テポドン&不審船謀略:直近の成果

 日経1999.4.8.によると、以下のように、当初で90億円から完成で2000億円に至る「ご予算」が、テポドンを口実にして浮上し、不審船または工作船を契機に決定された。超大型のミサイル防衛構想に先駆ける「前菜」程度であろうか。

******************************

政府方針90億円で

情報収集衛星の設計・試作
三菱電機に発注

 政府は2002年度に打ち上げる予定のわが国初の惰報収集衛量4基について、1999年度に実施するレーダーなど主要部分の基本設計・試作を三菱電機に発注する方針を決めた。政府・自民党筋が7日明らかにした。発注額は約90億円にのぼる見通し。試作などを踏まえ、政府が1999年末にも決める本設計・開発の委託先としても三菱電機を選定するとの見方が有力だ。国産衛星の採用は安全保障分野で日本独自の情報収集の手段を確保し、成長が見込める国内の衛星産業の発展を後押しする狙いがある。(解説13面に)

 情報収集衛星の導入は昨年8月、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が日本の上空を飛び越える弾道ミサイルを発射したことがきっかけ。政府は事件当時、ミサイル発射に関する惰報を迅速に入手することができず、対応が大幅に遅れたとの反省から、昨年11月に打ち上げを決定した。

 政府の基本計画によると、導入するのは夜間にも画像が撮影できる合成開口レーダー搭載型2基と、精密画像に適した光学センサー2基。衛星の開発・打ち上げや地上設備の建一設などで総額2000億円の費用を見込んでいる。1999年度中に基本設計と主要部分の試作を終え、2000年度から本体の詳細な本設計、開発、製造に着手する。

 三菱電機に基本設計・試作を発注するのは (1)光学センサーと合成開口レーダー (2)地上の管制部門から信号を受けて衛星本体の位置を調整する装置……などで、いずれも衛星の機能の中核となる。試作は技術上の問題点を事前に洗い出すのが目的。一方、画像を地上に送信する伝送系部分の基本設計・試作をどの企業に発注するかについては、政府が大詰めの検討を続けている。

13面「解説」************************

三菱電機が情報衛星受注
衛星ビジネスへ足掛かり

[解説]政府が情報収集衛星の設計・試作を三菱電機に発注することを決めた。情報収集衛星と同じ仕組みの観測衛星を作った経験のある国内2社のうち、NECは防衛庁への不正請求事件で航空宇宙部門が“機能マヒ”に陥っており、三菱電機にとって衛星事業拡大の足掛かりとなりそうだ。(1面参照)

 昨年8月の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のミサイル発射実験で情報収集衛星導入の機運が高まるなか、三菱電機の動きは早かった。10月中旬には自民党に「多目的情報収集衛星システムに関する検討」と題した資料を提出。その後まとまった政府の基本計画は、この資料をたたき台にしたど言われる。

 これまで日本の衛星メーカーは、宇宙開発事業団(NASDA)が発注する「技術開発衛星」しか手がけた実績がない。1個1個仕様が違う注文生産なので、価格は米国製に比べ大幅に割高だ。惰報収集衛星は合計4基を運用する計画で、衛星の寿命は5年。定期的に同じ仕様の発注が来ることになれば、メーカーは衛星の低コスト化のノウハウを蓄積できる。

 画像の解像度でも、政府計画通り1メートルを実現できれば、高度道路交通システム(ITS)用の地図情報など米国などで商業利用されいるレベルに肩を並べる。三菱電機は情報収集衛星への生産参加が決まったことで、商業衛星ビジネス拡大のきっかけをつかむことになりそうだ。

 ただ、計画全体が三菱電機主導で進むかどうかは不透明。4基導入だけで約2000億円かかる大型プロジェクトのため、東芝を含めた国内衛星メーカー3社の共同開発体制が組まれる公算が大きい。国産の方針は決まったものの、ロツキードなど米国勢が部品購入などを求めてくる可能性もあり、実用化には紆余(うよ)曲折が予想される。

******************************

 以上。


週刊『憎まれ愚痴』16号の目次に戻る