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ふぇみんの書評

これに増す悲しきことの何かあらん靖国合祀拒否・大阪判決の射程

田中伸尚 編著

  • これに増す悲しきことの何かあらん 靖国合祀拒否・大阪判決の射程
  • 田中伸尚 編著
  • 出版社:七つ森書館 価格:1,800円
 書名は、先の大戦で2人の息子を亡くした小谷和子さん(ふぇみん会員・古川佳子さんの母)が生前に詠んだ短歌の一部だという。遺族の怒りや悲しみをさらに増大させたのが、国と靖国神社が無断で進めた「合祀」だった。この本は去る2月26日、靖国合祀拒否を求めた大阪地方裁判所での「原告敗訴」判決に、異議を唱える。
 長年にわたり靖国合祀問題を取材してきた著者と高橋哲哉さんとの対談や、原告の陳述書からは、戦後一宗教法人になってもなお国家神道としての本質を持ち、戦死者に感謝を捧げる顕彰を続ける靖国神社の姿が浮かび上がる。原告たちが悲しみを抱えながら侵略戦争に向き合う真摯さに比べ、訴えを「不快の心情・感情」という言葉に(意図的に?)矮小化した判決や、事の本質をとらえられないマスコミ報道…。この判決が新たな戦争への道を開くことにならないか、警鐘を鳴らす一冊でもある。(室)

拉致左右の垣根を超えた闘いへ

蓮池透 著

  • 拉致 左右の垣根を超えた闘いへ
  • 蓮池透 著
  • 出版社:かもがわ出版 価格:1,000円
 著者は北朝鮮による拉致被害者の兄として、また拉致被害者家族連絡会の事務局長として、メディアに登場してきた。その発言はタカ派的な印象を与えてきたが、現在家族会と距離を取る著者。立つ位置はユニークだ。
 拉致被害者の救出については、この数年北朝鮮との交渉も中断し、こう着状態が続いている。著者は制裁一辺倒の政府に憤る。相手と交渉しなければ、やみくもに制裁と言っても拉致被害者の救出はできない。
 北朝鮮憎しと感情的になる家族会の言う通りになるのではなく、政府は戦略を持って被害者救出を考えるべきではなかったのか。後出しではなく、国交正常化交渉とともに同時実行型の交渉をすべきだという著者の言葉には説得力がある。 著者は、右翼的な人たちから「変節した」とバッシングを受けているが、自分は右でも左でもないと言う。状況を見極め、勢いに流されずに拉致問題の解決を求める著者の姿勢に敬服する。(衣)

暴力とジェンダー連続講義

林博史、中村桃子、細谷実 編著

  • 連続講義 暴力とジェンダー
  • 林博史、中村桃子、細谷実 編著
  • 発行:白澤社 発売:現代書館 価格:2,200円
 「戦争とは人を狂わせるものだ。だから戦争をしてはいけない」という言説がある。そうだろうか? 軍隊・戦争と性暴力などの研究で知られる林博史さんは、戦場で強かんをする兵士もいればしない兵士もいるという事実に注目。そして「戦争だから仕方なかった」ではなく、軍隊を生み出し、侵略戦争を支えた日本人の意識、日本社会のあり方そのものを問うことが必要なのだと力説する。
 本書は林さんが企画した連続講義の講演録。「秋葉原無差別殺人事件」やテレビCM、公共彫刻を例に、「性暴力表現に寛容」で「男性が力を誇示することで誇りを保つ」日本社会のありようを示す。さらに元「慰安婦」制度がアジア一帯に人身売買ネットワークを確立し、戦後はアメリカ軍中心に維持され、近年は人身売買被害者が日本国内に送り込まれている経緯を明らかにする。本書は元「慰安婦」制度と現在の人身売買をつなぎ、それを支える日本社会を鮮やかに浮かび上がらせた。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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