編集長の辛口時評 2006年10月 から分離

テロ特措法国会審議「刑事事件としての証拠」質問の継続審議を求める

2006.10.10(2019.9.2分離)

http://www.asyura2.com/0610/war85/msg/502.html
テロ特措法国会審議「刑事事件としての証拠」質問の継続審議を求める

 本日、2006年10月10日、衆議院第二議員会館で、「911真相究明国際会議報告」の集会があった。そこで、国会議員を前に、以下の国会質問の経過を指摘し、改めて、今後の審議の継続を要請した。


季刊『真相の深層』04年春・創刊号
大手メディアが報じない重要な国会議事録抜粋(その1)
アフガン・テロ特措法参院連合審査会(01・10・24)佐藤道夫(民主党・参議院・元札幌高検検事長)議員の「刑事事件としての証拠」質問抜粋

編集者の序・時間的な順序は遡るが、民主党・参議院・元札幌高検検事長・佐藤道夫議員の「刑事事件としての証拠」質問(01・10・24)を巡る質疑応答は、9・11事件の翌月、アフガニスタンへの米英軍の空爆、侵略拡大を支援するための「テロ対策特別措置法案」の審議の重要な場面であり、9・11事件から、イラク「戦争」を経て、現在に至る日本の政治状況の根幹に触れるものである。
 [中略]
 問題はむしろ、同議員の質問の冒頭の指摘、「この国のマスコミも論じていない、また学者も評論家もだれ一人取り上げていない」状況の明確化にある。私は、この国会質問を唯一報じた次のような、実に、実に、小さな、小さな、『日本経済新聞』のベタ記事によって知った。たったの1段の見出しは「ビンラディン氏関与」「国内裁判耐える証拠確かにない」である。以下は本文の全文である。

 『日本経済新聞』(01・10・24夕刊)2面の左上の隅っこの2段。

 「国内の刑事裁判みたいな証拠は確かにない」。小泉純一郎首相は24日午前のテロ対策特別措置法案に関する参院合同審査で、米同時テロへのウサマ・ビンラディン氏の関与について、国内裁判に十分耐えるだけの証拠は明示されていないことを示唆した。民主党の佐藤道夫氏への答弁。

 首相は同氏の関与が濃厚なテロ事件が頻発している点を指摘。「(国際社会の忍耐の)限界を越えたということだ。証拠がないから何もしないという態度は日本として取り得ない」と強調した。

 首相はこれまでビンラディン氏の関与を裏づける「説得力のある説明」を米側から受けていることを強調する一方、「情報の中身は明らかにできない」としていた。(了)

 [中略]


平成13年10月24日(水曜日)午前9時1分開会

外交防衛委員会 本日の会議に付した案件

「平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法案」(内閣提出、衆議院送付)

○佐藤道夫君 関連質問をさせていただきます。私はもっと基本的に、この国のマスコミも論じていない、また学者も評論家もだれ一人取り上げていない、そういう問題を取り上げて議論を進めていきたいと思います。一言で申せば、過去の歴史的な経験を今の人たちがどういうふうに教訓として受けとめているか。それから、今我々が経験しているこれは、30年、50年、いや100年先にまた同じようなことが起きるその際の教訓として後世の人たちにまた残すことができるのかどうか、そういう角度からの質問であります。

 そこで、第1は、第1次世界大戦の教訓を今どのように生かしているのか、こういうことであります。

 第1次大戦も今回と同じようにテロから始まったわけであります。バルカン半島に1914年に響き渡った1発の爆発音が、人類未曾有のああいう大惨事を引き起こしたわけであります。バルカン半島ではスラブの民族がいろんな国をつくっておる、そこにゲルマン民族のオーストリアが侵略、侵略というのか進出をしていく、そこで民族の対立が起きていたと。こういうことを背景に、1914年の6月、オーストリア皇太子夫妻が視察に行った、サラエボに巡幸していた、そのときにテロリストの投げた爆弾が2人の命を奪った、こういう事件であります。

