情報公開請求ノススメ 〜初級編〜

CPR事務局  末 廣  哲


1 はじめに

 2001年4月1日、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」(以下「情報公開法」)が施行された。この法律は、政府が国民に対して説明責任を果たすことによって公正で民主的な行政を推進することを目的としている(1条)。情報公開法は、六種類の「不開示情報」を定めている。これらには、1、個人に関する情報、2、法人等に関する情報、3、国の安全等に関する情報、4、公共の安全等に関する情報、5、審議・検討等に関する情報、6、行政機関の事務・事業に関する情報、がある(5条)。不開示決定については、行政不服審査法に基づく不服申立ができ、情報公開審査会において調査審議される(18〜34条)ほか、行政事件訴訟法による取消訴訟の提起も可能である(36条)。この法律は、施行後4年を目途に、施行状況および情報公開訴訟の管轄について検討し、見直すことを定めている(付則3)。
 実際に公開請求をし、手続きに精通されている方もいると思うので、差し出がましい限りだが、制度自体はじまったばかりということで、適当な入門書がなく、残念ながら行政も基礎からはなかなか教えてくれないので、実際の事例をもとに手続きを見ていくことにしましょう。

2 実際の手続き

 2001年4月4日、「法務省大臣官房秘書課情報公開係」宛てに「行政文書開示請求書」を発送した。開示請求した文書は、『懲罰手続規│程』と『懲罰手続規程の運用について』という通達。請求に対する結論は、原則30日以内に決定される(10条)。4月5日、法務省情報公開係から電話で、書き忘れていたCPRの代表者の名前を聞かれる。4月6日受付印を押した請求書のコピーが簡易書留で返送された。
 まず「開示請求書」の書き方。用紙はインターネットでも公開されているが、以下の事項を記載していれば、書式自体に規定はない。@まず、分かりやすいように表題「行政文書開示請求書」とし、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律第4条第1項の規定に基づき、下記のとおり行政文書の開示を請求します。」と書く。A宛先となる行政機関の長の名、B請求年月日、C請求者の氏名又は名称、住所又は居所、法人・団体のときは代表者の氏名、D開示請求する行政文書の名称など対象文書を特定するに足りる事項を記載(4条)。E求める開示の実施方法(事務所において閲覧したり、写しの交付を受けるのか。写しの送付を受けるのか)、F開示請求手数料として収入印紙を貼付する。これは文書「1件につき300円」とされているが、1回300円で良いようだ(なお、1件につき2000円を限度として手数料の減免もあるので、減免を求める場合は「減免申請書の送付を求める」旨を付記しておこう)。
 Aの行政機関の長は、拘置所・刑務所の文書ならその施設が属する管区の長(例えば東京拘置所なら東京矯正管区長、大阪刑務所なら大阪矯正管区長)宛て、本省(矯正局、刑事局など)の文書なら法務大臣宛てになる。末尾に法務省関連の宛先を掲げる。
 Dの対象文書については、法務省ホームページの「行政文書ファイル管理システム」(2)からも検索できるはずだが、今回請求した上記2文書がどこにあるかすら、全くヒットしなかった。今後の改良を待ちたい。
 この「開示請求書」を行政機関の所在地宛に郵送する。
 4月19日、法務省矯正局総務課より、簡易書留で4月18日付「行政文書開示決定通知書」と「行政文書の開示の実施方法等申出書」の書式および<説明事項>が届く。「決定通知書」には、「1 開示する行政文書の名称」「2 不開示とした部分とその理由」「3 開示の実施の方法等」が記載されている(9条)。「申出書」は30日以内に返送しなくてはならない(14条3項)。<説明事項>にそって「申出書」を記載し、写しの送付にかかる郵便切手200円分を同封して、4月25日に法務省矯正局総務課へ返送した。
 この「開示の実施の方法等」は3通りから自由に選ぶことができる。<説明事項>にも記載があるが、部分的に組み合わせること(例えば一部を閲覧し、一部の写しの交付を受けるなど)も可能。手数料は、閲覧100枚までごとに100円、複写1枚20円で、いずれも300円以内なら追加手数料は無料である(例えば150枚なら、閲覧は200円、追加の手数料はなし。複写は20円×150枚で3000円、2700円の追加が必要となる)。
 最初の「請求書」に付記しておくことで、「開示実施手数料の減額(免除)申請書」が同封されてくるはず。減額(免除)申請には特に決まった書式はないので、以下の事項を記載してあればよい。表題「開示実施手数料の減額(免除)申請書」、年月日、宛先の行政機関の長、申請者の氏名(請求書と同様)、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律施行令第14条第2項の規定に基づき、下記のとおり、行政文書の開示実施手数料の減額(免除)を申請します。」と書いて、「1 開示決定のあった行政文書の名称等および開示決定通知書の日付・番号」「2 減額(免除)を求める額」「3 減額(免除)を求める理由」を記載し、理由を裏付ける書面を添付し、申出書と共に提出する。この書面とは、「生活保護受給者証明書」、自治体発行の「非課税証明書」などであるが、法務省矯正局総務課によれば、被拘禁者の場合、証明書の取り寄せが可能ならその方がよいが、それらがなくとも「領置金の額が現在○○円である。現金の差し入れの見込みもない」など、具体的な記載で足りる、ただし、実際減免されるかどうかは、「個別具体的に判断する」とのことでした。
 こうして4月27日には、上記の「懲罰手続規程」「懲罰手続規程の運用について」という通達のコピーを無事入手することができた。

3 まとめ

 今回は、手続の流れを紹介すべく、簡単なケースを取り上げた。CPRに関係する部分では、対象文書の存否を探すこと自体、容易ではないこと、解釈次第で矯正関係の大半の文書を不開示とすることができるような条文となっていること(「公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある情報」5条4号)、手数料の減免に関する規定があいまいなこと、今回は触れなかったが、不服申立手続が複雑なこと、など多くの問題点がある。また、開示決定を受けた文書が監獄法上の抹消の対象となるという問題、財団法人矯正協会刑務作業協力事業部(CAPIC)の情報が開示されない問題、などもある。
 しかし、この法律により、今後は一般市民の求めに対して情報を公開するか、公開できないときはその理由を説明する義務を負うとともに、行政自らが保有する文書名を原則としてすべて公開しなければならなくなった。日本で明治時代に官庁制度が整備されて以来、歴史上初めて行政情報が原則公開すべきものと考えられるようになったことの意義は計り知れない。2005年には見直しが予定されている。多くの人が実際に手続を使ってみて、「使い勝手」についての意見を集約する中で見直すべき点も明らかになっていくはずである。
 被拘禁者にとっても、刑務官(法務省)にとっても、もはや「行刑密行主義」が有害無益なことは明白だ。今後、この制度をどれだけ有効なものにできるか、は、公開する行政側はもちろん、公開請求する私たちの側にもかかっている。積極的にこの制度を活用し、刑事拘禁施設の改善に役立てていきましょう。もし有益な情報を入手した場合、ぜひ当センターにもご一報ください。よろしくお願いします。

法務省 資料開示請求先一覧表