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ふぇみんの書評

カムイの言霊物語が織り成すアイヌ文様

チカップ美恵子 著

  • カムイの言霊 物語が織り成すアイヌ文様
  • チカップ美恵子 著
  • 出版社:現代書館 価格:1,800円
本年2月5日、急性骨髄性白血病で逝った著者(享年61歳)の遺作となった本書は、闘病中に書かれ、亡くなる5日前に出版された。
 世界各国の先住民族との交流、講演活動で忙しかった時期に、「本当は部屋で音楽を聴きながら、刺繍をしている時がいちばん幸せ」と、聞いたことがある。
 アイヌ文化の継承・保護に生涯をささげた山本多助エカシ(長老)が伯父。詩人でウポポ(歌)や刺繍の達人でもあった伊賀ふでさんが母。2人から受け継いだ物語を、子ども時代の思い出と重ねながら綴るその文章は、ていねいで微細で、穏やかさに満ちている。ひと針ずつ魂をこめて刺繍をしているチカップさんそのものである。
 薪としての役割をまっとうした木が、燃え尽きる寸前に、神様に最後の願いを聞き入れられ、鳥となって大空にはばたいたという寓話が収められている。自らを鳥(チカップ)と名付けて活動した意味を、あらためて知った気がする。合掌。(矢)



基礎から学ぶ 森と木と人の暮らし

鈴木京子、赤堀楠雄、浜田久美子 著

  • 基礎から学ぶ 森と木と人の暮らし
  • 鈴木京子、赤堀楠雄、浜田久美子 著
  • 出版社:農山漁村文化協会 価格:1,300円
 「都会で暮らす人や若い人たち」に向けて書かれたという。本紙1面インタビューでも紹介された「森の聞き書き甲子園」を運営するNPOの企画によるもので、専門的な言葉や言い回しは一切排し、徹底的に“みぢか”であることを追求したつくりだ。
 まず1章は、森と木と人のつながりを家屋、焼畑、きのこ、ざる、樽、布、紙など「プロダクツ」から遡上して解き明かす。2章では素材としての「木」を、3章では「森」そのものについて、科学的・文化的に解説する。ある農林家の生き方を通して「林業」をレポートする4章からは、森を育てながら生きてきた日本人の暮らしが浮かび上がり、1章へと回帰する。
 かつて日本人は今では想像もつかないほど森に依存して生きてきた。しかし、それを身を以て知る人はもはや少ない。自分にとって「森とは何か」を感じとるいいきっかけとなる一冊だ。欲をいえば、現在の森の抱える課題と今後に向けた提言も示してほしかった。(道)



同潤会大塚女子アパートメントハウスが語る

女性とすまい研究会 編

  • 同潤会大塚女子アパートメントハウスが語る
  • 女性とすまい研究会 編
  • 出版社:ドメス出版 価格:2,400円
大塚女子アパートは1930年に完成した日本初の職業婦人専用集合住宅。当初の住人は一流どころのセレブな女子が多く、家賃もかなりお高かったようだ。建物内には「薄薔薇色の壁紙に茶褐色のカーテン」を備えたモダンな洋室もあり、共同食堂と風呂のほか、日光浴室、音楽室まであったという。戦後、都の管理下となってからは、低所得者や高齢者など様々な人たちが入居した。トイレや炊事場が共同なのは時代に合わないとも言われたようだが、むしろだれかと顔を合わせることで会話が生まれ、高齢者にとっては、「いざという時も1人ではない」という安心感につながっていたことには注目したい。
 建築的、文化的価値は専門家からも高く評価されたが、女性の拠点をつくることに反対した石原知事判断により取り壊しになってしまった。しかし今後の住環境を考える上で、コーポラティブ住宅の先駆けともいえるこのアパートの記録が貴重な資料となることは間違いない。(梅)





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