 そこでオーストリアはどうしたかというと、直ちに宣戦を布告した。当時の考えでいえば当たり前といえば当たり前なんです。ゲルマン民族もまた固まってそれに応戦をする、オーストリアの背後にはドイツ、スラブ族の背後にはロシア、そしてドイツと対立していたフランス、フランスを支援していたイギリス、最後にはアメリカまでもスラブ側に荷担、加わって大戦争が行われた、こういうわけであります。

 なかなかそういうことは信じられないなと、こういうふうなお気持ちもあろうかと思いますけれども、大津事件、御承知でありましょう。明治24年、ロシアの皇太子が日本に来まして大津市を巡幸中に、やっぱり護衛の警察官、津田三蔵といいますが、これが切りつけて相当な重傷を負わせた。これもテロの一種なんです。そのときに日本政府が大変恐れたのは、これをきっかけにソ連が、失礼、当時のロシアが日本に攻めてきたら一体どうするかと。当時は武力の差も隔絶していましたから、あっという間に日本なんかはもう侵略されてロシアの植民地になってしまうと。

 さて、どうするかと。もう一刻も早く犯人を死刑にしろ、こう言ったわけです。当たり前の感覚といえば当たり前なんです、これが。そのときに児島惟謙、大審院院長の児島惟謙が、そうはいいましても、外国の皇族を殺害しようとした、未遂に終わった、これを死刑にできる条文はございませんといって政府の要求を断って、司法権の独立を保ったといって、今、神様のように言われておる。これもそのとおりなんですけれども。

 私、大変評価するのは当時のロシアの態度、皇太子にあれだけの危害を加えられていながら、まあいろいろ都合もあるんだろう、これは日本の出方を少し見守ってやろうと。直ちに軍隊を派遣する、そんなことは一言も言わなかったわけでありまして、日本は最終的にあの津田三蔵という犯人を無期懲役にして、ロシアもまあそれぐらいでいいかということで軍を起こすようなことはしなかった。日本の歴史学者はこのロシアの寛容あふれる態度を全然思い浮かべない、いやただ児島惟謙が偉い偉いとこのことばかり言っている。もう少し歴史学者も事実をきちっと評価してもらいたいものだ、こう思っております。

 [中略]

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 非常に参考になる、また格調の高い歴史的な背景を説明していただきまして、改めて歴史に学ぶ重要性を感じました。

 私も歴史は好きですが、第1次大戦のころの状況はほとんど読んでおりませんで、今お話聞きましてなるほどなと。我々、学校のころ習ったのはサラエボ事件という表題、最近政治家になって覚えた言葉にバルカン政治家という、権謀術数にすぐれた政治家のことをバルカン政治家と言いますけれども、そのころからバルカン半島の複雑な地形、複雑な国々が絡まっていろいろな権力闘争初め栄枯盛衰の歴史があったということを改めて思い起こしましたが、日本の明治時代の事件等、本当に歴史に学ぶ点は多いなと思いまして、感心しながら聞かしていただきました。

○佐藤道夫君 そこで国際連盟ができ上がりましたが、これをつぶしたのはこの日本であることは当然御承知と思いますね、大日本帝国と言われておりましたけれども。昭和6年に満州を中国の領土の中につくり上げたと。それに対して中国は、当然のことのように抗議をし国際連盟に提訴をする。国際連盟はこれを真剣に受けとめて、調査会をつくって双方の言い分を聞いて、それからはるばると満州までリットン卿をリーダーとする調査団を派遣して地道に調査をして、その結果、これは日本の明らかな侵略行為である、直ちに満州から撤退すべきだという声明を出した。そのときに日本がどう対応したか。こんなばかばかしい会議に加わっていられるかと言って退席して、そして国際連盟からもう脱会してしまったと。それがきっかけのようになって国際連盟は以後無力化して、それが第2次大戦の一つのきっかけにもなった、こう評価してもいいと思うんです。

 そして、第2次大戦が始まりまして、その結果どうなったかというと、日本じゅうは丸焼けになりましてもう大変な物的損害、人的損害をこうむる。世界じゅうで死んだ者が3000万人もいたんですよ、第2次大戦では。そのときに乗り出してきたのがまたアメリカ。もうこんなことは本当にやめにしようと。確かに国際連盟というのは余り力がなかった、ちょっと揺すったらつぶれてしまったと。今度はもっとしっかりしたものをつくって、あらゆる問題をそこに持ち込んで、そして友好裏に平和裏に解決していこう、こうアメリカが言ってつくったのが国際連合なんですね。

