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札幌刑務所、運動中の事故放置で片目失明寸前

 1997年から札幌刑務所(東区)で受刑中の男性が、所内でソフトボールの練習中、ボールが男性の左目を直撃。医務室の医師はまぶたを二針縫うなどの処置をしたが、受刑中であることを理由に角膜手術などの十分な治療をせず、左目の視力がほぼ完全に失われた。
 受刑者は、刑務所側が安全配慮を怠り、十分な治療も受けさせなかったためとして、国を相手取り約5000万円の損害賠償を求める訴訟を札幌地裁に起こした。4月27日の第1回口頭弁論で、国側は「医療措置は適切だった」等と主張し、争う姿勢を示した。

女性受刑者の73%が幼少期に性的虐待

 厚生労働省研究班(班長:北山秋雄。長野県看護大教授、健康保健学)による女性受刑者を対象とした国内初の性的虐待の調査で、覚せい剤使用などで有罪判決を受け、98年2月から2000年10月にかけて入所した20代、30代の女性受刑者82人のうち、約73%に当たる60人が、18歳になる前の幼少期や思春期に性的虐待を経験していることが6月24日、分かった。60人中、婦女暴行の被害者は未遂を含め26人。時期は高校時代が12人で、小、中学時代が11人、小学校就学前が3人。家族や交際していた男性など身近な人が加害者のケースが16人で、誰にも相談しなかったり、相談してもその後被害が放置された計21人が、最終的に警察への申告もなく精神面のケアも一切受けていなかった。女性受刑者の多くが心の傷(トラウマ)を抱えていることを示唆する結果となった。
 1998年に民間の研究者らが全国の女性約1300人を対象に行った別の調査では18歳までに性的虐待を経験した人は約29%で、女性受刑者の被害の割合はその約2・5倍にも上る。誰にも相談できずカウンセリング等の援助も一切受けられなかった人も目立ち、厚生労働省は性的虐待の早期発見や被害者への初期対応の在り方について検討を進める。
 北山教授は「性的虐待のトラウマが放置されると他人との信頼関係が築けなくなる場合があり、反社会的行為の要因の一つになっていることが推察される」とし「大声を出すなど被害に遭いそうになった時の対処方法を幼いころから教えたり、被害者に早期に専門的ケアを提供したりする体制整備が急務だ」と指摘しているという。

韓国の全12施設で少年院をIT専門学校化

 非行少年の立ち直りには、情報技術(IT)教育が不可欠として、韓国ではここ数年、社会全体の急速なIT化を反映し、少年院でも1人に1台ずつ最新型のパソコンを配備。退院後のスムーズな社会定着に向けて、IT専門教育や語学訓練を強化しているという。
 ソウル少年院の収容者の大半は、窃盗などの軽犯罪を犯した少年たちだ。家庭が貧しかったり、親が教育能力に欠けるケースが70%を占めており、家庭で教育を受けられる環境さえ整っていればほとんどの少年は少年院に収容されず、保護観察処分ですんでいるはずだという。それだけに、少年院は少年たちに適切な教育を施して社会に送り出し、再犯を防止するのが大きな課題となっている。「ソウル少年院が生まれてから、60年。単純な機械修理や溶接などの従来型教育では、IT社会に定着させていくのに限界を感じていた」とソウル少年院の幹部は語る。法務省の担当者は「これまで社会のお荷物扱いだった少年たちを、少年院での教育で専門職業人として変身させるシステムを目指している」と胸を張った。
 法務省が少年院教育の改革に乗りだしたのは、1999年9月。既存の教育・職業訓練システムを、ITと語学を軸にしたプログラムに改編した。衣服縫製などの旧来の職種が廃止され、パソコン関連を中心とする16職種の専門教育が実施されるようになった。全国12か所の少年院には、1人に1台、パソコンを配備。実用英語とコンピューター教育が週35時間、集中して行われている。これまでに、英語やコンピューター関連の全国中・高校大会で、少年院からの参加者48人が入賞、657人の卒業生がベンチャー企業に就職した。少年院の在院期間は通常、半年か1年半だが、資格取得や進学準備のため、退院を延期する少年も少なくない。少年たちの退院後の再犯率は以前は30〜40%にのぼっていたが、IT専門教育の導入で就職率などが向上し社会への定着が進むことにより、今後再犯率は10%まで下がると期待されている。法務省はさらに、2000年秋から少年院を「特性化学校」と位置づけ、マルチメディア情報通信科やコンピューターグラフィック科、英語会話科などを設置し、専門教育機能を強化した。ソウル少年院も別名「高峰情報通信中・高校」となり、少年院のイメージがますます薄まったが、あまりに充実した教育内容に「普通の学校より恵まれているのではないか」との声まで出ているという。

