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ふぇみんの書評

妊娠あなたの妊娠と出生前検査の経験をおしえてください

柘植あづみ、菅野摂子、石黒眞里 著

  • 妊娠 あなたの妊娠と出生前検査の経験をおしえてください
  • 柘植あづみ、菅野摂子、石黒眞里 著
  • 出版社:洛北出版 価格:2,800円
 出生前検査について、多くの女性たち(357人のアンケートと26人のインタビュー調査)の語りがまとめられた貴重な本である。
 妊娠経験の感じ方などの違いから見えてくる様々な問題が興味深い。超音波検査は、日本の病院では海外よりも頻繁に行われているが、ほとんどの妊婦は疑問を持たず、胎児の状態(特に障害や特別の病気)を調べる出生前検査の一つとして認識している人は少ない。一方、母体血清マーカー検査や羊水検査には否定的な考えを持つ人が多い。
 著者たちは「出生前検査を受けた人が障害についての差別や偏見を持っていて、受けなかった人はそうでない、という単純な決めつけは現実をゆがめてしまう」と指摘する。出生前検査の対象となるような重い疾患・障害についての情報が少ないことや、疑問を言うことさえ困難な医療者とのコミュニケーションの状況など、妊婦の自己決定を支えるには考えるべき課題が多いことを教えられる。(り)


県犬養橘三千代

義江明子 著

  • 県犬養橘三千代
  • 義江明子 著
  • 出版社:吉川弘文館 価格:1,700円
 7世紀末から8世紀前半の日本の宮廷において絶大な影響力をもった女性、県犬養橘三千代(あがたのいぬかいのたちばなのみちよ)。15歳で出仕し、宮廷で働きながら結婚出産、最初の夫と別れ、藤原不比等と出会い、不比等との間の娘は聖武天皇の皇后光明子となり、そのほかの息子娘たちも中枢にあった。その王家への忠誠により元明天皇に「橘」姓を賜り、夫の藤原氏と橘氏双方の繁栄を導いた、という。また仏教信仰に厚かった。
 本書を読むと、この時代の女性のイメージが大きく変わる。三千代は出産後も宮廷で働き、夫も高官で姓も別姓双系で、通い婚(不比等とは同居らしい)。また、女性天皇が多くいた時代であった。
 日本のフレキシブルな双系制のウヂ(氏)組織が中国の律令制的父系組織に転換し始めた時代だからこそ、藤原氏、橘氏、県犬養氏、王族を縦横につなぐ三千代の結集力が発揮できたとする、筆者の分析は鋭い。ジェンダー視点からの歴史学の発展に期待したい。(衣)



子育て支援 制度と現場よりよい支援への社会学的考察

白井千晶、岡野晶子 編著

  • 子育て支援 制度と現場 よりよい支援への社会学的考察
  • 白井千晶、岡野晶子 編著
  • 出版社:新泉社 価格:2,500円
子どもを産んでも預けるところがない!」は切実な問題。子育て支援は単に「保育所の増設」だけの問題か? 本書は子育てまっただ中の社会学研究者らが、自らの子育て体験を手がかりにフィールドワークを進め、現代の子育て支援のあり方を示したもの。
 共同保育園に始まる認可外保育施設の歴史では、1990年代の「規制緩和」「民営化」で、公立や財政規模の小さな保育施設(著者も利用)が統廃合に追い込まれた事実が浮かび上がる。また近年行政が保育サービスを拡充し、著者らも利用するが、子どもの病気・障がいや親の非正規の不安定雇用からくる多様なニーズに合っていないことが分かる。さらに女性の仕事と育児の両立支援だけを少子化対策とするのは、ピントがずれていることを、高学歴女性の出産と就労状況で明らかにする。
 著者らが汗と涙と綿密な調査から導き出した「就労の有無を問わない多様な育児支援を」という結論に心から納得した。(登)





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