 国際連合が本当にもうぴしっとしてほしいと思うわけです。今までは今までとして、今や21世紀、新しい時代が始まったと、そういうときですから、こういうときこそ国際連合が立ち上がって、中に調査会でもつくって、何か一片の決議案をつくるなんということじゃなしに、国際連合がみずから調査会をつくって、被害者であるアメリカ、これは当事者の一方ですから、これが証拠がある、証拠があるとわめいておりまするから、どんな証拠があるのか少し我々に示してほしいと。

 国際連合も、法律の専門家を入れて、私も要請があれば入ってもいいと思うんですけれども、調査をして、そしてなるほどそれならラディンが、あれが犯人かもしらぬ、嫌疑は濃厚と、そう言ったら調査団をアフガニスタンに派遣する、あるいは国連の場に呼び出してもいい、そういうことで調べて、それから先はどうしようかと、裁判にかける。アメリカに引き渡したら、裁判なんか省略して、もうすぐ首つりになるのではないかと、こういうふうに考える人もいるかもしれません、西部劇時代はそうでしたからね。そこで、国際連合がみずから裁判所をつくって、司法裁判所、今、形はありますけれども余り動いていない、そこで裁判をする。それならばわかったと世界の人たちもアメリカもそう言うかもしれません。

 こういうことについて総理はどうお考えか。今までブッシュ大統領ともう何回も会談している。当然、私が今思いつきみたいにして言っていることを総理の口からブッシュさんに伝えられて、ブッシュさんも、ううん、そう言われればそうだと、少し友好的な解決方法はないものか、国連中心主義、国際協調主義でこの問題を解決できないのか、21世紀の幕あけだと、多分そうおっしゃったんじゃないかと思いますけれども、どうでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) ウサマ・ビンラーディンについては、既に国連安保理でも身柄引き渡しを要求しておりますが、出てきておりません。今回のアフガンに対しましても、タリバン政権はその身柄引き渡し要求に応じておりません。

 そういう状況の中で、今までの過去の事件とのかかわり方、そしてあの組織的なテロの状況、いろいろ日本としてもアメリカの情報を伺い、そして国際社会が一緒に立ち向かって、もうこれ以上の証拠は必要ないという中で、日本としても総合的に判断して、ウサマ・ビンラーディンが深く今回の米国同時多発テロに関与しているだろうということで今、世界が立ち上がっているわけでありまして、なかなか、今のような佐藤議員のお話も一つの考えだと思いますが、その話が通じる相手でないところがますますこの問題を複雑にしているのではないかと思います。

○佐藤道夫君 アメリカが被害者の立場で出てこいと言ったって、そんなところに行く人はいないでしょう。行けばすぐ死刑になるか、ろくな裁判も受けずして直ちに処刑されてしまう。ですからこそ、第3国的な立場にある国連が呼びかけをする、国連が乗り込んでいって本人の弁明を聞く、そういうことが大事なわけで、けんかの場合に、お互い同士がわあわあ殴り合っておって、おれのうちに謝りに来いとか言ったって、だれがそんなところに行くものですか。そういうものなんですよ。

 どうして国連の顔が見えないのか不思議としか言いようがない。国連自体がこういう問題を解決しよう、21世紀の手がかりにしようと、そういう気にならないのか。日本の国連大使はどういう人なのか、日本人のあまり名前知らない人が多いんじゃないですか。私も知りませんよ。こういうときこそ彼が飛び回って、国連の中を説得して、方向づけをしていくと。何かパーティーで忙しいのかな。本当に新聞に名前の出ることもありませんよ。何をやっているんだろうか、この非常時に、と思わざるを得ないわけです。

 それから、どんな場合でも証拠というのは大切なものでありまして、どうもあいつが犯人だと、オウム事件が起きたときに、オウムが犯人に間違いないと日本人全部がそう思ったわけですけれども、警察は慎重に慎重に数か月かけてようやく麻原までたどり着いて裁判にかけることができたと。そう簡単に証拠なんというのは集まるものではない、実行犯はみんな死んでいるわけですから。実行犯がだれの指令で動いたかと一歩一歩証拠を積み重ねていく、それが警察の仕事であり、検事の仕事でもあるわけですけれども。

