CPR NEWS LETTER No.29 2001年10月20日発行
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過剰拘禁が深刻化―法務省は今こそ刑罰制度全体の見直しを!
10年以上の長期厳正独居拘禁者26名を早期に通常の処遇に!

5月26日CPR総会・セミナー開催

 去る5月26日、東京・早稲田で監獄人権センターセミナー2001が約50名の参加で開かれました。2001年度の総会では過剰拘禁問題(16ページ)が大きなテーマとなりました(12ページ〜)。セミナーでは、副代表の菊田幸一さんの挨拶ののち、龍谷大学法学部教授の福島至さんをお招きして、「刑務所内での人権NGOの活動・イギリス」をテーマに講演会が行われ、活発な質疑応答がなされました。
講演内容と質疑の詳細は、以下をクリック
刑務所内での人権NGOの活動・イギリス
福島 至 (龍谷大学法学部教授)

情報公開制度を活用しよう!

 2001年4月より、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」が施行されました。報道によれば、法務省は、「刑の執行に支障を及ぼす恐れがある」との理由から、新築中の東京拘置所に設置される死刑執行施設の設計図、見取り図を不開示にしたということです。このような問題点もあるものの、「行政機関の情報は原則公開する」としたこの法律を利用して刑事拘禁分野の透明化を図ることの意義は大きいと思います。事務局の末廣哲から報告します。

長期厳正独居の解除を求めるキャンペーン

 昨年10月に植田至紀衆議院議員(社民党)が提出した質問主意書によって、昼夜独居(厳正独居)処遇の全国的な実態が初めて明らかになりました。その中で、通算期間が10年以上の長期にわたる受刑者が28人、30年以上が5人もいるという実態が判明。植田議員と法務省矯正局とのヒアリングの場にも、CPRから事務局長が同席して改善要求と追跡調査の意向を伝えました。しかし、2001年7月に植田議員が10年以上の昼夜間独居者について行った追跡調査の結果では、死亡者と満期出所者を除くと、1人が集団処遇に変更になっただけで、新たに1人が10年以上となり、依然26名が10年以上厳正独居処遇でした(北九州医療刑(旧・城野医療刑)8名、宮刑5名、岐阜刑5名、大阪刑4名、旭川2名、八王子、広島、各1名)。
 CPRではこれらの26名が、より人道的な処遇を受けられるよう、まず26名の氏名をできる限り特定した後、何らかの人権救済の手続きをとる予定です。26名の氏名などについて、何らかの情報をお持ちの方はぜひセンターまでご一報ください(封書・ハガキの表書きに「厳正独居キャンペーン」と明記してください)。

被拘禁者の自殺相次ぐ

 @新潟刑務所(平方善昭所長、新潟市山二ツ)によると、9月2日午前6時ごろ、男性受刑者(53才)が独居房で窓の鉄格子にシーツをくくり付けて首をつっているのを巡回中の職員が発見。病院に運ばれたが同日夕、死亡した。受刑者はかぜをこじらせたことから独居房に移されていたが、ノートに将来を悲観し自殺をほのめかした記述が残されていた。9月5日判明。A法務省矯正局によると、9月4日午後8時ごろ、大分刑務所(大分市)で服役中の受刑者(29才)がランニングシャツを独居房の窓内側の金網にかけて首をつっているのを巡回中の刑務官が発見した。当時は夕食後就寝前の自由時間だった。受刑者は病院に運ばれたが、意識不明の状態が続き8日未明に死亡が確認された。遺書はなかった。9月19日判明。B京都拘置所(伏見区)の独居房で、10月8日午後6時半頃、勾留中の30代の男性被告人が、窓の鉄格子に結びつけたシーツで首をつってぐったりしているのを巡回中の刑務官が発見、病院に運ばれたが間もなく死亡した。遺書は残されていなかった。10月9日判明。
 いずれの施設も刑務官が15分に1回、巡回を行っていたが、発見前は変わった様子はなかったという。
 法務省は9月、刑務所・拘置所での自殺や逃亡を防ぐため、独居房の窓部分に赤外線センサーをつけることを決めた。来年度にまず、規模の大きい拘置所、拘置支所6カ所で実施し、効果を見ながら範囲を拡大する。自殺事件では、刑務官が巡回する合間に、シーツなどを窓の鉄格子に結びつけて首をつるケースが多いため、一定時間を超えて窓のそばにいるとセンサーが感知し、警報やランプなどで刑務官に知らせるしくみ。自殺事故は増加傾向にあり、98〜2000年には毎年10件。未遂は年間百件以上で、警備上大きな課題になっている。矯正局は「行刑施設の収容人数自体が増えているせいもある。傾向の分析は難しく、自殺する兆候のある人が多かったと考えるしかない」と話している。
 センサー設置により被収容者の動作要領がいま以上に厳格に管理されることが危惧されます。自殺防止のためには、被収容者をなるべく雑居房に収容する、内外の専門家によるカウンセリングを施す、刑確定後はごく一部の親族としか外部交通が認められない現状を見直す、などの対策こそが必要です。早急な改善を求めます。

過剰拘禁問題について

欧州評議会が日本に死刑執行停止を求める

 6月21日から23日にかけて、地球規模で死刑制度の廃止を求める初の世界大会がフランス・ストラスブールの欧州議会本部で開催されました。この第1回死刑廃止世界大会は仏の市民団体が計画し、旧ソ連諸国を含む43カ国で構成する欧州評議会などが開催を支援。再審無罪となった元死刑囚、免田栄さん、菊田幸一さんら日本の「死刑廃止フォーラム90」も含む、各国の国会議長・議員、非政府組織(NGO)、研究者ら約800人が参加しました。会議では、大量の死刑執行をしている中国や、民主主義国家で死刑を存続している日米に対する批判が集中、死刑廃止を強く訴えました。
 6月25日から5日間、欧州評議会は定例総会を開催、オブザーバー資格で参加している日本と米国が同会議加盟条件である「死刑制度の廃止」に消極的であることを批判し、死刑執行の停止を求める報告書を賛成多数で採択しました。報告書は日本について、再審無罪など誤った裁判を繰り返し、親族にも知らされないまま法相の決裁で死刑が執行される「密室性」を批判。凶悪犯罪が増加しており、「犯罪に対する抑止効果も認められない」と述べています。米国については、一部の州で執行が停止されていることを評価する一方、全国的な執行数の増加に重大な懸念を表明。「民主主義と人権の尊重を共通の価値とする欧州会議は、死刑を人道に対する犯罪的行為と認定している」として、2003年1月までに改善が見られなければ日米のオブザーバー資格の停止を検討するよう提案。11月に開く同会議の最高決定機関、閣僚委員会に対応を求めました。

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