京都刑務所、刑務官が受刑者に熱湯をかける

 京都刑務所(山科区、植木靖雄所長)で、6月5日午後11時半ごろ、独居房の受刑者が洗面台の水を出しっぱなしにしていたのを注意したが、言うことを聞かなかったため、24才の刑務官が給湯室から約60度の湯をひしゃくで持ち出して房内の床にまき、湯がかかった受刑者は顔や腕に1週間のやけどを負った。刑務所の事情聴取に対し、刑務官は「驚かせば指導に従うと思い、軽い気持ちでやった。反省している」と述べた。刑務所はこの刑務官を、特別公務員暴行陵虐致傷の疑いで京都地検に書類送検、1カ月の減給処分としたほか、上司の処遇部長ら3人も、所長の口頭注意処分にしている。同所の久保川守総務部長は「受刑者の人権を守るべき立場なのにこのようなことを起こし、大変申し訳ない。指導、監督を徹底したい」と話している。

小田原拘置支所で腰痛悪化と横浜地裁に提訴

 1999年11月に神奈川県警秦野署に逮捕された男性(47才)は、同署に勾留中、ぎっくり腰となり、医師に10日間の安静を要する急性腰痛症と診断された。「代用監獄」では、横になることが許されていたが、起訴後の2000年12月から執行猶予付き有罪判決を受けた2001年2月までの約1年3カ月間、勾留されていた小田原拘置支所では、就寝時など以外はあぐらで座るよう強要され、慢性腰痛症の腰椎(ようつい)間板ヘルニアに悪化。現在も腰痛で働けない状態という。男性は8月27日、国に約4000万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こした。

小倉拘置支所で被拘禁者が骨折

 福岡拘置所小倉拘置支所(北九州市)によると、勾留中の男性(41才)が、7月17日に、腹痛の薬の投与の仕方などを巡って刑務官と口論の末もみ合いとなり、刑務官によって床に倒され取り押さえられた。その後、男性が右肩の痛みを訴えたため、小倉北区内の病院で診断を受けたところ、右肩の鎖骨が折れていたことがわかり、手術を受けて10日間入院した。小倉拘置支所の冨永久喜次長は「刑務官が取り押さえたことと骨折の因果関係ははっきりしないが、刑務官が身を守るために行った正当な行為だ」と説明。一方、浦野被告の弁護人は「被告から詳しい話を聴いたうえで検察庁に告訴するかどうか検討したい」と話している。

新潟刑務所で受刑者に「うそつき」の札をかける

 新潟刑務所(平方善昭所長)によると、1997年、懲罰で独居房に入れられていた受刑者が、「仕事に出たくない」と言って工場で働くことを拒んだため、職員が受刑者に「私は工場に出たくはありません。わたしはうそつきです」などと紙に書かせて首にかけさせ、ポラロイドカメラで写真を撮影したという。この職員は1997年8月、懲戒戒告処分を受けていたことが、9月10日、判明。同刑務所ではこの件も含め、96年から2001年にかけて、受刑者に平手打ちの暴行をはたらいたり、酒気帯び運転などで職員計5人が懲戒処分を受けていたことも判明、うち3人はすでに異動しているという。鍬田部長は「矯正職員としてあってならないことで申し訳ない。職員研修などを通じて、今後さらに自覚を促すよう指導したい」と話している。

