私たちは、性犯罪被害者です
キャロライン・リーマン 著/小西敦子 訳
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- 私たちは、性犯罪被害者です
- キャロライン・リーマン 著/小西敦子 訳
- 出版社:青志社 価格:1,400円
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ジェンナー、ジョナサン、ケリー、シーナ、アルトゥーロ…かつてレイプや性虐待に遭った10人のサバイバーたちが、実名と顔写真とともに、自分の被害と以後の苦しみ、そこからどう人生をやり直したのかを赤裸々に語っている。
ページをめくれば私たちは一人ひとりのサバイバーと「直接に向き合う」ことになる。被害を受けた後、長期間にわたりどのような心理状態にあるのか? 何が必要なのか? 子どもの場合には? 親しい人が被害に遭った時の役割や、社会が安全であるために何が必要なのかを考える一助になる。もし被害を受けたことがあるなら「『自分は一人ではない』と教えてくれる」。
また日本語版は『性暴力被害にあうということ』著者の小林美佳さんと『STAND 立ち上がる選択』著者の大藪順子さんが特別寄稿。小林さんの「出会った1000人の被害者は本書のサバイバーたちのように『言えない』ことを知ってほしい」の言葉も大事にしたい。(登)
「エコ罪びと」の告白私が買ったモノはどこから来たのか?
フレッド・ピアス 著/酒井泰介 訳
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- 「エコ罪びと」の告白 私が買ったモノはどこから来たのか?
- フレッド・ピアス 著/酒井泰介 訳
- 出版社:日本放送出版協会 価格:1,800円
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魚やコーヒーといった食品から、衣類や燃料、木材にパソコンまで、本書に登場するものはどれも身近にあるものばかりだ。それらは、どこの国から運ばれ、どのような人たちが、どのような労働現場で働き、報酬は幾らなのか、そして環境負荷は? 自らの目で確かめたいと旅に出た著者、臨場感のある描写は、旅の随行者気分にしてくれる。18万km、20カ国におよぶ旅の後半は、使い終わりごみに出された携帯電話や古着の行方を追う旅も含まれている。豊かな消費社会を支えるモノをつくっているのも、使い終わったモノを処理(再利用)しているのも、途上国の人たちだ。悲惨な状況で働く人たちの場面もあるのだが、印象に残るのは、バイタリティーあふれる途上国の人びとの姿だ。先進国では、もう見られない光景かもしれない。
イギリス最優秀ジャーナリスト賞受賞(2001年)の経歴があるという著者、そのジャーナリスト魂が光る一冊。(束)
- ヘンでいい。「心の病」の患者学
- 斎藤学、栗原誠子 著
- 出版社:大月書店 価格:1,600円
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本書は、アルコール依存症などの治療で有名な精神科医とその患者の対談。うつ、不安神経症と他の医療機関で診断されていた栗原さんが、斎藤さんを「精神科医に対して抱いていた私の先入観を根底からひっくりかえすような治療者だった」と感じ、10年にわたる患者となった。患者の前で泣き、患者とケンカするなど、斎藤さんのユニークな面が、二人の丁々発止のやりとりの中で、浮き彫りになる。
「あなたのエキセントリックなところがおもしろいんだから、治しちゃだめだ」と、斎藤さんから言われ、魂の奥底にある何かを揺さぶられた、というエピソードが興味深い。
症状も患者本人の力の発現であり、その力を本人が確認することが回復で、患者のパワーを引き出すことが治療者の役割という斎藤さんの治療論に、私は納得するが、専門家の意見は分かれるかも。精神科医と患者のこうした本が出たことも「ヘンでいい」かもしれないと思った。(り)