週刊『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』
まぐまぐメールマガジン再録版 Vol.26 2004.03.11

[20040311]古代アフリカ・エジプト史への疑惑Vol.26
木村書店Web公開シリーズ

 ■■■『古代アフリカ・エジプト史への疑惑』■■■

近代ヨーロッパ系学者による“古代史偽造”に真向から挑戦!

等幅フォントで御覧下さい。
出典:木村愛二の同名著書(1974年・鷹書房)

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  第三章:さまよえる聖獣 

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◆(第3章-3)最初の家畜 ◆

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 野生のヤギもヒツジも、ほぼ確実に、アフリカ大陸にいた。ほぼ確実というのは、ヤギに関しては、物的証拠についての記述を発見できなかったからである。しかし、フランス人の文化人類学者、ポームは、『アフリカの民族と文化』の中で、サハラに野生のヤギがいたと書いている。だから、何らかの証拠はあるにちがいない。サハラや西アフリカについては、フランスの学者の方がくわしいのである。そして、ポームは、アフリカ人(黒アフリカ人としている)がヤギの飼育をはじめたと主張している。その上、サハラ先史美術には、やはり、野生のヒツジが描かれていた。

 これで、クラークとピゴットの三段論法は、ほぼ確実に、成立しなくなった。しかし、念には念を入れて、彼らの第一段階論に当る飼育動物を、もっと範囲をひろげて追求してみよう。

 まず、従来のヨーロッパ系学者の家畜起源についての考え方は、ひとつの仮説的主張にすぎない。彼らは、さきに、オオムギ・コムギこそが最初の農作物でなければならない、ときめこんでいた。それがここでは、ヤギ・ヒツジでなければならない、にいれかわっているだけの話である。つまり、ヨーロッパ型の農業形式のみから割りだされた固定観念を、そのまま主張しつづけているわけだ。

 ところが、新大陸アメリカには、野生のヤギ・ヒツジはいなかった。それでは、牧畜が行なわれなかったかというと、立派にやられていた。ラマとか、アルパカとか、七面鳥とかが飼育されていた。しかも、遊牧民はおらず、農耕民の副業として、家畜が飼われていた。

 わたしの結論をいってしまうと、旧大陸での最初の家畜は、ブタやニワトリのようなものだったにちがいない。というのは、先史考古学では、いちばん遠くまで移住した人々の文化を、いちばん古い型に結びつけてみるのが原則だ。もちろん、その後の変化発達は無視してはならない。しかし、この原則なしには、とても先史考古学は成立しない。

 ところで、旧大陸のはずれにいるオセアニアの農民は、ブタとニワトリをもっていたが、ヤギ・ヒツジは全く飼っていなかった。農具も、基本的には木製の掘り棒だけだった。これがいちばん古い農業形式だ。ここにポイントをすえなければ、科学的な仮説は成立しない。

 では、アフリカ人は、ブタやニワトリのような家畜を飼い馴らしていただろうか。

 ポームは、イヌ、ネコ、ロバなどとともに、ブタとホロホロ鳥とが、「黒アフリカ人」によって飼育されはじめたと主張している。この点には、ほとんど異論はないようだ。ホロホロ鳥とは、ニワトリと同じキジ科で、ほぼ似たりよったりの大きさ、性質の鳥である。

 ロバも、ブタも、ホロホロ鳥も、遊牧生活には適さなかった。だから、定着農業社会の一員としてとどまった。遊牧民は、たとえばユダヤ人がブタを不浄の動物とみなすように、定着農業社会の家畜を軽視、蔑視する。これが、学問の世界にまで反映しているのだ。

 さて、もうひとつの論拠は、農耕文化の発祥地についての考え方にある。わたしは、それをアフリカの熱帯降雨林の周辺に設定した。簡単にいうと森林地帯である。そして、ブタ(イノシシ)やホロホロ鳥(ニワトリも)は、基本的には、森林性の動物である。これらの動物は、また、農耕民の立場からみて、畠あらしの専門家でもある。畠あらしをするということは、裏をかえせば、ヤムの切れっぱしや、鶏卵大の種子をとったあとのウリなどで、充分に飼育できる、という意味にもなる。つまりこのブタとホロホロ鳥という動物は、熱帯降雨林農業の組合せとしては、最適の条件をもっている。

 それゆえわたしは、すでに紀元前8000年頃、つまり、アフリカ大陸の湿潤期がはじまり、新しい農耕もしくは農業(牧畜を含む)文化のにない手が、熱帯隆雨林地帯から進出する以前に、ブタやホロホロ鳥などの飼育がはじめられた可能性があると考えている。

 クラークとピゴットの、第一段階に関する主張に、決定的な反論を加えるためには、もうひとつ、ヤギ・ヒツジがどこで家畜化されはしめたか、という問題にとりくまなければならない。しかし、すでにサハラ起源を主張する学者もいることだし、わたしは、熱帯降雨林からサバンナへの進出の途中のどこかで、としておきたい。ヤギ・ヒツジなどは山岳地帯の野生動物であったから、サハラ高原の起源は充分に考えられる。ただし、高原地帯は、ケニアあたりにもひろがっている。そして、すくなくとも、クラークとピゴットが第二段階の飼青動物とするウシについては、ナイル河水源湖地帯に、面白い事実がある。

 そこには、世界最大のオオツノウシといわれる家畜ウシが、 100万頭以上も飼われている。そして、この品種の系統に関する従来の説明方法、つまりオリエントの方角からの伝播という考え方にもとづいた品種の特徴に関する解釈は、すでに破綻をみせている。家畜ウシのサハラ起源説もでている以上、従来の家畜の品種系統研究のやり方には、当然、抜本的なやりなおしが要求されてしかるべきである。その際、わたしはこのオオツノウシに、最大の謎が秘められているのではないかと考えている。

次回配信は、第3章-4「オオツノウシと巨人」です。

おお、角牛だ 蝸牛の親分だ・・・ ヽ(^。^)ノ

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