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ふぇみんの書評

NHK、鉄の沈黙はだれのために番組改編事件10年目の告白

永田浩三 著

  • NHK、鉄の沈黙はだれのために 番組改編事件10年目の告白
  • 永田浩三 著
  • 出版社:柏書房 価格:2,000円
 2000年の女性国際戦犯法廷の様子とその意義を描いた、NHK教育テレビのシリーズ「戦争をどう裁くか」の第2回「問われる戦時性暴力」の内容が、国会議員らの圧力で改変された事件からもうすぐ10年。本書は当時番組のチーフ・プロデューサーであり、後にNHKと制作会社を被告とする裁判の高裁において、NHKの公式見解とは違う、政治家の圧力とNHK幹部の関与を示す証言を行った著者による告白本である。
 「放送人」として理想や気概を持ちながら、手を下してしまった番組改変。自らの対処の甘さや制作会社や取材対象者への猛省をつづり、著者は高裁判決でも示されたこの問題の本質「政治とNHKの癒着」に迫ろうとする。実名を列挙し、緊迫した当時のやりとりの再現で、漠然とした全体像は浮かぶが、当時の会長や放送総局長ら肝心の当事者がいまだに否定・沈黙を続ける。この問題がメディアのこれからの姿を考える上で未解決であることを示してくれる。(登)



<主婦>の誕生 婦人雑誌と女性たちの近代

木村涼子 著

  • <主婦>の誕生 婦人雑誌と女性たちの近代
  • 木村涼子 著
  • 出版社:吉川弘文館 価格:4,800円
明治政府による教育制度の整備は「女も読書する」時代を到来させた。大正6年、都市化と産業化で増加したサラリーマン家庭の主婦層をターゲットに「主婦之友」は創刊され、昭和9年には100万部を突破する大衆雑誌へと成長した。本書はこの「主婦之友」を中心に大正時代後期から昭和初期の商業婦人雑誌が「主婦」というイメージや価値観をつくりあげ、また女性自らもそれに合意し適合していった過程を丁寧に示す。
「家庭が楽園であり、家族の避難所であるからには、その支配者たる主婦はとりもなおさず、楽園の女王らしくあらねばなりません」(「主婦之友」大正7年10月号)といった言葉が誌面を飾ったこと、吉屋信子らの連載小説が描く物語世界、表紙に描かれた女性像が象徴するもの、投稿から見える読者の姿などその分析の筆は幅広い。  「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業は揺らぎつつもなお根強い。その根強さの一端を垣間見せてくれる労作だった。(束)



ジェンダーと社会男性史・軍隊・セクシュアリティ

木本喜美子、貴堂嘉之 編

  • ジェンダーと社会 男性史・軍隊・セクシュアリティ
  • 木本喜美子、貴堂嘉之 編
  • 出版社:旬報社 価格:4,000円
一橋大学で3年間にわたって行われた共同研究「日常実践/方法としてのジェンダー」の成果をまとめたもの。男性史、軍隊、セクシュアリティーを中心に多種多様なテーマの論文15本が収められている。また書き手も戦争とジェンダー論の分野で著名なシンシア・コウバーンら大ベテランから新進気鋭の大学院生までと幅広い。
 これは編者の「ジェンダー研究のテリトリーに閉じるのではなく、社会科学の中にジェンダー視点を導入し、定着させ、その融合的な研究視座から日常空間で作動するジェンダーにかかわる諸問題を可視化し、対象化する」という問題意識に基づくものであろう。さしずめ、ジェンダー視点を導入した社会学、歴史学、政治学等の最先端の研究成果の見本市といえる。特に、第I部の近年の男性史ブームを批判的にとらえる男性史研究論、第II部に収められた男性の恐怖心に注目して旧日本陸軍における男性性の構築を論じる試みが興味深い。(ぐ)



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