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ふぇみんの書評

貧困にあえぐ国ニッポンと貧困をなくした国スウェーデン

竹﨑孜 著

  • 貧困にあえぐ国ニッポンと貧困をなくした国スウェーデン
  • 竹﨑孜 著
  • 出版社:あけび書房 価格:1,600円
 スウェーデンは「福祉大国」というよりは、「貧困をなくした生活大国」だと著者は言う。以前のスウェーデンは一介の貧農国で、寒くて貧しい生活を紛らわすため、国民総アルコール中毒状態だったという。
 日本では「小さい政府論」が強調されるが、スウェーデンという「大きな政府」(国家予算規模は日本の2倍)が「生活大国」をつくり上げた背景には、富や所得の再分配に最重点を置いた「公的主義」があった。また、貧富の差の縮小のために低所得層の引き上げが目指された。
 格差が激しいアメリカ、それに追随する日本の「自己責任主義」とは大違い。問題は税金の「%」ではなく、その使い道なのだ。スウェーデンでは「税金が国民の貯金」だという認識があり、人々は政府や政治へのウォッチを怠らない。また、税金の家計への還元率は政府予算全体の約44%。量の住宅政策から質の居住政策への転換がなされたことも興味深い。
 スウェーデンの人々は社会は個人を支え、個人は社会を構成するという社会観を形成してきた。将来を左右するのは私たちの意思なのだ。(竹)

花はどこへいった枯葉剤を浴びたグレッグの生と死

坂田雅子 著

  • 花はどこへいった 枯葉剤を浴びたグレッグの生と死
  • 坂田雅子 著
  • 出版社:トランスビュー 価格:1,800円
 昨年公開された著者監督の同名の映画は、ベトナム戦争帰還兵だった夫の死を契機に枯葉剤の問題を追うドキュメンタリーだ。本書では、なぜ映画が生まれたかを述べると共に、枯葉剤がもたらした何世代に及ぶダイオキシンの被害を明らかにする。
 夫のグレッグ・デイビスは従軍中に多くの枯葉剤を浴び、2003年に肝臓がんで亡くなった。闘病中に受けた手術の病因が枯葉剤と知り、徐々に枯葉剤が死因だと確信していく。原因をさらに究明したいと枯葉剤被害者の実態を追ってカメラを回していく。夫を死に至らしめたものを追及する著者の情念ともいえる激しいエネルギーに圧倒される。その映像が多くの人の目にとまり、ベトナムのテレビや日本の劇場での公開につながる。
 不条理な夫の死への疑問から、被害の実態にリアルに迫っていく中で、ダイオキシン惨禍への見方が、厳しい公憤へと変化していくのが興味深い。被害者を支える家族の深い愛の描写が圧巻だが、この愛に触れたことが夫を失った彼女自身のどうしようもない喪失感を癒やし、鎮魂への道程にもなっている。(み)

軍事主義とジェンダー第二次世界大戦期と現在

敬和学園大学戦争とジェンダー表象研究会 編

  • 軍事主義とジェンダー 第二次世界大戦期と現在
  • 敬和学園大学戦争とジェンダー表象研究会 編
  • 出版社:インパクト出版会 価格:1,500円
 女性史家の加納実紀代さんらの同研究会は、第2次世界大戦中の日本、ドイツ、アメリカの雑誌メディアを中心にジェンダー表象を分析した。本書は2007年秋に行われたシンポジウムをもとにしたものだ。
 日本の「日本婦人」、ドイツの「ナチ女性展望」、アメリカの「レイディーズ・ホーム・ジャーナル」などを、豊富な画像とともに比較。その時代のその国で女性に何が求められていたのかがよく分かる。例えば日本は銃後を守る精神論を説く記事が圧倒的に多い(共に「死ぬ」ことも含め)。ドイツは女性の居場所を家庭だと規定したナチの機関紙らしく主婦・母親業の生活記事が多い。アメリカは広告が多く、家庭にいながら美しく「余裕のある」生活、「購買」で戦争を支えようとしたようだ。
 また日本とドイツは性別役割分担を建前としつつ、戦争末期に労働力が不足すると女性労働を「補助員」として位置付けた上で利用した。これが今の日本の女性の派遣労働と同じ構造との指摘が興味深い。
 ほかに軍隊への「共同参画」など現在の問題に関する上野千鶴子さんの講演も採録。(登)
【 新聞代 】(送料込み)
 1カ月750円、3カ月2,250円
 6カ月4,500円、1年9,000円
【 振込先 】
 郵便振替:00180-6-196455
 加入者名:婦人民主クラブ
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