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ふぇみんの書評

あきらめない教師たちのリアルロンドン都市裏、公立小学校の日々

ウェンディ・ウォラス 著/藤本卓 訳

  • あきらめない教師たちのリアル ロンドン都市裏、公立小学校の日々
  • ウェンディ・ウォラス 著/藤本卓 訳
  • 出版社:太郎次郎社エディタス 価格:2,200円
 全国学力テスト、成績ランク公開、学校間競争…。日本がモデルにしたと言われる「サッチャー教育改革」。その路線を踏襲するイギリスのある小学校の日々を5学期以上にわたって克明に追ったのがこの本だ。
 ロンドン中心部のセックスやドラッグが蔓延する貧困地域にある小学校。全校生徒の5分の4は英語以外の母国語を持ち、3分の2は給食費補償を受けている。
 そんな中で、政府からの多大な要求を受け「だからこそ、私たちのやり方で対応しなければいけない」と奮闘する教職員たち。その活動は、国のやり方に表だって反旗を翻すものではなく、特に前衛的な実践でもない。  しかし、校長を先頭に自律性を保ち、目の前の切実な問題に一つずつ真摯に取り組んでいく姿は、まさしく教育の王道。日本の現実と照らしても学ぶところが多い。(JO)

アラブ、祈りとしての文学

岡真理 著

  • アラブ、祈りとしての文学
  • 岡真理 著
  • 出版社:みすず書房 価格:2,800円
 パレスチナでパレスチナ人が「非常事態を日常として生き」、「虫けらのように殺されているとき」、アラブ文学者である著者は、文学に何ができるのかを必死に問うた。本書はパレスチナ、レバノン、エジプトなどの現代作家の小説を紹介しつつ、文学の持つ力を明らかにする。ガッサン・カナファーニーはパレスチナ人の生を鮮烈に描くことで、イスラエルによる民族浄化と文化や風土の「記憶の抹殺(メモリサイド)」に抗した。ほかにも様々な女性、男性作家が、植民地主義の暴力が解放後も残す禍根や、西洋のフェミニズムのムスリム女性に対するステレオタイプ、シオニズムや「パレスチナ人の解放の言説」(すら)が持つナショナル・アイデンティティーの同一性の瓦解を描く。「非常事態」を生きる人には「魂の救済」として文学は必要だが、現実の過酷さが立ちはだかる。だが文学は「祈り」だと著者は言う。私たちは読むことで、死者を思い、「別の世界の可能性」を祈る。(登)

韓国ワーキングプア 88万ウォン世代絶望の時代に向けた希望の経済学

禹晳熏、朴権一 著/金友子、金聖一、朴昌明 訳

  • 韓国ワーキングプア 88万ウォン世代 絶望の時代に向けた希望の経済学
  • 禹晳熏、朴権一 著/金友子、金聖一、朴昌明 訳
  • 出版社:明石書店 価格:2,000円
 「88万ウォン世代」とは韓国の20代のことで、手取り月収が平均88万ウォン(約6万円)ということから名付けられ、異例のベストセラーとなった。そして、若者の貧困・失業問題に対する社会的関心を高める起爆剤になったという。
 IMF危機以降の政治が及ぼした影響やグローバル化についての考察、欧米や日本の若者との比較などを通して、韓国の若者たちがなぜ「蟻地獄」から出られないのかを経済学の見地から詳細に書いている。
 日韓の若者の労働条件、男女格差、非正規労働の女性化、メンタリティーは驚くほど似ているが、異なる部分も多い。賃金、仕事への満足度、上の世代との競争、自立の度合い、既得権を得た世代の残忍さなど、韓国のほうがはるかに厳しい。本書を通じて日本を見ると新たな発見も。国や文化は違えど、絶望の時代の「希望」は私たちでつくるものなのだと思う。(竹)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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