 もう犯人だ犯人だとアメリカはそればっかり言っている。事件が起きてから2日後に国務長官があれが犯人だと。2日で犯人と。もう神様だってわからないと思いますよ。ブッシュ大統領は、1週間後にあいつが犯人だ、かくまうやつも同罪だと。こんな法律家が腹を抱えて笑い出すようなことを一国の大統領が平気で口にしているわけです。

 私、一番疑問なのはタリバンに関する証拠が一切ない。今、ブッシュ大統領がかくまうやつも同罪だと。そこで空爆が始まって、タリバン、アフガニスタンじゅうを爆撃している、そういうことなんですよ。あれは証拠を見せていないでしょう。かくまっているから同罪だ、殺人犯をかくまったら、おまえも殺人犯だと。こんな法律を持っているのはアメリカだけかと言いたくなるわけですよ。世界じゅうの法律家が本当笑い出しますよ。そういうときにも、アメリカの法律家が100万人もいるわけですから、だれかがブッシュさんにちょっとおかしいですよと言う法律家がいてもいいと思うんです。穏やかに話し合いの精神で物を持ちかけていく。いずれにしろ、証拠を示してやることが大事だと。アメリカが一方的に犯人犯人と言ったって犯人かどうかわからないんですから、すべて裁判で決まることで。

 私、大変評価できるという、10日ぐらい前の新聞を読んであっと思わず声が出た。あのタリバンが会見をして、証拠をアメリカが示してくれたら犯人を引き渡します、ただし第3国にと。これはしかし当然のことなんですよ。被害者に犯人を渡したらどういう裁判を受けるか、裁判なんか省略してもう撲殺してしまう、なぶり殺しに遭うかもしらぬ、そう考えるわけですよ、引き渡す方は。

 そこで、第3国に引き渡しましょうと、これは当たり前の提案ですよ。第3国というのは、私、考えてみるに比較的中立の立場に立つイスラム国のエジプト、永世中立のスイス、あるいはこういう問題をかねてからよく扱っているベルギー、あのあたりを考えていいのではないか、そう思うんですけれども、ブッシュさんが何と言ったと思いますか。この犯罪者めが何を言うかと、一顧だにしない。そして、空爆を続けている。

 なぜあのときにしっかりとタリバンの提案を受けとめて、じゃ、とりあえず話し合ってみようと言うのが普通だと思うし、もしアメリカが話し合うことに向こうが応じなければ、国連が乗り込んでいって、まずアメリカを呼び出して証拠を示してほしい、それならばタリバンに働きかけて第3国に引き渡させる。当たり前のことだと思う。だれだって、子供だってこのぐらいのことを考えますよ。考えないのはひとりアメリカ。こんなもの、犯罪者の言うことなんか聞けるかと。アメリカの悪口を言うわけじゃありませんけれども、この問題に関する限り、理性的な法律的な判断をしているのはタリバン側。ならず者国家はアメリカ。しかり、法律なんか無視してとにかく引き渡せと、これだけですからね。本当におかしいと思いませんか。

 私は本当におかしいと思う。日本の法律家も世界じゅうの法律家も、だれ一人こういう問題を取り上げて議論しようとしていない。おかしい。政治家もそうですけれどもね。アメリカは何しろ被害者で、6000人も殺された。日本人も20人余り含まれている。もう悪いのはタリバンとビンラーディンだ、やつらをやっつけろと。

 どうでしょうか。私の今言ったことについて、総理大臣の御所見を承れればと思います。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) それは、タリバンに対する態度は議員と私とは違います。既に、ウサマ・ビンラーディン、またそれを支援しているタリバン政権、今までの過去の行為から、各国との情報から、アメリカだけが確約しているわけじゃありません。ロシアもフランスもイギリスも各国ももう十分な証拠を得ていると。私も今までいろいろな情報交換の上で、これはウサマ・ビンラーディン、またそれを支援しているタリバン政権、このテロ行為に深く関与しているという状況だと認識しております。

