- 女ぎらい ニッポンのミソジニー
- 上野千鶴子 著
- 出版社:紀伊國屋書店 価格:1,500円
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ニッポン人の頑張りぶりと女嫌いは密接―これが最初の感想である。とりわけ女嫌いを内面化した女性は、“頑張り屋さん”だ。男並みを目指すか、逆に性的アピールをするか、オールラウンド型として、どちらもOKか―男性からの承認を求める結果、骨身を削って社会を維持することとなる。この社会で屈託なく育ち企業戦士となれる男は、自然に女嫌いになってゆく。女といえば究極、母しかないと刷り込まれれば、それ以外の女は尊重しなくなる。そんな類の女嫌いを執拗に本書は分析する。
しかし、男性の収入の二極化が進んでも、男女共々頑張り以外の生き方がつかみえていない(本書にフリーターズフリーが引用されるが、我々が他の選択肢を具現化できているとは言い難い)。その頑張り≒女嫌いの空虚さを感じつつ、そうするしかないしんどさこそ、今の「女嫌い」であり生きづらさではないか。分析だけを読むのは疲れる。求めているのは尊重に値する関係をつくる実践なのだ。(栗)
ウーマンリブがやってきた 70年代・目覚めはじめた男たち
佐藤文明 著
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- ウーマンリブがやってきた 70年代・目覚めはじめた男たち
- 佐藤文明 著
- 出版社:インパクト出版会 価格:2,400円
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http://jp.mg1.mail.yahoo.co.jp/hkr/login?.rand=etuo3e2n6p8f7
「介護の社会化」をうたい始まった介護保険。しかし「介護殺人」の半数は介護保険を利用するも防げず、要介護者は東京・新宿区役所の戸籍係として家父長制を身をもって体験していた著者。その著者が1970年代前半に過ごしたアパートは新宿リブセンターから数百メートルの距離にあった。本書は同時代にウーマンリブを至近距離から目撃し、時には共に活動した著者の視点から、70年代から80年代にかけての女性たち、男性たちの生き生きとした姿を追想したものである。
類書の中でも本書がユニークなのは、男性の、そして、ごく個人的な視点から当時の生活と運動の様子を描いている点であろう。特に中盤以降は、 著者自身が、 戸籍によらないパートナーや子どもとの関係、共同保育の実践などを通じて考え、悩んだことが書き込まれており、彼ら彼女らが生きた問題を当時を知らない私も生々しく追体験した。また、著者の経験が戸籍制度と婚外子差別に対する反対運動へとつながっていく様も興味深く読んだ。最初期のメンズリブの記録としても価値がある。(ぐ)
- 犬と猫と人間と いのちをめぐる旅
飯田基晴 著
- 出版社:太郎次郎社エディタス 価格:1,500円
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「動物たちの命の大切さを伝える映画をつくってほしい。お金は出します」とある女性に言われた映像作家の筆者が、映画づくりを始める。そして、調べれば調べるほどに人間の傲慢さ、無責任さにぶちあたる。本書は同名の映画(2009年公開)が誕生するまでの軌跡とその後を語る。
日本では毎日1000匹近い犬と猫が殺処分されている。飼えなくなったからと行政に持ち込まれる彼ら。処分を待ち震える犬の姿。住民が反対するからと走るトラックの上で処分が行われる自治体もある。
一方、引き取り手を探すための懸命な努力がある。しかし、虐待されてきた犬・猫ほど人間に攻撃的になっているため、飼い主は見つかりにくく、殺処分される運命にある。個人で猫や犬を救う夫婦もいる。また子どもたちが捨て犬を育て、もらい手が見つかった時の安堵と涙…。
人間はどう犬猫と、動物と、つきあうべきなのか。単なる猫好きではいられない。(衣)