さよなら紛争[14歳の世渡り術] 武装解除人が見た世界の現実
伊勢﨑賢治 著
|
- さよなら紛争[14歳の世渡り術] 武装解除人が見た世界の現実
- 伊勢﨑賢治 著
- 出版社:河出書房新社 価格:1,200円
|
|
かつて「紛争解決請負人」として東ティモール、西アフリカのシエラレオネ、アフガニスタンの武装解除に携わり、現在は東京の大学院で「平和構築学」の教鞭をとる著者。そんな著者が語る、世界の紛争や「和平」、国際人道支援のリアルな実態とそこから導き出される提言は、日本のいわゆる「海外派兵積極派」にも、海外派兵を許さない「護憲派」にも鋭く迫る。
平和は願いや祈りで獲得できるほど、単純でイージーではないし、平和が正しいから闘いがやむわけではないと著者。だからこそ平和を積極的に獲得するのが必要で、武力を伴う場合もあると言う。そして日本は、日本製品のブランドイメージとともに、憲法9条を世界に向けて広告することで平和構築に貢献し、日本の安全保障をつくり出すというのが著者の戦略だ。
中学生から読めるシリーズで、言葉は明快、用語解説も逐一あり、著者の半生にも(建築家を目指したが挫折)触れられており、将来に悩む若い世代にも最適な一冊。(登)
- わたしの身体深く
- Katoucha 著
- 出版社:ポプラ社 価格:1,600円
|
|
世界初のアフリカ出身スーパーモデルとして一世を風靡したカトゥーシャによる自伝。1960年生まれ、17歳で出産し、父親の代理の男性と強制的に結婚させられた後、セネガルからフランスに渡った彼女はトップモデルとして成功し、イブ・サンローランのミューズにまで昇りつめる。しかし奔放で華やかな生活の背後には、フランスの大学で学んだインテリ階層出身でありながら、9歳で何も知らされぬまま体験した性器切除と、その後の性的暴行による心の傷が影を落としていた。
ファッション界の第一線を退いた後、彼女は「性器切除反対のために闘うカトゥーシャ(KPLCE)」を立ち上げファッションビジネスと連動させたイベントを開催するなど、精力的な活動を展開する。これからの活躍に多くの期待が寄せられていただけに、2008年突然の事故死はあまりに惜しまれる。本書が故郷アフリカを愛し続けた彼女の志を引き継ぐ手助けとなるよう切に願う。(梅)
すべての人にベーシック・インカムを基本的人権としての所得保障について
ゲッツ・W・ヴェルナー 著/渡辺一男 訳
|
- すべての人にベーシック・インカムを 基本的人権としての所得保障について
- ゲッツ・W・ヴェルナー 著/渡辺一男 訳
- 出版社:現代書館 価格:2,000円
|
|
著者は「人間は文化的な存在である」という前提に立つ。文化的な生活を送ることができなければ社会に関与できないと考え、所得保障は基本的人権だという。著者はドイツの大手ドラッグストア・チェーンの創業者である。労働や企業のあり方、利益を生む仕組みについて1章を割き、その内容に感銘を受ける。人(労働者)を例外なく、能力があって公正で信頼できると考えるべきと説き、企業内で個人が自発性を発揮する時とは「上司のことだけを気にしない場合に限られ」ると言う。日本では失われたかに見える「信頼」がベースにある。
この世界でベーシック・インカムを実現させるためには、所得に課税するのではなく、「消費」に課税すればいいという。ベーシック・インカムは、生存のための労働と社会参加から排除されるリスクから解放するという主張に納得。実現には長い道のりがありそうだが。(竹)