○佐藤道夫君 お言葉を返すようで申しわけございませんけれども、証拠は多分にあるということをおっしゃいました。衆議院の特別委員会で証拠の説明をしておられましたね。

 私はあれを聞いておりまして、これはもう情況証拠の段階までも至っていない、単なる推測を述べているだけだと、こういうふうに思いました。あんなので起訴したらどこの国の裁判所だって無罪を言い渡しますよ、具体的な証拠というのは何一つないんですからね。

 しかも、今タリバンの証拠もあると言いましたけれども、タリバンに関する限りは犯人をかくまっているらしいというだけであって、いかなる証拠も、あのビルの破壊にタリバンがかかわったのかどうなのか何の証拠も我々に示されていないでしょう、世界の人民に対してね。

 やっぱり一歩一歩踏み固めて主犯に迫っていく、それがどこの国でもやっていることなんです。

 アメリカが大体、こういうことをルールづけたのはアメリカですからね、証拠、裁判、拘束ということを言い出しましてね。そのアメリカが、自分が被害者ということになりましたらもう血相を変えてあいつが犯人だ、すぐ捕まえてこいと、そればっかり言っているじゃないですか。かくまっているやつも悪い、うちに火つけてやれと。それと同じことですよ。やくざの論理です、これは。

 余りこんなことを言うとアメリカから爆撃されてもかなわぬですけれども、しかし、やっぱり大事なことは言ってやる必要がありまして、言えばアメリカ人というのは極めて合理主義精神に富んでおりますから、わかるわけです。だれも言わない、アメリカさん大変でしたな、アフガンけしからぬ、もうどんどんやってくださいよというふうに同盟国と称する人たちが皆そう言って、もみ手をしている。こういうことなんですね、今の現状は。

 どうでしょうか、小泉さん、一国の指導者、もう最近あらわれた政治家として大変珍しい、国民もそこに引かれて拍手喝采、万歳万歳をやっている。どうかひとつ歴史に残るような提案をされて、アメリカを導いていくという気持ちぐらいのことをやっていただいたらどうかと、こう思うんであります。今、21世紀の初頭で小泉さん大変恵まれた地位にいる。世紀の始まりの総理大臣はだれだと、事実上は小泉だと、もう100年後の歴史家ですよ。その小泉はどんなことを言った、その直後に、アフガン、テロが起きて、そのときにこういう、世界じゅうを飛び歩いて説得、勧誘をして、そして何とか平和的な解決の方向に導いていったと。その際に、小泉なる者はこういう名言、ああいう名言を吐いている、日本の政治の中にこういう卓越した、偉人と言ってもいい、そういう人がいたんだなと、100年後の歴史に残りますよ。児島惟謙の名前が今さん然と司法部内というよりも日本国内に輝いて残っていると同じことだと思うんですよ。

 いかがでしょうか。歴史に残るような解決策、名言を残されるおつもりはあるのかどうか、こういうことであります。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 国内の刑事裁判みたいな証拠は確かにないと思います。しかし、アメリカはこれは個別自衛権の発動だということで、国際社会がそれを支持し、なおかつ、過去、タンザニア、ケニアあるいはUSAの艦艇のコール事件等、数々のテロ事件を受けて、いろいろ苦労に苦労を重ねた。しかし、そこに今回、ニューヨーク、ワシントンという、堪忍袋の緒が切れるような、限界を超えたと、テロも。だからこそアメリカが立ち上がり、国際社会が立ち上がったんだと思います。

 我々も、今のような形で、証拠がないからもっとゆっくりやれ、何もするなというような態度は、日本としては、また首相としてとり得ません。

 [中略]

○佐藤道夫君 国連があまり実効の上がらない決議をいっぱいしているということを私申し上げておるでしょう。それを実効あらしめるために、今や21世紀、国連みずからが乗り出して、アフガンに乗り込んでいくとか、いろんなやり方があるわけですからね、アメリカを呼んで証拠を聞いてそれを世界に知らせる、これだけの証拠があるのに引き渡してないんだとか。そういう具体的な態度で示すべき時期だということを言っているのであって、そんな決議がいっぱいあるなんというのは、そんなこと知っていると私言ったでしょう。

