電子手紙の送信日付け順・注釈付き一般公開文書館 2001年7月

「アジア諸国からの猛烈な批判」を武器とする主体性なき偽善系の右往左往と教科書問題誤報

送信日時 :2001年 7月 4日 水曜日 11:15 PM

件名 :[pmn 15467] 教科書問題誤報と偽善系の主体性なき右往左往

 自分の国の日本の教科書を論ずるのに、「アジア諸国からの猛烈な批判」を武器として振りかざすのは、いわゆる「他人(ひと)の褌を借りる」典型、まことに主体性のない屁っぴり腰のへぼ相撲さながらの議論の組み立て方でありまして、下手糞漫画家にまでしてやられるのは、当然の帰結です。

 そこで、この主体性のなさを、典型的に示す「世紀の大誤報」を紹介して置きます。この問題は、発端に私の古巣、日本テレビ放送網株式会社とその隣組みの位置関係にある教科書専門の実教出版社が関係していたので、かすかに記憶に残ってはいたのですが、このほどの新たな騒ぎを切っ掛けとして、国会の議論に再浮上し、『正論』(2001.6)に、当時の社会部記者、現・産経新聞・石川水穂論説委員による一文、「教科書問題の発端/『世紀の大誤報』の真実」が掲載されるに至りました。

 簡単に言うと、1982年に、教科書検定で「侵略」を「進出」に書き改めさせたと、各紙が一斉に報道し、中国や韓国からの抗議を誘発し、日本国内でも教科書問題が政治的紛争の目玉となったのですが、これが実は誤報だったのです。

 確かに、多くの資料に基づき、当時の文部省は、「侵略」という表現を「進出」に改めよと求めていたと認め得るのですが、それに応じて書き直した出版社は、実は、なかったのでした。

 では、なぜ、このような誤報が各紙を飾ったかというと、記者クラブと称する大手メディアの情報独占機関は、特にスクープ競争をする気はないけれども手間の掛かる問題については、各社分担して取材結果を持ち寄り、総合的な記事にまとめるというカンニング習慣に馴染んでいたのでした。実は、今も、この習慣は密かに続いています。

 で、その当時、世界史に関して近所の実教出版社を取材した日本テレビの記者が、聞いた通りに報告し、それを各社が一斉報道してしまったのでした。つまり、出版社の編集者も、いい加減だったのです。

 これを切っ掛けとして「アジア諸国」の抗議を自分の武器にする主体性のない自称平和主義者、自称左翼が続出し、今に至っているわけです。実に情けない話なのです。自分で納得できる教科書でも、単行本でも、せめて雑誌記事でも発表してから初めて、発言の資格ありとすれば、もっとまともな議論になるのかもしれません。いや。もっと混乱を極めるかも。

 ともかく、金魚の糞よろしく、「つくる会」許さずなどと口から泡を吹いても、水面がかすかに揺れるだけで、物笑いの種になるだけです。ぶりっ子の偽善系なんて、言われてしまうかもしれませんので、お気を付け下さい。今年の3月12日に、この誤報を信じて参議院の予算委員会で質問して、赤っ恥をかいたのは、民主党の竹村泰子議員だそうです。悪いのは大手メディアの記者とか編集者とかなのですが、気の毒なことです。


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