天然住宅から社会を変える30の方法
田中優、相根昭典 編
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- 天然住宅から社会を変える30の方法
- 田中優、相根昭典 編
- 出版社:合同出版 価格:1,300円
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有機野菜を食べ、エコバッグやマイはしを持っても、外国の建材で化学物質だらけの短命な住宅に住んでいたら…。
外国の建材は豊かな熱帯雨林を消滅させ、森林率68.2%の日本では林業のなり手の不在で森林が荒れ、毎日飲食する食べ物の5.5倍の量の空気を、シックハウス法制定(2003年)以降も使われ続ける化学物質だらけの住宅から取り入れ、住宅は30年で寿命を迎えて大量のゴミへ。
本書は、住宅は、化学物質過敏症や日本の森林問題、地球温暖化問題などあらゆる「社会のゆがみを解決するキー」だと気づかせてくれる。そして編者らの「エコと健康と地域の人たちの経済的自立」をコンセプトにした非営利住宅会社「天然住宅」の実際の取り組みが、私たちに明るい未来の道筋を示す。長寿命でカラダも心も緑も山も林業者も大工も喜ぶ心地のいい家。そこには「コンクリートは木材よりも強い」などの「住宅の常識」を覆す事実と知恵がたくさん! 今こそ住宅を根底から見直したい。(登)
ベーシックインカム分配する最小国家の可能性
立岩真也、齊藤藤拓 著
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- ベーシックインカム 分配する最小国家の可能性
- 立岩真也、齊藤藤拓 著
- 出版社:青土社 価格:2,200円
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ふたりの著者の主張には隔たりがある部分もあるが、「ベーシックインカム(基本所得、BI)だけではダメ」というスタンスは共通している。それぞれが、政治哲学者のヴァン・パリースの主張を検討し、BIについての考えを述べる。ヴァン・パリースは「資産としてのジョブ論」を展開し、BI実現を構想する。職は資産であり、人々が生産するものはこれまでの営為の蓄積によって可能になったものなので、貢献に対する報酬が個人にのみ帰すべきであるかのように映るのは、現行の再分配のあり方がそうなっているからにすぎない、という。
立岩は、「所得の再分配」に限らず生産財と労働と所得の分配を組み合わせる方法が良いとする。また、一律給付ではなく個々人の差異に対応するべきだとし、労働の義務を肯定する。齊藤はヴァン・パリースのBI論をまとめ、日本のBIをめぐる言説を整理。誰がどのような主張をしているのか概観できる。入門書の次に手にしては。(竹)
新採教師はなぜ追いつめられたのか
久冨善之、佐藤博 編著
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- 新採教師はなぜ追いつめられたのか
- 久冨善之、佐藤博 編著
- 出版社:高文研 価格:1,400円
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「各地で新採教師が自殺している」という話を教師の私は幾度も耳にした。
新規採用の教員が子どもとの関係に戸惑い、親の言動に苦しみ悩みつくしてうつになっていく。管理職や同僚から「授業が悪いから子どもが荒れる」と言われ孤立、体調を崩していくが休めば本採用にならず追い込まれていく。2008年、初年度に教師を辞めた人は315人、10年前の5倍以上だ。苦しい状況は新採に限らない。同年、教職員の精神疾患での休職は5400人、全国で70~100人の教員が自殺したという。現場は多忙を極め、自殺したAさんの超勤は月に100時間にも及んだ。数字が雄弁に語り、今の教育のメカニズムが浮き彫りに。支え合うゆとりが現場にないのだ。「分かるよ、その気持ち。これしてみたら」と助言してくれる同僚によって、子どもたちや親との関係を再生させている若い教員の手記も寄せられ、現場でサポートし合う体制がどれだけ大事かが示されて希望が見えてくるのが救いだ。(み)