WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

沖縄戦が問うもの

林博史 著

  • 沖縄戦が問うもの
  • 林博史 著
  • 出版社:大月書店 価格:1,800円
 本書は膨大な資料を基に沖縄戦の全貌を明らかにした『沖縄戦と民衆』の著者による入門書。根底にあるのは、「歴史認識は、いま現在をどう見るのか、という問題と不可分」との思い。沖縄を「捨て石」にした日本の差別の構造は、戦後に引き継がれ、今の普天間基地問題にそのままつながる。
 20万人の沖縄県民をはじめとする命が奪われた全貌を細部まで明らかにしながら(精神障害者やハンセン病患者、アイヌと沖縄戦など)、著者はなぜこれほどまでに犠牲が生まれたのか、その責任のありかを分析。そこには「国体護持」のため本土上陸への時間稼ぎに沖縄を利用する天皇、日本国家と軍の徹底した差別、投降を許さない日本軍の戦争指導、それを支えた行政や教育関係者の存在があった。一方、住民の命を救ったのは移民帰りなど当時「非国民」と呼ばれた人たち。一人ひとりの良心や良識を抑圧することを許さないこと、それが沖縄戦の教訓だと警鐘を鳴らす。(登)



破綻したプルトニウム利用政策転換への提言

原子力資料情報室/原水禁 編著

  • 破綻したプルトニウム利用 政策転換への提言
  • 原子力資料情報室/原水禁 編著
  • 出版社:緑風出版  価格:1,700円
日本のエネルギー政策は、原子力発電を中心とし、原発の使用済み燃料を再処理して、プルトニウムを取り出し、高速増殖炉でそのプルトニウムを「燃料」とする核燃料サイクルを確立する予定だ。またプルトニウムとウランでつくるMOX燃料を普通の原発で燃料として燃やすプルサーマルが既に始まっている。
 これに対して原子力資料情報室のメンバーらが、詳細なデータに基づき、計画の非現実性を明らかにしている。青森県の六ヶ所再処理工場は2000年に操業を開始する予定だったが、2010年の現在まだ本格操業に至っていない。高速増殖炉やプルサーマルの危険性や非経済性、世界ではほとんどの国が高速増殖炉から撤退しているなど。この問題は政府はもちろんだが、電気を使う消費者にとっても無関係ではない。  日々原発のゴミはたまり続けている。本書では核燃料政策の廃棄、原子力発電所廃止の道筋をつけることなどを提言する。(泰)



モダンガールと植民地的近代「東アジアにおける帝国・資本・ジェンダー

伊藤るり、坂元ひろ子、タニ・E・バーロウ 編

  • モダンガールと植民地的近代 東アジアにおける帝国・資本・ジェンダー
  • 伊藤るり、坂元ひろ子、タニ・E・バーロウ 編
  • 出版社:岩波書店 価格:3,200円
1920~30年代に現れたモダンガールの、「像」としての働きを検討対象とした論文を10本収録。モダンガールの像は、商品広告、ポスター、漫画、小説など大衆メディアで流通し、この時代に欧米や日本が植民地支配の手を伸ばした東アジアにおいてモダンになることを切望した女性たち、逆にそうなることを恐れた女性たちに語りかけた。本書が用いる「植民地的近代(colonial modernity)」とは、「植民地を近代化すること」ではなく、90年代以降に活発に議論されてきた「植民地主義」と「近代」の関係を把握するための概念。
 第3部の「帝国を生きる」では、日本の都市部中間層、労働者階級、沖縄、日本統治下の台湾の女性たち、朝鮮の羅蕙錫を取り上げた論文が収録され、実在の女性たちが植民地的近代のもとで、どのように生活を創造したのか、生きる楽しみを見いだしたのかを明らかにしている。かなり読み応えのある良書。(竹)


【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