週刊『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』
まぐまぐメールマガジン再録版 Vol.48 2004.08.12

[20040812]古代アフリカ・エジプト史への疑惑Vol.48
木村書店Web公開シリーズ

 ■■■『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』■■■

近代ヨーロッパ系学者による“古代史偽造”に真向から挑戦!

等幅フォントで御覧下さい。
出典:木村愛二の同名著書(1974年・鷹書房)

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  第五章:巨石文化の影

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◆(第5章-8)王国の戦士たち ◆

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  アフリカよいとこ一度はおいで
   ゾウだぞう(そうは見えないぞう)
       ?毛?
      頭頭頭頭頭頭      
  耳耳 頭      頭 耳耳  
 耳 頭  /   \  頭  耳耳 
耳  頭  ●   ●   頭   耳
耳  頭   鼻 鼻    頭  耳 
 耳  頭   鼻鼻   頭  耳  
  耳耳 頭  鼻鼻  頭 耳耳  
      牙 鼻 牙  
     牙  鼻  牙      
       鼻 

 さて、歴史的背景の説明が長くなってしまったが、ホメーロスの章句にたちもどってみよう。

 ヨーロッパの学者は、しかし、エチオピア人を、アフリカ大陸と切りはなすことはできなかった。そして、たとえばギリシャ・英語辞典では、エチオピア人、ニグロ、本来は、日に焼けた顔、と説明している。つまり、黒色人であることを認めている。

 だが、これで満足してよいかというと、まだ納得できない点もある。というのは、アイティオプスが「日に焼けた顔」だという説明は、まず間違いなしに、後世になって行なわれている。たしかに、アテネの標準語を中心に作成された古代ギリシャ語辞典では、アイティは、焼けるような暑さ、火、となっており、オプスは、顔となっている。

 ところが、古い言葉の意味を、日常用語で解釈しようとするのは、どの民族にも共通した現象である。ギリシャ人はとくに、意味のわからなくなった単語の語源を、こじつけるのが好きだった。また彼らは、口伝えに、エチオピア人の伝説を語ってきたのだから、正確な発音が守られていたものかどうかは、保証のかぎりではない。彼らは、しかし、エチオピア人が黒色人であることは知っていた。だから、類似の発音をもつ単語によって、その意味を説明したのであろう。

 わたしにも、絶対にこうだといえる確証はない。しかし、はたして古代人が、肌色によって、ある民族をよんだものかどうか、とくに、尊敬する人々を、「日焼けした顔」とよんだものかどうかと考えてみると、納得がいかなくなる。材料として提供できるのは、古代ギリシャ語のつぎのような単語である。

 まず、アイティについて、アイエートスがあり、これはワシを意味する。アイティアは、起源を意味する。しかし、一番適切なのは、アイデースである。これは、地上の世界の王、の意味である。ルワンダのワッシ民族は、彼らの始祖キグワが地上に追放され、農耕を発明し、それを諸民族に教えることによって、王となった、という神話を語りつたえていた。尊敬すべきエチオピア人の語源として、これが第一候補である。

 オプスとなると、語尾の発音はもっとも変化しやすいので、容易にきめられるものではないだろう。だからわたしは、自分の考え方にもとづいて、当てはまる単語をさがした。まず、オプスは、きりちぢめられた発音だと想定する。その際、アイティオプスの不規則な複数形に、アイティオピエーアスがあることを、手掛りにしてもいいだろう。つまり、オピエーアスに近いものを、さがすわけである。

 そうしてみたら、これまたぴったりの単語があった。アテネの最古の2部族のひとつに、オプレーテースというのがあった。また、オプリテースというのがあって、重装歩兵の意味である。この2つの単語は、明らかに関係がある。オプレーテースは、戦士の氏族だったのだろう。

 つまり、わたしの考えでは、地上の世界の王の戦士、これが、エチオピア人の意味として、第一候補である。わたしが到達したバントゥの国、つまり、力ある人々の国の本拠地を守る民族にあたえられる名称としては、これが最適である。ギリシャ人が、なぜ原義を忘れたかという問いに対しては、「去るものは日々にうとし」、という格言でこたえるほかはない。

 このほかに、『オデュッセウス』の中にも、エチオピア人についてのさらにくわしい叙述がある。またギリシャには、ほかにもたくさんの叙事詩があって、その中には、『アイティオプス』(5巻)もあり、エチオピアの王、メムノーンが、トロイエー軍の応援にかけつける話になっている。しかも、その構成が『イーリアス』と似ている。そのため、『イーリアス』そのものが、『アイティオプス』の一部を発展させたものではないかという説さえある。つまり、もともとは、『地上の世界の王の戦士たちの物語』といったようなものがあって、その一部がギリシャ人によって語りつがれ、潤色されてきたとも考えられる。

 ヘロドトスも、このエチオピア人に、非常な関心をよせており、随所にその話がでてくる。それはまた、新しい裏付けの材料を出したところで紹介するとして、古代エジプト人も、ナイル河上流地帯を神聖視していたことを、デヴィドソンに証言してもらうことにしたい。

 デヴィドソンは、つぎのように書いている。文中、「西」となっている点については、のちにわたしの解釈を示す。基本的には南である。

 「偉大な先祖たちの霊の住む『神の国」は、王朝エジプトにおいては、東でも北でもなく、はるか南と西の方にあった」(『古代アフリカの発見』、p.54)

 ここでふたたび、南方へ戻ることにしたいが、その前に、『イーリアス』の章句を、わたしの解釈にもとづいて、訳しなおしてみたい。

 「ゼウスは今日、すべての神々をしたがえて、地上の世界の王の戦士がささげるいけにえを召し上っておられる。聖なる地上の世界の王の戦士たちを訪れるために、ゼウスは昨日、ナイルのみなもとにおもむいたのだ」

 では、ナイルのみなもとには、どんな古代史が展開されていたのだろうか。また、古代エジプト人が、「神の国」とよんだところは、どこなのだろうか。

次回配信は、第6章「バントゥの王国」
第6章-1「エジプト神話へ」です

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