 それから、自国民引き渡しは、国際法とは言えないまでも国際間の慣行だと、こう言ってもいいわけであって、各国によって法制が違うと。自国民を引き渡してもいいなんて、そんな法制をつくっている国はまずないと考えていいですよ。まあそれはそれとしていいですけれども。

 総理、いかがでしょうか。もう少し真剣に日本国がこの問題に取り組んで、世界をリードするぐらいの働きをして、アメリカにも、ひょっとしたら考え違いもあなた方しているんじゃないですかと。もう少しこれは今の法制度に従って解決していく、相手の立場も尊重してやっていく、西部劇の時代じゃないんですよということをブッシュ大統領に本当に言ってほしい。ブッシュさん、どうも大変興奮して、テレビで見ておると血が何か頭に上っておるようなこともないわけではない。ああいうときにまあちょっとこらえてくださいと言うのもやはり小泉さんの役割ではないのかと、こう思います。いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) 今回の9月11日の事件だけじゃないんですよ。今、官房長官お話ありましたように、過去数年前からの具体的な事件でかかわりがあったからこそ国連の安保理決議でウサマ・ビンラーディンの身柄を要求しているんでしょう。全然応じないんですよ。応じないうちに今回のテロ行為がまた起こった。過去のいろいろな情報をもとに、今回、ウサマ・ビンラーディンがまたまたこの犯罪の陰にいる、あるいは実行犯の、直接実行犯ではありませんが、中心にいるということを今までの状況を絡めて判断し、国際社会もそれを認めているわけでありまして、これは法律家の立場からいえば佐藤議員の話もわかります。しかし、現在の状況を考えて、我々も、このまま話し合いに応じてくれ応じてくれということをやっていたならば、またテロを予告しているわけですから、今にまだやると言っているんですから、こういうテロリストに対して、実に難しいなと。

 私も今度、ブッシュ大統領との会談で今回言いましたよ。人間には3種類の人間がいると。話せばわかる人、話してもわからない人、話さなくてもわかる人。私が一番好きなのは話さなくてもわかる人だけれども、政治家というのは話してもわからない人にどうやってわかってもらうか努力が必要、これが政治家の宿命なんだと。

 今回、いわば話しても通じない相手のテロリストと戦うんだから、その困難は大変だなという話し合いをしましたよ。冷静に、忍耐強い、しかも多くの国際間の協調活動をもってこのテロとの戦いに対処しようという話し合いをブッシュ大統領としてきましたよ。

 いろいろ考え方はわかりますが、今回のテロに対しましては、我々も国際協調の中で日本の責任を果たしていきたいと思っております。

○佐藤道夫君 またお言葉を返すようで恐縮ですけれども、確かに、話してもわからないやつに本当に時間をかけて懇切丁寧に話し合いを持っていくというのが、政治家の、特に一国のリーダーの私、責務だと、こう思います。話したってどうせわからぬから、もういいかげんにしようやと、そんな感じでしょう。

 やっぱりいろんな方策を使って、裏から手を回してみたり、いろんなやり方をして彼らと話し合いの場を設けていく。いつかは心を開いてくることがある。日本でいっぱいこういう例を引き合いに出して、どれだけの苦労をしたのかと、そういうことがあるでしょう。もう少し真剣に……(発言する者あり)出てこなきゃこっちから行きゃいいんですからね、余り余計なやじ入れないでください。

 それから次に、午後に回そうと、若干の時間があるので問題だけ提起しておきますけれども、アメリカが今回のテロ防止に本当に真剣に対処していたんだろうかと。私、本当にこれ疑問に思っているわけです。

 自分たちがやることをやらないでおいて、いざテロが起きたら、同盟国はアメリカを支援する義務がある、日本も手をこすり合わせながら何かをして御援助できることはありませんでしょうかと。アメリカが本当にテロ防止に真剣に取り組んでいたとは、ゆめ思えないわけですよ。国内便、航空機の国内便、あれはほとんど検査なしに通していたと、だからナイフを持ち込むやつもいる、爆弾を持ち込むやつもいる、そういうことになったんですね。

