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ふぇみんの書評

辛淑玉的危ういニッポン考たんこぶ事始Ⅱ

辛淑玉 著

  • 辛淑玉的危ういニッポン考 たんこぶ事始Ⅱ
  • 辛淑玉 著
  • 出版社:七つ森書館 価格:1,000円
 刑場を視察し、遺体処理場へ入った時、「ただいま。遅くなってごめん」と辛淑玉さんは口にしたという。その理由は読み進めていくうちに分かってくる。「国家による合法的な殺人である死刑を、私は、無意識に、執行する側ではなく、執行される側として受け取っていたのだろう…」「在日朝鮮人として生まれた私は、この国では常に『犯罪者予備軍』として管理される対象だった」(本書より)。
 マイノリティー側に立つフリをしても権力を握ると豹変する政治家、異様にふくれあがる在日への差別や排外主義、落ちたら再チャレンジを許さないこの国の社会…目の上のたんこぶに抗って叫ぶ。「ブタになっても生き残れ!」と。
 本書は「週刊新社会」に連載中のコラム「たんこぶ」をまとめた第2作。「根拠なくエラぶって、生意気で可愛げのない男は嫌いだ」と歯切れのいい文章に、一緒になって溜飲を下げている場合ではない。ニッポンは恥ずかしく、何より危ういのだから。(室)

冤罪をつくる検察、それを支える裁判所

里見繁 著

  • 冤罪をつくる検察、それを支える裁判所
  • 里見繁 著
  • 出版社:インパクト出版会 価格:2,000円
 冤罪をテーマにしたドキュメンタリー番組を作り続けてきた著者が、長年の丹念な取材の中で知った“冤罪の作られ方”を解き明かした本。
 やってもいないことをなぜ“自白”するのか。警察・検察が捏造した「証拠」を、なぜ裁判官は見抜けない(見抜かない)のか。
 現在の仕組みの中で、「正義」の審判者は「裁判所」しかない。再審請求をする先も、誤審の当事者である裁判所。そして、冤罪が明らかになっても、裁判所が責任を取ることはない。冤罪としか思えない久間三千年さんは、すでに死刑が執行された。
 本書に取り上げられた9件の冤罪事件を読みながら怒りに震え、「表面化した冤罪事件は、氷山の一角」に改めて納得する。
 裁判所以外の機関による再審など、抜本的な仕組みを変える必要性を痛感すると同時に、著者が強調する「ジャーナリストの使命は『権力の監視』」ということを改めて胸に刻む。(JO)

沖縄おんな紀行光と影

もろさわようこ 著

  • 沖縄おんな紀行 光と影
  • もろさわようこ 著
  • 出版社:影書房 価格:2,200円
 もろさわさんは、15年前、沖縄に「うちなぁ」を拓いた。その家の礎となった沖縄の自然や女性たちとの旅の中での交流、見聞、それらが彼女の思考と絡めて語られている。沖縄の方言豊かに書かれているため難解な文章もある。それでも沖縄に起きている様々な状況の記述は、日本の課題について当事者性を持ちながら顧みなければならないと私に思わせる。
 特に助産師の私が共感したのは、女性が産んだ子を殺しシャコ貝に入れて捨てた“間引き墓”のところ。女性が我が子に手をかけなければならなくなったのは、共同体の責任で子育てをしなくなり、産む性が大事にされなくなったからではと彼女はいう。
 今では中絶が選択肢の一つとなり間引きは過去のことかもしれないが、どちらにしてもいろいろな意味で女性の負担は大きい。避妊方法がある現在でも、望まない妊娠・中絶の裏には、いまだに女性が尊重されていない社会があるからではないか。(隅)

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