北九州医療刑務所で看守が受刑者に暴行

 北九州医療刑務所(旧「城野医療刑務所」、佐藤誠所長。小倉南区)で1999年10月12日、当時の看守(29才)が、服役していた元受刑者(41才)の独居房を検査中に、看守ら十数人の名前や悪口を記したメモを発見したとして、洗濯をしていた元受刑者を食堂に呼び出した。さらに「態度が悪い」として取調室に連れて行き、別の看守が室外に出ていった直後に、いすに座っていた元受刑者の後ろから、後頭部を2回殴ったという。元受刑者は首の痛みを訴え、医務室で痛み止めの薬をもらったという。
 元受刑者は「悪口などは書いていない。殴られたうえ、胸ぐらをつかまれて床に押しつけられた。在日韓国人の自分に向け、国籍差別のようなことも言われた」と話している。看守は「自分の悪口を書かれていたこともあって興奮してしまった」と、暴行を認めたが、差別発言については否定している。暴行を認めたため、刑務所長らによる懲戒審査会が翌11月開かれ、口頭による厳重注意処分が決まった。元受刑者は「むち打ちの後遺症が今も残っている」と話しているが、刑務所側は「暴行とむち打ちの後遺症との間に因果関係はない」としている。また看守が暴行の事実を認め、元受刑者も告訴を見送ると言っていたため、刑務所側は、看守を告発しなかった。竹下正宏・法務省福岡矯正管区職員課長は「当時は告発しなくてもよいとの判断だったのだろうが、(元受刑者が)刑務所側の対応の甘さを訴えてきたので、再調査中だ」と話す。同刑務所の中元順一総務部長も「(元受刑者に対して)不適切な行動があり、重く受け止めている。今後このようなことがないように、全職員を呼び出し研修するなどした」と話している。

被害者等に出所者情報を提供する制度が開始

 法務省は8月、全国の検察庁や刑務所(少年刑務所、少年院を含む)、保護観察所などに通達を出し、犯罪被害者や警察に対し、出所後の加害者の情報を通知する制度を10月1日から開始した。被害者への情報提供については、99年4月、加害者を起訴したか否かなど刑事処分の内容についての提供を開始。2001年3月からは、法務省が被害者や目撃者の希望に応じて、加害者が刑務所を出たあとに、その日付などを知らせる制度を始めている。
 新制度では、加害者が満期出所や仮出所する場合、@刑務所や地方更生保護委員会が警察に対し釈放予定年月日や加害者の居住予定地などを通知、A検察官が特に希望する被害者らに直接、加害者の釈放予定時期や居住地の概要を通知する。通知対象者は、被害者や親族のほか、公判で犯罪の目撃情報を証言した人なども含む。通知内容も、被害者らが希望し、「再被害を避けるために必要」などの条件を満たした場合、a)加害者の居住先が被害者と異なる都道府県の場合は、都道府県名だけ、b)同一都道府県の場合は市区町村名まで、c)近接している場合に限って町字名までと、状況に応じて通知する。出所時期も、通常は月の上旬、中旬、下旬の通知にとどめ、被害者が転居したり、接触を避けるために不可欠な場合には釈放予定日を釈放の1〜2カ月前から数日前までに通知する。
 新制度の導入を受けて警察庁は、被害者の周辺をパトロールしたり防犯対策を指導したりするなどの対策を盛り込んだ「再被害防止要綱」をまとめた。同要綱では、警察の本部長などが加害者から再び被害にあうおそれがある被害者を「再被害防止対象者」に指定し周辺のパトロールや防犯指導などを行う。その際、警察の担当部署が刑務所や拘置所に加害者の出所や釈放の時期などの情報を問い合わせることができるほか、刑務所なども加害者に被害者に再び危害を加えることをうかがわせる言動などがあった場合は、警察に通報することになっている。警察庁によると昨年末現在、再被害防止の対象にしている被害者は計225人。最多は暴行・脅迫事件の73人で、殺人未遂事件25人、婦女暴行事件21人など。
 森山真弓法相は記者会見で「(加害者の)更生を妨げたり、プライバシーを不当に侵害したりする場合には、通知をしないこともある。人権保護には十分配慮する」と述べた。法務省は、特に居住地情報提供については、被害者が転居などの対応を取る必要があり、「犯罪の形態や背景、受刑中の加害者の言動などを検討し、妥当と認められる場合に限って情報提供する」(同省刑事局)としている。
 英国やカナダでも、性犯罪などの加害者の居住地を通知するが、情報が広がって出所者の居住を周辺住民が拒むなどのトラブルも発生している。CPRとしては、被害者への再被害の防止という目的は理解できるが、警察のパトロールなどから出所者の情報が第三者に漏れ、出所者が地域社会から排除され、結果的に更生を妨げる危険性があると考える。情報提供の可否も当局の幅広い裁量に一方的に任されており、出所者自身への通知もない。制度の意義は理解できるが、通達で処理するのではなく、広く国会で議論したうえで法的にコントロールすべきではないだろうか。

