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ふぇみんの書評

チェチェン廃墟に生きる戦争孤児たち

オスネ・セイエルスタッド 著/青木玲 訳

  • チェチェン 廃墟に生きる戦争孤児たち
  • オスネ・セイエルスタッド 著/青木玲 訳
  • 出版社:白水社 価格:2,800円
 ノルウェー人フリージャーナリストによるルポルタージュ。彼女は1994年にロシア軍用機で初めてチェチェンの首都グローズヌイを訪れた。その後2006年に再びチェチェンに戻り、度重なる戦争によって、安息もほんの少しの希望も失った人々から言葉を引き出していく。
 チェチェンで私設の孤児院を営む女性や、あらゆる暴力にさらされ心の回復もままならない子どもたち、「テロリスト」の家族だということで迫害される一家、戦争で使い棄てられた兵士、チェチェンのカディロフ大統領まで、様々な立場の人々へのインタビューから事実を再構成し、物語調に紡いでいく。人々はこれ以上なく深く傷ついている。多くを奪われ、抑圧されている女性たちの息づかいすら伝わってくるようだ。
 この勇気ある仕事に敬意を表すとともに、彼女の身の安全を案ずる。そして、世界の関心をチェチェンに取り戻す努力が必要だと痛切に感じる。(竹)

「かわいい」の帝国モードとメディアと女の子たち

古賀令子 著

  • 「かわいい」の帝国 モードとメディアと女の子たち
  • 古賀令子 著
  • 出版社:青土社 価格:1,900円
 「かわいい」は、今や日本が世界に誇る「カルチャー」。「かわいい」が女性誌に頻出するだけでなく、「kawaii」は海外のファッション業界にも影響を与えた。はたまたNHKの番組になったり(2008年)、ついには外務省が「カワイイ♥♥大使」を任命した(09年)。「キモかわいい」という言葉も生まれ、「かわいい」メンズも誕生。
 本書は、日本を席巻する「かわいい」の戦前からの変遷、「かわいい」の多様性、現在の「かわいい」の意義などを追い、この巨大な「かわいい」帝国の正体に迫ろうとする。
 「かわいい」は「装飾(デコ)指向」で、「日本的高度消費文化の象徴的構造物」で、女の子の「特別な価値観」で、「『大人社会』の規範から逸脱した価値観」であるという。「かわいいには興味がほとんどなかった」という著者だが、期せずして女の子たちの「生きがたさ」があぶりだされているようにみえる。今後、現代の女の子をめぐる環境や生き様との照合を期待したい。(登)

拉致対論

蓮池透、太田昌国 著

  • 拉致対論
  • 蓮池透、太田昌国 著
  • 出版社:太田出版 価格:1,600円
 2002年9月17日、日朝首脳会談で拉致への国家的関与が金正日主席によって認められた。それ以来、排外的ナショナリズムや北朝鮮憎しの言論、拉致被害者家族の発言を聖域視する言論が日本を覆った(また「家族の物語」が強調され男女平等は叩かれた)。
 元「家族会」事務局長の蓮池透さんと、社会変革をめざす立場から冷静な議論をしようとした『拉致異論』の著者、太田昌国さん。対極にいると思われた二人が出会い、対論した記録である。
 拉致問題に対峙し、日本政府の無策に怒り、北朝鮮との対話を訴えるようになった蓮池さん。彼は植民地支配に言及し、「いろいろな立場の被害者の対話」に解決の糸口を探る。そこにはもちろん元「慰安婦」の姿もあるだろう。太田さんの「革新派・左翼にとっての試練」という言葉も印象的だ。 
 「左右の垣根を越えた」ということにとどまらない。この対論を実現させた道筋をたどることが重要だ。(衣)

【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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