ウリベ政権は海外メディアを妨害している

エリック・フィッチル
2002年11月25日
コロンビア・ジャーナル原文


2002年8月に政権の座について以来、コロンビア大統領アレバロ・ウリベは前任者たちの仕事を妨害した制度への軽蔑をあらわにした。コロンビアの二院制議会を一院制にかえ、選挙で選ばれた代表の数を減らそうと主張した。支払いを受けとる市民情報提供者のネットワークを作り始め、また、ゲリラ支配地域で市民部隊を武装することを模索している(つまり新たな準軍組織を作るのである)。でたらめな「麻薬戦争」の中核要素である薬剤空中散布による人権侵害や環境破壊を無視し、コロンビアの2地域で実質的な軍法支配を始めた。さらに、批判者もコロンビア憲法も無視して、アレバロ・ウリベは、このたび、抑圧的政策の一環としてメディア統制締め付けを開始した。

就任1月後の9月10日、ウリベ大統領は、2つの「社会復帰・統合地域」を指定した。コロンビア北部および北東部に位置するこれらの地域では、選挙でえらばれた文民行政官ではなく指名された軍司令官により支配されている。地域内では、コロンビア軍が広い範囲にわたる超法規的権力を握っている。それには、外出禁止令を適用する権利、盗聴、監視、市民の移動制限、礼状なしの逮捕や家宅捜索といった権限が含まれる。マルタ・ルシア・ラミレス国防相は、「目的は市民をより強く統制し、大規模なテロ行為を行っている武装グループの侵入を防ぐことにある」と述べる。

ラミレス防衛相がいうところの侵入するグループの中には、外国の報道陣がふくまれるかのようである。9月10日にウリベが出した大統領令によると、「社会復帰地域」に入りたい外国人は、8日前までに内務省から許可申請を得なくてはならない。1カ月以上、ウリベ政権は、この新たな政策について、特に報道陣の扱いを巡っては、詳細を明らかにしてこなかった。政府が発表した9月16日声明では、外国の記者たちは、「社会復帰地域」への無期限あるいは数ヶ月のアクセスを保証する特別な通行証を得られるとのことだった。

けれども、10月24日、国際的な報道陣やメディア・グループからの強い反対にもかかわらず、コロンビア政府は9月16日の約束を撤回し、外国の記者たちをより厳しく統制することとした。それにより、外国の記者たちは、短期訪問あるいは一回限りの通行証を与えられるのみとなった。さらに、外国の報道社で働くコロンビア人記者たちも、社会復帰地域に入るためには公式許可を申請しなくてはならなくなった。これは、ウリベが9月10日に出した大統領令には含まれていない。

現在、外国の記者と外国人に雇われたコロンビアの記者たちは、内務省に申請書をFAXし、どこをいつ訪問する予定かという予定表と訪問予定者とを知らせなくてはならない。内務省は、情報を受け取ると、地域の当局筋に記者の意図について知らせる。ときに、許可判断については、記者が訪問を望む地域の軍事的状況に依存する。許可証なしで「社会復帰地域」で逮捕された外国人は、国外退去処分となる。

外国のジャーナリストたちはこの新たな規則を批判してきた。主要な新聞や通信社の海外特派員が作るゆるやかなグループである国際プレス連合は、許可証を得るために待たなくてはいけない時間によって、社会復帰地域における最新の報道をカバーできないとして、これを批判してきた。パリを拠点とするジャーナリストのグループである「国境のないレポーター」は、旅行制限は、記者の自由な移動権を認める汎米人権条約第13条違反であると指摘した。マイアミを本拠とする汎米プレス連合もまた、ただちに、コロンビア政府の政策を批判し、報道の自由と移動に対する制限は、極めて多くのラテンアメリカの国々が軍事独裁政権のもとにあった暗黒試合を思い起こさせる不気味なものであると述べている。

コロンビア政府報道官リカルド・ガランは新たな制約を正当化しようとしている。「外国人の中には武装グループの訓練に来るものもいると政府は恐れている。我々は、ジャーナリストであると称するものが実際にジャーナリストであることを確認したい」と。ガランが、コロンビア革命軍(FARC)のアイルランド革命軍(IRA)顧問との容疑で2001年にコロンビアで逮捕された3名について示唆しているのは確実であるが、彼の主張は問題を矮小化している。ガランは、新たな許可証が怪しい外部のものを地域内の武装グループに接触することを防止できるとしており、それはそうかもしれないが、この制限により、軍事化された社会復帰地域内の状況を独立した外部のものが報ずることも阻止できるのである。