 もうかねがねテロリストがいるとFBI、CIAが警告しているでしょう、ことしの6月も。フロリダ半島のマイアミにタリバンの手下が、ビンラーディンか、の手下が27名、何か知らないが数まではっきり言っているんですね、27名も集まってよからぬ企てをしていると。警告まで発している、自国にもいると。それじゃ、何の防護策も講じない、一体何だろうかと。そして、日本と韓国には、おたくにある米軍基地がテロリストにねらわれている、アラブのテロが何をするかもわからぬから厳重に警戒されたいと。直前ですよ、これ送ってきたの。それなら、まずもって自国は大丈夫かと考えるのが当たり前でしょう。それを一切やっていない。やっていないから、ああいう事件が起きたわけですよ。しようがないことだと、こう言うつもりなんでしょうかね。

 飛行機をハイジャックして突入する、自爆テロをやる。これは、アメリカのベストセラー作家のトム・クランシーですか、彼が『合衆国崩壊』の中ではっきり書いているんです。航空機をハイジャックして議事堂に突入したんですね、自爆テロ。そして、その場にいた大統領以下数百名の合衆国の要人中の要人を皆殺しにしちゃった、そういうことをおもしろおかしく書いておると。これ、ベストセラーになった、アメリカで。アメリカ人のしかるべき人は皆読んでいるはずです。

 ああ、我が方は、アラブのテロにハイジャックされてこういうことになったら、一体、しかもあの貿易センタービルは前にもねらわれているわけですから、あそこに飛行機が突入したら、自爆テロ起きたらどうなるのかと。これはもう今までのようなやり方ではだめだ、考えようと。検査も厳重にする、それからガードマン、警備員も乗せるとか、そういうことをやるのは当然といえば当然でありましょう。それを何もやっていない。(発言する者あり)そんなことは言わなくても、言うことは言いますから、黙っていなさいよ。

 いずれにいたしましても、本人たちがやることをやらないで、事故が起きたら、さあ何とかしてくれと言われたって、おいそれと、大変でしたねと言うぐらいが関の山でしょう。アメリカがどんなガードをしていたのか、それは総理、やっぱりブッシュ大統領と会った際に尋ねておられるでしょう。申しわけないけれども、本当に完璧な防御体制をしいていたが、しかしどうしようもないことでやられたんでしょうねと。そうだそうだと言うに違いありません。うちは本当に不手際だったと、そんなことを大統領が認めるわけにいきませんけれども、それにしても聞いてみる価値はあるでしょう。なぜこんな大事なことをお聞きにならないんですか。聞いたんですか、それとも。いかがでしょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) テロの準備をしていない方が悪くて、テロがいいというみたいな話に伺えますが、どんな厳重にしたって、こんなことはだれも私は想像できなかったと思いますよ。いかに厳重にしようと、民間機を乗っ取って、しかも関係ない人を殺しても構わないというテロリストのあの組織的な訓練と背後、そういうときにあれだけの犠牲者が出ているのに、おまえたち準備が不足だったんだから、おまえが悪いんだと。とんでもないことですよ、そんなことを聞くのは。私は驚いたね、それは。

 そして、情報には限度がありますよ。だれも想像できたらテロなんか起こりませんよ、今まで。テロがあるのを予想していかに準備している、最もテロに対して警戒しているのはアメリカですよ。しかしながら、ワールドセンターだって過去爆破事件があった。今回確かにホワイトハウスをねらったんだろうけれども、間違ってペンタゴンへ行ったんだろうと思いますけれども、そういう小説で起こるであろうというのが現実に起こるだろうと思った人は私は1人もいなかったと思いますよ。それを準備していなかったからいけないと、そういう非難をする前に、テロをどうやって撲滅するかと考えるのが私は当たり前の普通の感覚だと思いますよ。

○佐藤道夫君 アメリカは一体ハイジャック防止にどれだけの努力をしたのか、何もしていないのではないかということを申し上げましたが、それと並びまして、アメリカの情報機関は一体何をしていたのかと。これもやっぱり大事な問題だと思います。

 御承知と思いますけれども、アメリカには世界に名だたるような情報機関が4つもある、CIA、FBI、その他。これの情報員が何と何と12万人いる、そういうことなんです。使っている予算は3兆円、もう世界じゅうのあらゆる情報がアメリカに集まって当然なことであります。

