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ふぇみんの書評

派遣ちゃん

宮崎誉子 著

  • 派遣ちゃん
  • 宮崎誉子 著
  • 出版社:新潮社 価格:1,300円
 1972年生まれの著者はこれまで11の派遣会社に登録し、そのうち6社で実際に働いた経験を持っている。
 収録の2話の1つ「青瓢箪」の主人公は作家志望でひきこもりの兄、兄にばかり期待をかける母、父との4人家族で暮らし、派遣で仕事をしている。派遣会社の営業男性が流暢に話すほど「自分を商品だと実感」する主人公は、面談の帰りに美容院でトリートメントをし、新しいショッピングモールの安っぽいシャンデリアを見ながら「新鮮味に欠けるのは職探しだけでいい」と思う。その様子からは決定的な困窮は感じられない。むしろ著者は、いつ切れるかわからない職場や友だちとの淡々としたブラックユーモアを含む会話から、生活全体を覆う圧倒的な虚無感を表現する。
 労働問題のひずみを明快に表現しつつも被害者性を強調せず、あくまで個人の視点で日常を描いている点が、この作品を文学の領域に高めている。(梅)

学校は雑木林 共生共存の教育実践と「君が代」不起立

河原井純子 著/斎藤貴男 解説

  • 学校は雑木林 共生共存の教育実践と「君が代」不起立
  • 河原井純子 著/斎藤貴男 解説
  • 出版社:発行=白澤社 発売=現代書館 価格:1,800円
 冬は落ち葉を集めて、たき火をして焼きいも。絵の具と小麦粉を練り、全身を使って教室中に絵を描く時間。著者が30年前、養護学校で働き始めた時、自由と、教員同士の、そして子どもたちとの信頼が教育実践の中にあった。本書を読むと、まずそのすばらしさにひきつけられていく。だがすぐに私たちは気付く。それがすべて過去形でつづられていることを。
 著者は養護学校の教員となって、差別されない、しない、ことをモットーに学校は雑木林のようにいろいろな人が共生共存しているのがいい、と信念を持ってやってきた。
 だが、2003年当時著者が勤務していた都立七生養護学校の「こころとからだの学習」が槍玉に挙げられ、教員は処分され、性教育は禁止となった。同時に 2004年の10.23通達により、卒業式での君が代斉唱などが義務付けられた。 あきらめず、でも楽しげに信念をつらぬく著者の温かみが伝わってくる。(衣)

ルポ 雇用劣化不況

竹信三恵子 著

  • ルポ 雇用劣化不況
  • 竹信三恵子 著
  • 出版社:岩波新書 価格:700円
 今年の「貧困ジャーナリズム大賞」を受賞した著者が、朝日新聞での連載をもとに新たな取材を加え書き下ろしたもの。
 介護職や旅行サービス業、教員、量販店などのパートや名ばかり店長などの働かせられ方、労災隠しの実態には背筋が寒くなる。厚労省の調査によると、 2007年の労災による派遣労働者の死傷者数は、製造業派遣が解禁された04年の約9倍。正規、非正規問わず、ありとあらゆる職種に「雇用劣化」が広がる。著者は、日本が「雇用劣化による不況」への道をたどっていると危機感を募らせ、自立した税の担い手となる働き手を育てなかった日本社会を批判する。
 個人で加入できるユニオンやネットワークの広がりや、EUで広がる「フレクシキュリティ」(雇用の柔軟化と働き手の安心を保障する仕組み)についても触れ、市場原理主義を拒否し、働き手のつながりを作り、より「マシ」な解決法、働き方を求めていこうと呼びかけている。(竹)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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