電子手紙の送信日付け順・注釈付き一般公開文書館 2001年5月

『日本経済新聞』「GNP国際比較の新常識」によれば日本は購買力平価で十四位の幸せと恐怖

送信日時 : 2001年 5月 27日 日曜日 8:35 AM

件名 :[pmn 15056] 日本は購買力平価で十四位

 つい最近、日本の給与水準が世界一との耳情報を得たので、はてな、いわゆる「為替レート」の仕組みを抜きにしているのではなかろうか、日本は、そして特に東京は、世界で一番、日常生活に必要な、衣食住の費用が高いはずだがと、疑問を呈しました。

 自称"嘘発見"名探偵としては、この不正確さを密かに悩んでいたのですが、何と、その二日後の昨晩、「体制派」財界情報を獲得するために自宅で取っている唯一の新聞、『日本経済新聞』の積読の山を整理していたら、「給与水準」と完全に同じではありませんが、以下のように、日本人の「一人当たり所得が、購買力平価で見ると十四位」という大変に幸せな数字が出てきました。

 昨晩遅く、私は、この記事を切り抜いて、スキャナー向けに貼り込み直し、校正し、その間、購買力を向上できなかったので、ますます幸せになり、熟睡できました。皆さんにも、この幸せを、お分けします。

 なお、これは「体制派」向けの新聞の株式欄の時事論評記事ですから、最後には、少し恐ろしいことが書いてあります。これは、現「凸凹」内閣が、勇んで、やりそうなことです。

『日本経済新聞』(2001.5.2)
「大機/小機」

GNP国際比較の新常識

 日本が世界第二の経済大国であることはよく知られている。事実、世界銀行の「世界開発報告」によると、日本の国民総生産(GNP)は約四兆ドル(以下数字はいずれも一九九八年)であり、米国(七兆九千億ドル)に次いで世界第二位である。

 日本の一人当たり所得が米国を上回る世界有数のレベルに達していることもよく知られている。事実、日本の一人当たりGNPは、三万二千ドルで世界七位、米国の二万九千ドルを約一割上回っている。

 しかし、この二つの一般常識は誤りである。経済規模や所得水準を通常の為替レートでドル換算しているからだ。正しくは、購買力平価(一単位の通貨でどの程度の財貨・サービスを購入できるかを基準としたレ一ト)を使うベきである。

 世界銀行の報告には、この購買力平価による国際比較が掲織されている。これによると、まず、日本のGNPは二兆九千億ドルと大きく評価が下り、中国(約四兆ドル)の方が大きくなる。日本は「世界第二」ではなく「世界第三」の経済大国なのである。 もっとも、このことは別に大きな問題にはならない。中国の一人当たり所得水準は日本の七分の一しかないが、人口が日本の約十倍もあるのだから、経済規模が日本以上になるのは当然である。

 次に、一人当たりGNPのレベルも二万三千ドルに下がる。これは世界で十四番目であり、米国(世界第三位)より二割程度低い。日本は、まだ米国のレベルに達していないのである。

 七位だった一人当たり所得が、購買力平価で見ると十四位に下がるのは大問題である。この原因は、日本の場合、普通の為替レートと購買力平価の差が大きいことにある。これは貿易財(製造業)と非貿易財(非製造業)の生産性格差が他の国以上に大きいためである。それはまた、内外価格差が大きいということでもある。

 つまり日本は、製造業に比べて建設業、流通業、金融業などの非製造業部門の効率化が遅れているのである。こうした分野で市場原理に基づいて余分な企業の淘汰(とうた)を進め、産業全体の生産性を引き上げることこそが構造改革の柱でなければならない。

 こうした構造改革が進めば、購買力平価は現実の為替レートに近づき、日本は本当に世界規模の高所得国となりうるのである。

 (隅田川)


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