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ふぇみんの書評

地宝論 地球を救う地域の知恵

田中優 著

  • 地宝論 地球を救う地域の知恵
  • 田中優 著
  • 出版社:子どもの未来社 価格:1500円
 いま講演などで引っ張りだこの「未来バンク」の田中優さん。最新刊のこの本は、出版予定だったN新聞社が電力会社を恐れ、「お蔵入り寸前」になったものを、復元・加筆した因縁の一冊だ。  「活動家」を自認する田中さんは、社会を変える方法として、政治家になるなどのタテ方向の変革、多くの人でムーブメントを起こすヨコ方向の変革に対し、もう一つの方法として、「新しい社会の仕組みをつくる」ナナメの方法を提唱し、実践する。  キーワードは「地産地消」。お金の地産地消を進めるNPOバンク。森を守り、将来の支出を減らす天然住宅の試み。自然エネルギーへの転換による地域活性化の仕組み…。具体的で現実的なシナリオの数々にワクワクしてくる。  忍耐や努力で「がんばる」のではなく、一人ひとりの好きなこと、得意なことをつなぎあって楽しく未来を切り開いていく知恵の数々。震災後の福島瑞穂さんとの対談も収録されている。(JO)

靴づくりの文化史 日本の靴と職人

稲川實、山本芳美 著

  • 靴づくりの文化史 日本の靴と職人
  • 稲川實、山本芳美 著
  • 出版社:現代書館 価格:2000円
 長年靴業に携わってきた日本の靴産業研究の第一人者と、文化人類学者のコラボによる本書。さまざまな視点から描かれ、まず目をひく。  げたや草履を履いていた日本人の靴との格闘、「被差別部落」や外国からきた人々が靴づくりを担ってきたという歴史、軍需産業としての製靴など靴産業の変遷、纏足をはじめ世界のさまざまな靴にまつわる習慣や文化、靴職人の高い技術などが興味深かった。  「セメント製法」が完成したことにより、大量生産が可能となったことで消費者の「靴の履き捨て」が生まれたとのことだが、今、若者たちに靴づくりブームが起きているのだという。バブル経済がはじけ、物づくりの仕事などが見直され、ファッション・アパレルの産業の一端と捉えられる靴づくりは、魅力的に映るようだ。物づくりの仕事を支えようとする職人たちの心意気も本書から感じる。普段気にもとめていなかった靴の世界観が広がった。(り)

ナショナリズムと想像力

ガヤトリ・C・スピヴァク 著 鈴木英明 訳

  • ナショナリズムと想像力
  • ガヤトリ・C・スピヴァク 著 鈴木英明 訳
  • 出版社:青土社 価格:1600円
 本書はブルガリア・ソフィア大学におけるガヤトリ・スピヴァクの講演録である。これまでもスピヴァクは「再生産〔生殖〕をめぐる異性愛規範」に根差したナショナリズムと新自由主義グローバリゼーションを批判してきたが、本書では批判的地域主義の視座に踏み込み、「創意に満ちた等価性」の原理を備えた言語や文学の力について強調している。  スピヴァクは、バルカン半島という地政学的位置や旧社会主義体制の経験から、国民国家をめぐるあらゆる物語に懐疑を示す聴衆たちに対し、幼少期から植民地主義とインド独立をめぐるポリティクスのなかで宗教や階層の複雑な交差に接した。母語や自分の住む街の一角を愛するという「私的なこと」(ナショナリズム=公的領域に即して派生するわけではない)を浸食するナショナリズムを批判しつつ、あらゆる人々の「私的なこと」に介在される言語や文学の等価性に向けた想像力が、ネイションを脱‐超越論化する可能性を説く。(史)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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