コロンビア法廷、社会復帰ゾーンを違憲と判断

ギャリー・M・リーチ
2002年12月9日
コロンビア・ジャーナル原文


2002年11月26日、コロンビアの憲法裁判所は、アレバロ・ウリベ大統領が、いわゆる「社会復帰・統合地域」を2地域指定したことにつき、違憲との判断を下した。裁判所の判決により、ウリベは社会復帰地域で適用している抑圧的な政策を改善するか、あるいは、コロンビアの憲法を修正しなくてはならないことになる。一方、コロンビア軍は捜査と逮捕を令状なしで続けることはできなくなり、また、これらの地域における住民の移動を制限したり外国人ジャーナリストの旅行を制限できなくなる。アルフレド・ベルトラン判事は、裁判所の判決を次のように説明している。「ウリベは憲法の上に立つことはできない。それでは独裁者だ。」

2002年9月に、ウリベは大統領令を発布し、2つの社会復帰地域を設置した。一つはボリバル州とスクレ州の一部からなる地域で、もう一つはアラウカ州にある。コロンビアの不法武装グループと戦うためとされた。これらの地域では、軍司令官が、その地で選出された文民行政当局の権威を停止し、住民の市民的権利を侵害しはじめた。アラウカ州の町サラベナでは、コロンビア軍が、家を一軒一軒訪問し、住民の写真を撮って指紋を押捺させた。残念ながら、憲法裁判所の裁定は、サラベナの市民のプライバシー研を保護するには遅すぎた。コロンビア軍第18旅団のヘスス・ルイス大佐は、住民調査が違憲であるという裁判所の裁定に対し、「関係ない。我々はすでにその仕事を終えた」と答えた。

サラベナで市民的自由に加えられている侵害は、何千人もの罪を犯していないコロンビア人の写真を強制的に取り、強制的に指紋押捺させたことだけではない。500人以上の住民が令状なしにかりだされ、スポーツ・スタジアムに拘束された。大部分は、捜査で被拘束者と不法武装グループとの関係を示せなかったため、しばらくして釈放された。ただし、まるで羊の群に対してのように、軍が腕に焼き印を押してからであった。さらなる尋問のために拘束され続けたのは42名だけであった。

ウリベの政策によって、市民的自由に対するもっともひどい侵害が起きた場所が、ブッシュの対テロ戦争のもとで2003年1月から米軍特殊部隊員100名が駐屯する予定の軍事基地のあるサラベナであったことは、偶然ではない(介入の新たな規則を参照)。ロサンゼルスに本社を置くオクシデンタル石油の石油パイプラインを防衛する使命を負ってコロンビアにやってくる米軍のために町の治安を維持するため、ウリベがこの地域に適用された特別な軍事権力を利用した(そして悪用した)ことは明らかである。

憲法裁判所の裁定により、社会復帰地域に駐屯する米軍兵士たちの安全を確保するためにコロンビア政府は別の方策を探らなくてはならないだけでなく、外国人ジャーナリストが社会復帰地域に入るためには内務省の許可証が必要であるとして報道を検閲しようとするウリベ政権の試みも抑制されたことになる。外国人記者たちは、どこで働いていて、どのくらいの期間、どこを訪問するか申告するよう求められていたのであった。記者たちに許可証を義務づけることにより、ウリベ政権に批判的だと思われる記者の移動を制限する機会を当局が握っていたことになる(海外メディアの規制を参照)。

コロンビアの新憲法に従って1991年に設置された憲法裁判所は、これまでに、いくつかの大統領令を違憲とし、何度も国内および国際的な利益追求行為を違憲としてきた、コロンビア政府関係機関の中ではもっとも汚職の少ない組織であることを自ら示してきた。2001年には、IMF(国際通貨基金)が求めたコロンビア政府の社会福祉予算削減に制限を加え、2002年前半には、多国籍鉱業会社のコンソーシアムが所有し削掘するラ・グアヒラのセレホン炭坑により追放された農民を保護する裁定を下している(電力と貧困の創造を参照)。

コロンビアの人々には、憲法裁判所はコロンビア政府機関の中でもっとも敬意を払うことができる組織である。ウリベにとっても、裁判所の裁定を無視すると自分の合法性が大きく失われるため、その裁定に従う以外の選択肢はあまり残されていない。したがって、政府関係者は、一方で裁判所の裁定に従いながら、他方で、別のやり方で紛争地域に軍事支配を適用しようと試みることになるだろう。

ウリベは議会の多数はの支持を得て、憲法を改変することができるかもしれないが、それには時間がかかる。そのかわりに、ウリベは、このジレンマをすぐに解消しようとして、コロンビア上院で、紛争地帯の公共の秩序を維持するために検察がその司法権限の一部を軍と警察に委譲するという法案を採択させた。下院も賛成すれば、これが実行に移されることになる。

これについても憲法裁判所の審理に付される可能性はあるが、その間しばらくは、ウリベ政権は社会復帰ゾーンでの強圧的政策を行うことができ、憲法改変を行うかどうか判断するための時間稼ぎをすることができることになる。いずれにせよ何らかのかたちで、ウリベは、ボゴタとワシントンの政治・経済エリートにとって特別な利益がある紛争地域に軍事体制を適用する意志を維持しているようである。


  益岡賢 2002年12月10日

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