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ふぇみんの書評

お母さんは忙しくなるばかり家事労働とテクノロジーの社会史

ルース・シュウォーツ・コーワン 著/高橋雄造 訳

  • お母さんは忙しくなるばかり 家事労働とテクノロジーの社会史
  • ルース・シュウォーツ・コーワン 著/高橋雄造 訳
  • 出版社:法政大学出版局 価格:3,800円
 「女の仕事は終わらない。日暮れまで力が持つならば、その女は幸せだ」…これは羊毛紡ぎの準備を一日中やっていた米国の主婦が1795年に書いた日記。その100年後、製糸・紡績・服製造業が発展し、ガス・水道が整備され、洗濯機や掃除機が家庭に導入されても、まだ女性たちは家事で疲労困ぱいしていた。200年後の日本でもまだ疲れ切っている。親や祖母の時代より格段に電化製品は進歩しているのに、女性が家事に費やす時間が減らないのはなぜか?
 著者は18世紀から20世紀のアメリカで、工業製品が家庭に導入される時、家事内容やその分担がどのように変わっていったかを丹念に追う。最初の例はシチュー作り。次々と明らかになるのは工業化で真っ先に消失するのは男と子どもがやっていた家事だという衝撃の事実! 約30年前に出版された、家事をめぐる技術史の古典的名著。女性の家事時間を短縮しそうなのに廃れてしまった技術の紹介もあり興味深い。(水)

戦時児童文学論小川未明、浜田広介、坪田譲治に沿って

山中恒 著

  • 戦時児童文学論 小川未明、浜田広介、坪田譲治に沿って
  • 山中恒 著
  • 出版社:大月書店 価格:2,800円
 戦時中に画家、文筆家、作曲家などが戦意高揚・大政翼賛的な作品に手を染めたことはよく知られている。児童文学も同じ轍を踏んでいた。『赤いろうそくと人魚』で知られている小川未明や浜田広介、坪田譲治という今も読み継がれている児童文学作家が、作品中で出征する兵士へ「お兄さん、その後には僕たちがつづきます」と子どもに言わせ、国家総動員体制を支え、煽る作品を書いていた。著者は、自分が戦時中にプロの作家だったら時代に迎合しなかっただろうかと自問もし、また戦時中の国策-戦争推進という「時代の気分」が、現代の国策-エコで右へ倣えという図式に単純に変わっているだけではないか、とも指摘している。作家たちはなぜ時代の気分から逃れられなかったのか? 醸成される気分の兆しとは?
 作品ごとの検証とコメントが詳細。『ボクラ少国民』シリーズの山中恒による労作。再び国家に騙されないためにも読んでほしい。(さ)

デンマークの光と影福祉社会とネオリベラリズム

鈴木優美 著

  • デンマークの光と影 福祉社会とネオリベラリズム
  • 鈴木優美 著
  • 出版社:リベルタ出版 価格:1,800円
 人口554万人、世界一幸福な国と言われるデンマーク。柔軟な労働市場、寛大な失業手当、積極的な労働市場政策が「黄金の三角形」として労働者を支えていることで有名だ。
 筆者は長期のデンマーク留学を通じ、こうしたバラ色の国が、この10年ほど自由党・保守党政権のもとで新自由主義の波にさらされ大きな変容を遂げている点に注目し、主にメディア記事から本書を執筆した。失業手当の最長給付期間を4年から2年へ、税は累進課税制から一律税制へ近づけ、公共サービスは「質の改革」を行った。
 無料だった医療に、民間病院が参入。公立病院は2カ月待ちが普通だが、民間なら金を払うとすぐにかかれるなど、医療が揺さぶられている。移民政策も厳しい改革が行われつつある。
 こうした「改革」はもともと、社会民主党政権のもとでその萌芽があったというのも興味深い。
 日本が今後目指すべき方向を考える上で示唆に富む一冊。(衣)

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