不幸にして、新たな政策は、単に外国人ジャーナリストの移動を妨げるという以上のものである。許可証のために、ジャーナリストもジャーナリストが話をする人々も、妥協的な態度をとることになる。ガランのような政府報道官は、ジャーナリストたちが、社会復帰地域内で誰と会うかについて知らせることを強制はされないというが、当局が別のしかたでそうした情報を特定することができるようになるのは明らかである。事前にジャーナリストの行き先がわかっているならば、政府はより有効に市民情報提供者のネットワークを利用し、誰が誰と会い、それはどこで、いつであり、何が話されたかについて特定できるであろう。これにより、情報源の守秘というジャーナリストの基本原則が破られることになる。むろん、日々、侵略的な軍と警察の支配下で、市民的自由を制限され、ウリベの近隣スパイ網のもとで生活している人々が、外国のジャーナリストにそれでも何らかの話をしようとするかどうかは定かではない。

この新政策の目的は、社会復帰地域で起きていることについて日々報道されるのを避けようというものであるように思われる。コロンビア政府は、これにより、社会復帰地域の報道を統制しフィルターするメカニズムを手にしたことになる。都合の悪い報道が外国のメディアに現れることを制限する相当な力を政府は手に入れた。たとえば、ウリベとその軍事的戦略に否定的なジャーナリストは許可を得られないか、あるいは、所属組織が「許容できる」信頼性にないとして門前払いを食らう可能性もある。これは、小規模の独立系メディアやフリーランスのジャーナリストにとって大問題である。APやニューヨーク・タイムズの後ろ盾をもたないが、こうした人々が、コロンビアで起きていることを人々が理解するために決定的に重要な役割を担い続けてきたのである。

また、ウリベ政権は、社会復帰地域についての記事をねじまげる手段をも手に入れたことになる。たとえば、事前に、地域の当局に報道陣がやってくることがわかっていれば、国家による人権侵害を一日お休みしたり、犯罪の証拠を政治的な目的に沿うかたちで加工する(たとえば虐殺の犠牲となった一般市民にゲリラの迷彩服を着せたりするなど)ために「許可証発行を遅らせ」たりすることができる。さらに、軍と準軍組織コロンビア自衛軍連合(AUC)の緊密な関係を考えると、しばしば軍の共謀のもとで準軍組織が行う虐殺に関する客観的な報道がますます難しくなる可能性がある。

ウリベとその将軍たちが、このメディア検閲手段を利用するならば、社会復帰地域の現場状況と世界をつなぐ役割は、コロンビア人記者が果たすことになる。けれども、これは、コロンビアの報道で働く男女にとって、大きな重荷である。彼ら彼女らは、すでに、ジャーナリストにとっては世界一敵対的な状況に置かれているのである。汎米プレス協会によると、コロンビアでは、2002年10月までの6カ月間に、明らかな政治的理由により6名のジャーナリストが暗殺され、2名が理由はわからないまま殺害され、48名が脅迫を受け、11名が1日から8日間誘拐または「拘束」され、10名が亡命に追い込まれている。

コロンビアの武装グループがすべて国内のジャーナリストを標的とすることを辞さない状況で、また同時に、武装グループが外国人ジャーナリストに害をなすことを避けようとしてきた状況で、コロンビアにおける外国人報道陣の役割の大きさは明白である。コロンビア政府は、この役割を制限しようと決意しているようである。皮肉にも、コロンビアで外国報道陣制限が発表される数日前に、「国境のないレポータ」が、世界の報道の自由ランキングを発表した。コロンビアは、そこで、139カ国中114位であった。新たな制限により、順位はさらに低下するであろう。

この新たな権限を、軍や準軍組織がいやなにおいをたてる活動を行っている地域に対するメディアのアクセスを制限するためにどう使うかは今後を待たねばならない。今のところ、コロンビア政府が、一部のメディアを妨害し、別のメディアには自由なアクセスを提供しているという証拠もない。けれども、それが可能になったことは疑いようがない。実際、社会復帰地域における極端な治安体制化とそれにともなう市民的自由の制限を考えると、外国報道陣に対する新たな制限は、これまでコロンビアで続いてきた長い忌まわしい内戦の中でもなかった規模での政府による不処罰を示唆する不吉なきざしである。


エリック・フィッチルはコロンビア・レポートの編集委員。


 益岡賢 2002年11月26日

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