WOMEN'S DEMOCRATIC JOURNAL femin

  • HOME
  • >
  • ふぇみんの書評

ふぇみんの書評

私たちが戦後の責任を受けとめる30の視点

熊谷伸一郎 編著

  • 私たちが戦後の責任を受けとめる30の視点
  • 熊谷伸一郎 編著
  • 出版社:合同出版 価格:1,800円
 朝鮮の植民地支配、横浜事件、平頂山事件、毒ガス兵器、「従軍慰安婦」問題、沖縄戦…アジア・太平洋戦争で起こった一つ一つの出来事が、戦後65年になろうとするいまでも解決されない問題を残していることを、この本は改めて考えさせてくれる。鳩山首相の「東アジア共同体」は悪い話ではないけれど、先に解決すべきことがあるのにと、もどかしい気持ちになる。
 ささやかな感動を覚えたのは、これらの問題に取り組んでいる著者たちが、1970年以降に生まれた世代で、しかも祖父母の時代が起こした戦争の責任をどう受け止めるかについて、深い考察を持っていることだ。具体的な提案も興味深い。「ドイツのような被害者救済法をつくる」「共通の教科書で歴史を学ぶ」「重慶大爆撃と東京大空襲の被害者同士が交流し、日本が起こした戦争の責任を問う」など。本書は同世代の若者はもちろん、日本の政治や経済をあずかる人にも参考にしてもらいたいと思う。(室)


それでも、日本人は「戦争」を選んだ

加藤陽子 著

  • それでも、日本人は「戦争」を選んだ
  • 加藤陽子 著
  • 出版社:朝日出版社 価格:1,700円
 日清戦争、日露戦争に始まり第2次世界大戦にいたるまで日本は戦争をし続けてきた。本書は歴史学者である著者が、これらの戦争について某私立中学・高校の歴史研究会の生徒にした5日間の講義を採録したもの。その時々の戦争がどんな特徴を持ち、国際関係、地域秩序、国内の政治・文化にどんな影響を与えたのか。著者は様々なデータや資料を紹介しながら、当時のいろんな立場に立たせて考えさせる。そこから見えてくるのはどれ一つとして同じでない、戦争と歴史の立体的な姿。
 著者は、戦争をめぐる状況や正当化する論理などを正確に取り出したかったという。その中に「普遍性」を見つけ、私たちが直面する問題に役立てたいとの思いだ。現にベトナム戦争における米国のように、歴史を誤用して戦争が泥沼化した例もある。当時そこにいたら、私たちも諸手を挙げて戦争に賛成しなかっただろうか? 歴史を考え、学ぶことの面白さと有用性に思わず興奮してしまう一冊。(登)

教師は二度、教師になる君が代処分で喪ったもの

野田正彰 著

  • 教師は二度、教師になる 君が代処分で喪ったもの
  • 野田正彰 著
  • 出版社:太郎次郎社エディタス 価格:2,000円
2003年10月23日、東京都教育委員会は、国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について通達を出し、以降、これに従わない教師たちが大量に処分されていった。
 著者は精神科医として、聞き取りを行い、この通達の是非を問うた裁判に意見書を提出、本書の元となった。
 登場する13人の教師たちは、生徒たちと向き合い、彼らの意見を尊重し、生徒たちの力を伸ばそうと格闘し、もう一度教師となってきた。そういう彼らにとって、「国歌」の強制に従うことは生徒を裏切ることになる。  しかし、そのために彼らの心身には不眠、胃潰瘍、感情の不安定、抑うつ、自己喪失など深刻な症状が現れる。それは毎年、彼らを苦しめる「君が代症候群」と言える。
 私たちの喪ったもの、それは生徒への信頼に基づく教育、それを培う環境である。それは今起こっている政治の変化によって元に戻るのか。まだ私たちに答えはない。(衣)


【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
このページのTOPへ