週刊『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』
まぐまぐメールマガジン再録版 Vol.31 2004.04.15

[20040415]古代アフリカ・エジプト史への疑惑Vol.31
木村書店Web公開シリーズ

 ■■■『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』■■■

近代ヨーロッパ系学者による“古代史偽造”に真向から挑戦!

等幅フォントで御覧下さい。
出典:木村愛二の同名著書(1974年・鷹書房)

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  第三章:さまよえる聖獣 

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◆(第3章-8)人間と家畜 ◆

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 まず、ウマが家畜になったのに、どうしてシマウマは、飼い馴されなかったのだろうか。シマウマのいる所では、そういう考えが浮かばなかったのだろうか。東アフリカや南アフリカの人々は、どうしていたのだろうか。

 実際に、シマウマを飼い馴そうとした実験例がある。ところが、シマウマには、家畜としての耐久力がなくて、あきらめざるをえなかった。草原を走りまわることに馴れた動物は、人間によって閉じこめられることに、耐えられないのだ。もともとは肉食獣のネコについても、同じことがいえる。ネコは、せまい箱に閉じこめると、狂い死にしてしまう。そして、ネコは、家畜とはいっても、ペットであり、独立性を保っている。なかなか、いいなりにはならない。

 さて、大型、中型の家畜で、本物の草原動物だったのは、実際にいるのだろうか。ただし、ゾウは例外である。ゾウは巨大すぎて、天敵がいない。だから、大変におうようである。親切にさえしていれば、暴れたり、逃げだしたりしない。

 まず、ウシ、ヤギ、ヒツジのウシ科動物がいる。この野生種は、山岳地帯にしかいない。やはり、草原を捨てて、食料はとぼしいが、逃げかくれしやすい所に避難したのだ。ロバも同様だ。ブタやニワトリは、森林性の動物だった。ブタの野生種はイノシシだが、これはひとつのイノシシ科になっている。イノシシ亜目には、ベッカリーとカバがいる。ベッカリーは、イノシシよりも草原を走るに適した足をもっているが、新大陸アメリカの森林地帯でしか生きのびられなかった。カバは河川地帯にもぐりこんでいた。イノシシは草原などにもいるが、基本的には、草原動物ではない。ニワトリ、ホロホロ鳥、七面鳥などは、空をとべず、羽根が退化した鳥類だ。ラクダやラマ、アルパカは、沙漠地帯に逃げこんでいた。

 このように、人間が、家畜として最適の条件を見出した動物は、すべて、動物の天国である草原や大空から、脱落したものばかりだ。それらの動物は、新しい環境の中でも、いきづまり、辛抱強い性格を身につけざるをえなかったのだ。

 ここに、ウマの問題を解く大きな鍵がある。しかし、この考え方は、もうひとつの問題の鍵にもなる。つまり、なぜアフリカ大陸には、家畜の野生種がいなくなってしまったのか、という謎も解ける。アフリカ大陸には、多種多様な生物がいる。植物も動物も種類が多い。しかし、そのかげには、生存競争に敗れて、絶滅していった生物も多い。家畜の野生種もそうだった。アジアやヨーロッパの辺境に落ちのびた仲間だけが、いまだに野生のまま生き残っているのだ。

 なぜそういうことが最近になって起ったかというと、ホモ・サピエンスのヒト科動物だけではなく、ウシ科、ウマ科、ネコ科、イヌ科などの高等哺乳動物は、ほぼ時期を同じくして、現存の種へと進化をつづけてきた。そして、同じような自然環境の中で、それぞれが典型的な進化をとげてきた。つまり、喰うか喰われるかの立場はちがっても、環境に適応した分化、発達では、同じ法則にしたがってきた。

 たとえば、ネコ科の代表、ライオン、トラ、ヒョウは、一代雑種ができる間柄である。そして、ライオンは草原、トラは山岳の森林、ヒョウは平野の森林を、主ななわばりにしている。彼らの肌色は、保護色ではなくて攻撃用の偽装色だが、これも完璧である。

 ウマ科のわかれ方も、全くこのネコ科の例に対応している。しかし、森林にはいりこんだウマは、あまり成功しなかった。森林動物としては、身体も大きくなっていたし、シカのような角もなかった。ウマはただ、じっと立っている以外に身を守る方法をもたなかった。

 このウマを、自然淘汰の法則から解放できたのは、人間だけだった。しかも、植物も動物も育てあげた経験をもつ人間だけであった。わたしは、ウマが飼い馴らされたのは、ギニア湾岸の熱帯降雨林地帯のどこかであると考える。そして、ウマだけでなく、ウシ、ヤギ、ヒツジも、最初は女たちの手で育てられたのではなかろうかと考える。

 また、アフリカ人はすでに、紀元前4000年ごろにロバを飼っていた。ロバを飼い馴らした人々が、ウマを育ててみなかったはずはない。アフリカ人は、ネコも、カモシカも、サルも、ゾウさえも飼い馴らしていた。ウマの野生種が、アフリカ大陸にもいたことが判明した以上、アフリカ人がウマを飼い馴さなかったという結論はありえない。

 ところで、ヒヅメがもろくなっていたウマは、ふたたび走りまわることになった時、ヒヅメに蹄鉄をつけなければならなかった。では、鉄はどこで、だれによって発明されたのであろうか。一般には、やはり、製鉄のオリエント起源を説く学者が多いが、それは本当にたしかなのであろうか。また、アフリカ大陸起源を主張する学者も続出しているのだが、その論拠は、どんなものであろうか。

次回配信は、第4章「鉄鍛冶師のカースト」
第4章-1「現代の神話」です。

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