WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

肥満と飢餓世界フード・ビジネスの不幸のシステム

ラジ・パテル 著/佐久間智子 訳

  • 肥満と飢餓 世界フード・ビジネスの不幸のシステム
  • ラジ・パテル 著/佐久間智子 訳/作品社
  • 出版社:作品社 価格:2,600円
 今、世界では10億人が飢え、10億人が肥満に苦しむ。肥満は飽食の意味ではなく、貧困層が脂肪と糖分の多い加工食品を食べた結果、心疾患や糖尿病などにかかることを表す。貧困地域には健康に良い野菜や果物を売る店は少なく、ファストフードの店が多いのだそうだ。
 このような飢餓と肥満を同時進行させている元凶がフードシステム(食料供給産業)だ。食料を生産する人々からこれを食べている人々までが、このシステムによって操作・支配され苦しめられている。
 米国在住の著者は世界各地で展開されてきたそのビジネスの手法を詳細に暴き、告発している。
 自由貿易協定の弊害、農薬の土壌汚染、安い巨大スーパーマーケットの仕組みなど、それぞれ1冊の本になる素材が網羅され、食の問題が概観できる。抵抗する農民組織や消費者運動の紹介もあり、訳者による「日本におけるフードシステム」の収録も親切だ。(束)

韓国併合100年の現在

前田憲二、和田春樹、高秀美 著

  • 韓国併合100年の現在
  • 前田憲二、和田春樹、高秀美 著
  • 出版社:東方出版 価格:1,600円
「韓国併合」から100年を契機に行われた、映画監督、歴史学者、編集者の著者たちによる鼎談と論文が収録されている。政治、戦後補償、在日朝鮮・韓国人、文化など、様々な面から現代の問題を提起していて読み応えがある。
 とりわけ前田監督の論文「土足と鞭 韓国併合100年の内実」は興味深かった。日本列島各地の祭祀や遺跡をめぐり、そこに住む人々の証言を聞くなど、丁寧に取材を続けている監督の、(日本全土には朝鮮文化があふれているにもかかわらず)「日本の植民地支配とは、具体的に言えば朝鮮民族文化の壊滅を図ることであり、それがため自然風土や民俗の生活習慣、さらには歴史と信仰、そして人々の心までを踏みにじることだった」という意見には納得し、同時に心が痛む。
 人物や事件を補う脚注や写真が豊富。条約、総理大臣談話、年譜も付いている。「韓国併合」や、現在に残された課題を考える上で役立つコンパクトな資料本だ。(り)

世界中から人身売買がなくならないのはなぜ?

小島優、原由利子 著

  • 世界中から人身売買がなくならないのはなぜ?
  • 小島優、原由利子 著
  • 出版社:合同出版 価格:1,300円
 1230万人が犠牲になっていると言われる「人身売買」。実は私たちの持つ被害者像や人身売買のイメージが、日本が最大の受け入れ国の一つであり、身近に被害者がいる事実から遠ざけているかもしれない。本書は、平易な文体ながら、人身売買の複雑な実態から原因、世界や日本での対策と今後の課題が一冊に凝縮されている。
 本書は人身売買の「偏見」を取り去ってくれる。性産業のみならず、労働市場でも存在し、国際結婚や国際養子縁組、臓器売買の形態もあること。被害者は「まったく無力」ではなく、「外国に働きに行く」ことを選んだ「ふつうの人」であること。そこに日本のような受け入れ国の需要と、送り出し国の政策(外貨獲得)が絡むこと。人身売買被害者の労働に支えられた経済社会の中に私たちがいること。偏見を捨て、想像力をたくましくし、周囲を見つめること、伝えること、その大切さを実感。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