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ふぇみんの書評

美学ジェンダーの視点から

キャロリン・コースマイヤー 著/長野順子ほか 訳

  • 美学 ジェンダーの視点から
  • キャロリン・コースマイヤー 著/長野順子ほか 訳
  • 出版社:三元社 価格:2,700円
 「芸術家」という存在において、しばしば女性は無視されるか、低く位置づけられてきた。本書を読むと、「美」や「芸術」をめぐる思考は、男性的/女性的、心/体、理性/感情…というような、二項対立的な概念体系の中で行われ、序列化されてきたことが分かる
。  本書は、美学理論の伝統的な言説をジェンダーの視点から批判的に解明し、現代における美学の新たな可能性を探っている。
 哲学において「味覚」が過小評価され、食べ物が芸術から締め出されてきたが、近年のフェミニスト・アーティストたちが、食材を芸術の素材として用い、身体感覚の意味を呼び覚まそうとした例や、家父長制の言説を拒否し、おぞましさ(忌避感、嫌悪感)を前面に押し出す現代フェミニスト・アートを例に、忌避感を美的評価と結び付けようとする試みなどが実に興味深い。
 美学や芸術をジェンダー視点からとらえ直すことのおもしろさと意義を感じる本である。(り)



乱世を生き抜く語り口を持て新作講談の創り方語り方

神田香織 著

  • 乱世を生き抜く語り口を持て 新作講談の創り方語り方
  • 神田香織 著
  • 出版社:インパクト出版会 価格:1,800円
 “社会派”女性講談師として大活躍の神田香織さん。多くの人に社会変革の“武器”を持ってほしいと、2007年からは、講談サロン「香織倶楽部」を主宰し、各地で「話し方」「講談教室」を開いている。
 この本には、1977年の米軍ジェット機墜落を取り上げた「哀しみの母子像」、国鉄闘争の20年を問う「国鉄労働者(ぽっぽや)義士伝」など、5つの神田さんの新作講談のほか、お弟子さんたちの講談づくりを通して「講談」の魅力をあますところなく伝えている。
 86年に「はだしのゲン」を発表して以来「社会派」と呼ばれることに対し、尾崎秀樹著『大衆芸能の神々』の言葉を引いて、もともと「講談は怒りを代弁する話芸」と語る神田さん。「『理不尽な死』を強要された人の怨念を一手に引き受け」、誰にでもわかりやすい語り口で、しっかりと問題の根っこを伝えていく。
 古くから民衆が“武器”にしてきた、この優れた話芸を学びたくなった。(JO)



主婦パート最大の非正規雇用

本田一成 著

  • 主婦パート 最大の非正規雇用
  • 本田一成 著
  • 出版社:集英社 価格:700円
主婦パートは日本に800万人存在する。収入のある夫に扶養されて、家事・育児をしながら楽なパート労働をする主婦…というイメージは、本書を読めばぶっ飛ぶ。
 子どもが小学校に入ってからの教育費のためではなく、子どもが2、3歳のころからパートで働く人が増えた。パートに出る理由も生活の維持のためが増え、夫の家事時間が少なく不満をためやすい。職場でも、パートは戦力化され、基幹労働扱いなので、ストレスもたまる。それを著者は「パートへのつけこみ」と表現する。
 著者は日本型福祉社会を支えてきた層の崩壊を危惧し、非正規労働者の最大多数派・主婦パートへの無関心を憂う。現実には主婦パートによるサボタージュや無言の抗議が経営を危うくしつつあるという。
 著者は経営学者として、問題を放置すれば、日本の会社が成り立たないと指摘、パートタイム社員制度の導入を提案するが、根本的な税や年金の制度改革が必要では。お勧め度高。(衣)





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