刑務所、拘置所の接見室にマジックミラー

 全国の刑務所や拘置支所など189施設のうち38施設で、職員が容疑者や被告らを監視するマジックミラーを接見室の窓に設置していることが、5月2日判明した。マジックミラーの窓は、被告人の背後にあり、接見室内部側は鏡となっているが、その裏側からは室内の様子が監視できる構造。大きさは縦横とも10〜数十センチで統一していない。
 仙台弁護士会の弁護士が2月、仙台拘置支所で被告人と接見した際「マジックミラーが付いた扉の向こうにビデオカメラを構えた職員がいた」と指摘して、日本弁護士連合会が各施設の接見室について、窓や部屋の構造、録音や撮影の有無などを照会した。法務省矯正局は当初から「録音や撮影は法律で禁じられ、あり得ない」と回答していた。
 矯正局によると、接見室の窓は透明ガラスが多いが規定はなく、マジックミラー付きの窓は札幌や府中、長崎など刑務所8施設と広島拘置所、仙台などの拘置支所30施設の計38施設にあるが、「自殺や暴行など内部の動静を把握するために必要。監視する職員が見えて弁護人らの気が散らないよう配慮し、各施設の判断で設けた」と反論していた。
 日弁連は7月に「マジックミラーでは、単なる監視か接見内容を探知しているのか区別がつかず、憲法や刑事訴訟法が保障している弁護人と被告人の秘密交通権を侵害する恐れがある」と撤去を申し入れた。これを受けた法務省は「誤解を招くのは不本意。『施設職員の様子を弁護人らも見られた方がいい』という意見を考慮した」として8月、全部を透明の監視窓に変えた。日弁連は「申し入れから撤去まで、異例の早さだった。マジックミラーの問題点は当初からはっきりしていたのではないか」としている。

新任刑務官ら旅行先で手錠掛け合い処分

 矯正研修所東京支所(中野区)で2000年度から関東甲信地方の刑務所、少年院などに配属された刑務官や法務教官に対する初任者研修中の6月ごろ、男性研修生が実技訓練用の手錠と捕縄一組を「練習のため」と言って借り出し、他の新任刑務官ら14人(うち女性二人)で伊豆地方に一泊旅行に出掛けた。研修生らは宿泊先で酒に酔い、荷物の中から手錠を出して互いに掛け合うなどしたという。手錠などは施設外への持ち出しが禁止されている。研修生らは旅行することを事前に届けていなかったため教官から問いただされ、手錠などの持ち出しが発覚。手錠を使った研修生ら六人が研修の一時停止、他の八人も注意の処分を受けていた。2001年10月5日になって発覚した。