成。文書の全面公開のみならず、日本の植民地支配の事実を認めさせ、被害者への謝罪と補償の実現を目ざす。本書には会の事務局長を務めた著者(本紙今年1月15日号登場)ら市民の地道な闘いの記録がぎっしりと詰まっている。(現在、第3次訴訟中)  民主主義の根幹である「事実を知る権利」を追求する運動からは、日韓の弁護士が共同宣言を出すなどの成果を上げていることも見逃せない。(室)

九州の原発

橋爪健郎 編著

  • 九州の原発
  • 橋爪健郎 編著
  • 出版社:南方新社 価格:2000円
 九州には玄海原発(佐賀県)、川内原発(鹿児島県)があり、宮崎県串間で第3の誘致の動きが20年近く続いている。本書は主に川内と串間にページを割くが、圧巻は「新規立地策動」と題した第6章だ。九電の誘致戦術と反対派の動き、地元政治家の駆け引きがドキュメントされていて読みごたえ十分。初期から反原発を打ち出したJAの、「安心して仕事ができなくなる」という思いが大きな力になっていった。しかし現在も計画は完全につぶれてはいないという。  また1997年には川内原発のすぐ近くで、震度5弱と6の大地震が起きていた。この時の九電の恣意的なデータ公開や原発自動停止レベルの設定問題などから、電力会社の隠蔽体質がよく分かる。  本書は98年に出版された『原発から風が吹く』に、福島原発事故後加筆した新装版で、まさに九州の原発の手引書だ。編著者は定年まで鹿児島大学理学部助手だった。どこの地にも、原発に立ち向かう学者がいる。(さ)

看護婦たちの南方戦線 帝国の落日を背負って

大谷渡 著

  • 看護婦たちの南方戦線 帝国の落日を背負って
  • 大谷渡 著
  • 出版社:東方出版 価格:2800円
 太平洋戦争時、フィリピンや広東地域に派遣された、日本統治下の台湾人看護婦と、日本人陸軍看護婦や日赤救護看護婦たちの過酷な戦場の記録。生存者への聞き取り調査などからまとめられた。  米軍の爆撃や病で仲間を失い、爆撃が激しくなると、傷病兵を連れて、山岳地やジャングルをさまよい、敗戦により捕虜収容所に送られた看護婦たち。爆撃の続く山中で、彼女たちの月経が止まり、回復の見込みのない患者に、薬物注射で安楽死を命じられた話などが生々しく胸に迫ってくる。とりわけ、日本名に変えさせられ、日本国のために命を張って勤務してきた台湾人看護婦たちが、敗戦で、現地住民から「日本の鬼」と罵声を浴び、石や瓶を投げつけられたり、「中国人にはなりたくない」と言い残して自殺した看護婦などに心が痛む。  女性たちが、どのように戦線に巻き込まれ、どう生きたのか、その一端を知ることができる貴重で鮮烈な証言記録だ。(り)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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