 今、一番神経を注いできたのは、やっぱりアフガニスタンのビンラーディンの問題だろうと思います。あそこに、もう6月にもああいう警告を発している。何しろフロリダのマイアミにはテロリストが27名も集結していると、こうなりましたら、情報員のやるべきことはもう決まっているわけで、もうぴったりとマークしてすべてを把握する、当たり前のことです。

 アメリカの情報局というのは、冷戦時代には大変いろんなことをやっておって、それなりの成果を上げていた。私もある情報局にちょっといたことがありまして、彼らが本当に仕事熱心と、どうやってそんな情報を集めてくるのだと質問したら、いや、やっぱりスパイです、スパイを組織に潜り込ませる、あるいは組織のなるべく地位の高い者を買収して情報を提供させる、そういうことで苦心惨たんして情報を集めておりますと。

 今、アメリカの情報局のやることは、ビンラーディン一味を一体、あれに限ると言ってもいいぐらいでありまして、それの情報、あれだけのことを集めたが、その後何もしていない、こんなことが許されるんだろうかと。もうハイジャック・テロのことは一切考えていなかったと、とぼけたことを言いなさんなと言いたくなるくらいでありまして、あの事件で犠牲になった人の遺族たちがアメリカ政府を相手に国家賠償訴訟を起こしたら、恐らく勝訴しますよ。私がまた弁護人を引き受けてもいいぐらいでありまして、当然のことであります。やるべきことをやっていない、それで死んじゃった、これでおしまいって、そうはいきません。そういうものなんです。

 ですから、テロの肩を持つとか持たないとかいうことじゃなくて、やっぱり言うべきことは言う、そしてアメリカにも反省を求める、そして力を合わせて21世紀を築き上げていく、これに尽きるわけでありまして、どうか小泉総理、この次ブッシュ大統領に会いましたら、国内でこういう意見もあった、これを謙虚に重く受けとめて対策を十分に考えてほしいと、それぐらいの提言はしていただきたいと思いますけれども、いかがでありましょうか。

○内閣総理大臣(小泉純一郎君) アメリカ国内の情報管理なり情報収集なり諜報活動なりについて不備があったの、不十分じゃないかというようなことは、アメリカ国内で考えれば私はいいことだと思っております。日本政府としてその時点で何を話し合うべきかというのはその時点で私は判断いたします。

 しかし、今回、何もしなかったからテロは起こったんじゃないかというよりも、そういう情報網をくぐり抜けてテロリストたちがあのような卑劣な攻撃を仕掛けた。私はどんなに準備しても準備し切れないものもあると思います。いかに情報活動を活発に展開しようが、お金をかけようが、それをかいくぐろうとする勢力もあるわけですから、そこは今回のテロを、私はもっとやるべきことはあったと思いますけれども、そのやるべきことが不十分だったからテロもやむを得ないじゃないかという態度はとりません。

○佐藤道夫君 だれもテロがやむを得ないなんということは言っておりませんよ。

 テロを厳しく処罰するのは当たり前でありますけれども、事前にそれを防ぐのもその国の責任なわけですから。日本だっていろんな情報を集めて犯罪を未然に防止している。どこの国だってそういうことをやっておる。あれだけの組織について、まったくやっておりませんでした、ハイジャック・テロなんというのは予想外の出来事でしたと。12万人の情報員がいて3兆円の予算を使って、そういう人たちの言うせりふなのか。これ、だれだって人間として、ちょっとブッシュさん、こういう疑問がありますよと。今、総理のせりふは向こうが言うことじゃないんですか。我々は一生懸命やっておりました、あなたはテロを支援するんですかと。そのときはあなたも、やっぱりそういうことではないんだ、お互い反省して進むべき道を決めていこうと。

 これ、21世紀の後世に模範となる、教訓となるような事例でありまするから、本当に真剣にこのことは考えてもらいたいという気もいたします。何兆円という予算を使って自衛隊も出動してアメリカを支援する、それも大事なことです。しかし、やっぱり基本的にはアメリカに反省する点は反省してもらうということだって必要だと、こう思うわけであります。(了)