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ふぇみんの書評

ジェンダーの比較映画史「国家の物語」から「ディアスポラの物語」へ

川口恵子 著

  • ジェンダーの比較映画史 「国家の物語」から「ディアスポラの物語」へ
  • 川口恵子 著
  • 出版社:彩流社 価格:6,000円
映画における女性像は、「男たちの美的快楽の対象である第一世界の女性」と「無価値で不浄な第三世界の女性」に分断され、「ナショナル・アイデンティティーの強化」に利用されてきた。
 本書は具体例として、フランス植民地映画とベトナム革命映画を取り上げ、ナショナリズムを支えたイメージを考察、また「トランスナショナルなアイデンティティーを持つ女性映画作家」として、マルグリット・デュラスとトリン・T・ミンハの作品を分析、「ネイション(国家/国民)神話」解体の可能性をも示唆する。
 「西洋白人男性中心主義的な価値観」を背景に発展してきた映画産業の中で、長く歪められてきた女性像について、独自の観点から論じようとした大胆な試みと言えるだろう。 映画論の枠組みにこだわらない社会学的論考として、著者の思い入れが溢れるような、500ページを超える労作である。(平)



なぜ女性はケア労働をするのか性別分業の再生産を超えて

山根純佳 著

  • なぜ女性はケア労働をするのか 性別分業の再生産を超えて
  • 山根純佳 著
  • 出版社:勁草書房 価格:3,300円
 なぜ女性は、家庭/労働市場においてケア労働を担うのか。この古くて新しい問いに、理論的、実証的に迫る渾身の書である。
 あとがきによればインタビューをした女性ケアワーカーは自らを「安くて使える気のいいおばさん」と表現したという。筆者はこの表現に、性別分業と性支配への批判的な意識を読み取る。そう、彼女たちは単なる家父長制の犠牲者でも自由に性別分業を選択しているわけでもないのだ。
 そのような既存の構造や言説に拘束されつつも現状を批判的に捉え返す女性たちの姿を、筆者はインタビュー調査を通じて描き出すとともに、これまでのジェンダー秩序論が再生産論にとどまり、その変動を捉えてこなかったことを批判する。終章ではケア労働ならびに女性労働が低く見積もられている状況の改善策も提示される。
 性別分業論に女性の能動性を組み込んだ本書は、ジェンダー研究の一つの試金石であり、今後の研究の道しるべとなるだろう。(ぐ)



憲法とジェンダー男女共同参画と多文化共生への展望

辻村みよ子 著

  • 憲法とジェンダー 男女共同参画と多文化共生への展望
  • 辻村みよ子 著
  • 出版社:有斐閣 価格:5,700円
本書は比較憲法の視座に立って多文化共生とジェンダー、各国憲法とジェンダー平等政策、ポジティブ・アクション、クオータ制(割り当て制)、家族・国家とジェンダー、平和とジェンダー等の章からなる。どの章も最新の社会動向と研究成果を取り入れた内容。
 不平等の是正にポジティブ・アクションは効果があるが、その類型、違憲性の争いと各国の施策などがわかる。ルワンダはジェノサイド後、多元的多文化主義的クオータ制を実施し下院で女性が56.3%となった。日本で採るべき選挙制度と合憲性についての議論なども役に立つ。男女共同参画第3次基本計画の中間案にもクオータ制が盛り込まれた。
 また平和とジェンダーについても、「女性は母となるから平和主義者だ」など本質主義的議論から離れ、人権論に基づく平和論への視座を提供する。
 憲法とジェンダーを真正面から包括的に扱う本書は、各章をテーマに深い議論ができうるだろう。(衣)





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