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ふぇみんの書評

「鶴見事件」抹殺された真実 私は冤罪で死刑判決を受けた

高橋和利 著

  • 「鶴見事件」抹殺された真実 私は冤罪で死刑判決を受けた
  • 高橋和利 著
  • 出版社:インパクト出版会 価格:1800円
 読んでいて胸クソが悪くなった。もちろん著者に対してではない。人間のいのちよりもメンツや組織が大事!?の構造が今の日本社会を覆う暗雲と同じ!と感じたからだ。  1988年、横浜市鶴見区で金融業者夫妻が殺害され、1200万円が奪われた。金を持ち去った著者は、身に覚えのない殺人の罪も被せられる。拷問とも言える取り調べ。「真実は裁判官が明らかにしてくれる」と“自白”に応じたが、裁判への期待は「幻想」だった。2006年に最高裁で死刑確定。現在再審請求中。  18年間の取り調べ、公判の詳細を記した本書は、確たる物証がなくても予断の積み重ねで死刑囚を仕立てあげていく人間の姿を浮き彫りにする。  起訴された事件の99%以上が有罪という日本の司法の現実。「政治の怠慢と司法の傲慢が、人間と人権を殺し続けている。無辜を殺して誰が責任をとるのか」という著者の悲痛な叫びが胸に迫る。(JO)

日本断層論 社会の矛盾を生きるために

森崎和江、中島岳志 著

  • 日本断層論 社会の矛盾を生きるために
  • 森崎和江、中島岳志 著
  • 出版社:NHK出版 価格:820円
 優れた聞き手でもある中島岳志が、森崎和江の原点や来し方を聞く対談集。森崎の追い続けた朝鮮、女、からゆき、日本、炭鉱、闘争、男、関係、性、エロス。山ほどの言葉と感情が渦巻く。  朝鮮生まれの森崎が物心ついたころに父親から受けた影響は大きい。先住民アイヌの問題を知っているかと10歳の子に問う父親なのだ。また、谷川雁、上野英信、竹内好といった男性論客たちとの濃密な交わりを本人の言葉で表現されると、あらためてそうだったのかと膝を打つ読者もいるだろう。弟の死と、炭坑の労働運動の中で起きたレイプ事件をきっかけとした鬱屈とした思いに感情移入してしまう。  断層とは何か。女はみんな同じとまとめて見られる時、森崎は違いを見つめ、個々で見る視点を持ってきた。  対談は読みやすいが、読後に森崎の著作に進むのはなかなか手強い。同時に、挿入写真の穏やか森崎を見て、久々に再読したくなるかもしれない。(さ)

脱成長の道 分かち合いの社会を創る

勝俣誠、マルク・アンベール 編著

  • 脱成長の道 分かち合いの社会を創る
  • 勝俣誠、マルク・アンベール 編著
  • 出版社:コモンズ 価格:1900円
 本書は昨年日本で開催されたシンポジウムをきっかけに編纂され、日本とフランスを中心とする11人の研究者による論文を収録。そこに共通する問題意識は「より良く、幸せに感じられる社会をどう共につくっていけばいいのか」というもので、3・11後、あらためて強く関心を呼ぶテーマと思われる。  1人あたりのGDPが上がり、物が豊かにあることが生活の充実の第一条件と思われていた時代もあった。だがこうした意識が既に過去のものであることを西川潤(国際経済学)は、内閣府による世論調査(「物の豊かさ」と「心の豊かさ」のどちらを重視するか)や幸福度調査をもとに論じる。山口県祝島の人々の生存条件を断ち切る原発計画の試みを通して、経済発展の持つ歪みを照らす中野佳裕(国際開発学)の労作など、いずれも読み応えがある。  今もことあるごとに「経済成長」を説くこの国の有力政治家や経済界の面々にも読ませたい。(束)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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